【6/2 アクション報告】ミャンマー軍を利する日本の官民ファンドの事業を止めて!日本政府は責任ある撤退と説明をー官邸前アクション

#ミャンマー軍の資金源を断て
#JapanStopODAtoTheMyanmarJunta #NoMoreBusinessWithTheMyanmarJunta

 ミャンマーでは、クーデターを起こしたミャンマー軍により、4年4ヶ月にもわたり混乱と殺戮が続いています。3月28日に中部で発生した大地震で甚大な被害が報告されている中、ミャンマー軍は停戦すると公言しながら、一方で被災地を含む各地で空爆を続けています。同軍が3月28日から4月24日の間に少なくとも140回の空爆を含む207回の攻撃を実施しており、停戦発表後に行われた攻撃は172回以上で、うち73回は地震で壊滅的な被害を受けた地域を標的とした、と報じられています[1]。日本でも複数の報道がありましたが、5月12日には地震の被害を受けたザガイン管区域の学校を軍が空爆し、7歳から16歳までの児童生徒と教師の合わせて24人を殺害した他、102人を負傷させたとも伝えられています。

 この間、確認されているだけでもミャンマー軍によって6,719人が殺害され(2025年5月22日時点 政治囚支援協会)、350万人を超える人びとが国内避難民となっています。軍の体制に不当に拘束されている人たちは、ここ数年、2万人以上で推移し減ることはありません。

 ミャンマー軍が地震被害に対する援助を恣意的に利用することも、懸念されています[2]。ミャンマー軍は被災地を空爆するのみならず、自分達の支配が及ばない地域に援助が届かないよう妨害もしています[3]。

 日本政府はミャンマー軍の体制の下で、政府開発援助(ODA)による約7,396億円の円借款事業を未だに続けています。また、ODAだけでなく、公的資金を主な原資に投資を行う官民ファンドも、ミャンマーでの問題事業に出資などを行なっています。

 軍の兵器などを調達する兵站局という部局と、現地企業を通して土地賃貸の契約を交わしているヤンゴンの軍事博物館跡地再開発事業(通称Yコンプレックス)には、国土交通省が所管する海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が出資と債務保証を行なっています[4]。2024年6月に、JOINが2023年度の決算で約799億円の損失を計上したことが明らかになりましたが[5]、これにはYコンプレックスの出資分約56億円と、民間銀行への債務保証約63億円が含まれています。JOINは未だに、ミャンマーの状況が改善されれば事業の実現に取り組むと主張していますが[6]、Yコンプレックスが軍を利する構造のままであることは変わりません。この事業には、財務省所管の国際協力銀行(JBIC)が日本の民間銀行と協調融資を行なっています[7]。

 JOINはまた、ティラワ多目的国際ターミナル事業にも出資しています。同ターミナルは、各国から制裁を科されているミャンマー軍所有企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングス・リミテッド(MEHL)との関係が証明されているエバー・フロー・リバー(EFR)グループというクローニー(政治的忠誠と引き換えに軍政から優遇されることで利益を得ている政商)企業と共同で運営されてきました[8]。私たちの問いかけに対し、事業に参画する各社は撤退の準備や人権配慮につき回答してきましたが[9]、JOINは私たちがプレスリリースを発行してから回答しています。加えて、この事業の資産がどのように処理されるかや、コンセッション契約解除に伴う違約金の支払いによりミャンマー軍政が利益を得るのか、また事業からの今後の収入がミャンマー軍と関係のある事業体に流れるのをどう防ぐのかについて、JOINや企業からの説明はありません。

また、官民ファンドの株式会社海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)は同じく官民ファンドである株式会社海外通信・放送・ 郵便事業支援機構(JICT)と持ち株会社を設立し、その持ち株会社を通し、NHKのグループ企業である株式会社日本国際放送(JIB)と共に、ドリーム・ビジョン社に出資しています。

このドリーム・ビジョン社には、ミャンマーの大手メディア企業シュエタンルイン・メディア(Shwe Than Lwin Media Co., Ltd.、STLM)も出資しています。STLMは、クローニーと国連の報告書に名指しされているシュエタンルイン・グループの企業です。同グループはまた、2017年8月にラカイン州北部でロヒンギャ住民に対して始まったミャンマー軍の「掃討作戦」を支援するために、軍の求めに応じて寄付をした企業の一つであるとも指摘されています[10]。

STLMと、現在ミャンマー軍の支配下にあるミャンマーラジオテレビ(MRTV)との合弁事業であるミャンマー・インターナショナル・テレビジョン(MITV)は、2021年以降、ミャンマー軍のプロパガンダを行う役割を担っています。また、MRTV局の放送の強化にインフラを提供してもいます。ドリーム・ビジョン社は、STLMの地上波放送局「Myanmar National Television」(MNTV)を通じ、放送設備の整備も含めた日本コンテンツ発信事業に取り組むとされています。ミャンマー軍のプロパガンダを担う企業のチャンネルで、日本の官民ファンド出資事業がミャンマー向けに日本のコンテンツを紹介するこの構図は、ミャンマーの人たちの目にどのように映るでしょうか。

 私たちは、ドリームビジョン社出資における各社のシュエタンルイン・メディア社との提携に関する質問状を、各社・関係機関に送付する予定です。日本政府は、人権侵害に加担する恐れの非常に高いこれら官民ファンドの出資を止め、どのように撤退をするか説明する義務があります。最近、会計検査院の検査で、官民ファンドの6割が赤字であることが明らかになったばかりですが、赤字のトップはJOIN、回収できないおそれがある出資が最も大きいのはクールジャパン機構となっており[11]、これらファンドは日本の国民に損失を与えてもいます。このような状況をより多くの方に知っていただくため、またミャンマー軍を利する官民ファンド事業からの責任ある撤退と説明を日本政府に求めるため、官邸前でアクションを行いました。

*注

[1]ロイター.「ミャンマー国軍、地震後の停戦期間中も攻撃継続 民間人犠牲」(2025.4.25)
https://jp.reuters.com/world/security/RTTLYXPQ6RNKLO5Q4TAMHJAJ34-2025-04-25

[2] Progressive Voice. “Aid Accountability Essential After Quake" 
https://progressivevoicemyanmar.org/2025/05/03/aid-accountability-essential-after-quake

[3] Myanmar Now. “One month on: Mandalay struggles with quake aftermath and junta neglect" (2025.4.28)
https://myanmar-now.org/en/news/one-month-on-mandalay-struggles-with-quake-aftermath-and-junta-neglect/

[4] JOIN. 「ヤンゴンの博物館跡地再開発事業」
https://www.join-future.co.jp/investments/achievement/index.php?c=investment_view&pk=1603170043

[5] JOIN.「2023年決算について」
https://www.join-future.co.jp/about/financial-statements/pdf/about-the-settlement_2023.pdf

[6] https://www.mlit.go.jp/kokusai/content/001766358.pdf

[7] JBIC. 「ヤンゴン博物館跡地再開発プロジェクト」
https://www.jbic.go.jp/ja/business-areas/environment/projects/51689.html

[8] Justice For Myanmar. “WHO PROFITS FROM A COUP? THE POWER AND GREED OF SENIOR GENERAL MIN AUNG HLAING" 
https://www.justiceformyanmar.org/stories/who-profits-from-a-coup-the-power-and-greed-of-senior-general-min-aung-hlaing

[9] プレスリリース:制裁対象のミャンマー軍所有企業と関係する日本の企業、政府貿易保険機関、 官民投資ファンドはミャンマーの港湾事業から責任ある撤退を.
http://www.mekongwatch.org/PDF/pr_20250514.pdf

[10] 国連のミャンマーに関する独立国際調査団による報告書 “Economic interests of the Myanmar military” に関する最新情報 (2019.9.9)
https://www.ohchr.org/sites/default/files/Documents/HRBodies/HRCouncil/FFM-Myanmar/EconomicInterestsMyanmarMilitary/Update_FFMM.pdf

[11]「官民ファンドにおける業務運営の状況に関する会計検査の結果について」
https://www.jbaudit.go.jp/report/new/kobetsu06/r070516.html

官邸前アクションの様子

呼びかけ団体 

メコン・ウォッチ、国際環境NGO FoE Japan、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)、アーユス仏教国際協力ネットワーク、日本国際ボランティアセンター(JVC)、アジア太平洋資料センター(PARC)

問い合わせ先   

国際環境NGO FoE Japan Email: info@foejapan.org 電話: 03-6909-5983

 

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