JERA武豊火力発電所の再稼働の中止を求め、経産省に要請書を提出
石炭と木質ペレットを混焼しているJERA武豊石炭火力発電所(愛知県)は、2024年1月31日に爆発・火災事故を起こして以来、停止していました。11月22日、JERAは、2025年1月から同発電所の再稼働を行うことを発表しました。当面の間、石炭火力のみで発電を行い、2026年度末頃のバイオマス混焼を復旧させるということです。
JERAは2019年4月から2023年10月まで、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場で、市場相場を変動させる認識を持ちながら、余剰電力の一部を供出していなかったことが明らかになり、電力・ガス取引監視等委員会から業務改善勧告が出されています。2020年末から21年1月半ばに起きた未曽有の電力価格の高騰では、多数の新電力が経営危機に陥り、倒産が相次ぎました。一方、JERAは4年半にわたる不当な価格操作で、一日当たり最大1億円の不当な利益を得ています。
FoE Japanは、12月6日、「武豊町の環境問題を考える会」、気候ネットワークとともに、経済産業省宛てに、①JERA武豊火力発電所の再稼働を認めないこと、②石炭火力発電所へのバイオマス混焼を推進しないこと、③JERAによる電力市場操作の実態およびその影響を徹底的に検証することを求める要請書を提出しました。
2024年12月6日
経済産業大臣
武藤 容治 様
JERA武豊火力発電所の再稼働の中止を求める要請書
2024年1月31日、JERA武豊石炭火力発電所(愛知県)において、火災・爆発事故が発生しました。混焼するバイオマス燃料(木質ペレット)をベルトコンベアで運び、一時貯蔵するバンカに落とす場所付近が火元とみられています。住宅地の中にある発電所での爆発事故により、周辺住民の方々が受けた衝撃と恐怖ははかりしれません。JERAは、再発防止策に関して住民説明会を実施していないにもかかわらず、2025年1月から同発電所の再稼働を行うことを発表しました。
近年、各地でバイオマス発電所における火災・爆発事故が頻発しています。木質ペレット等のバイオマス燃料は、脱炭素策の一環として石炭火力発電所で混焼あるいは専焼されることが増えていますが、保管状況によっては発酵し、自然発火を引き起こすリスクがあることが明らかになってきました。また、森林由来のバイオマス燃料の需要拡大は、海外の森林減少・劣化の原因となっていることを踏まえれば、石炭火力へのバイオマス混焼は、脱炭素ということはできません。国際社会では、1.5℃目標に整合する対策として先進国では2030年までの全廃が不可欠だとされています。イギリスでは今年9月に国内全石炭火力が廃止となるなど、脱石炭火力が加速化しており、日本もG7サミットにおいて石炭火力の段階的廃止に合意しています。武豊火力においてはこの事故を機会に廃止するべきです。
また、JERAは2019年4月から2023年10月まで、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場で、市場相場を変動させる認識を持ちながら、余剰電力の一部を供出していなかったことが明らかになったことから、11月12日、電力・ガス取引監視等委員会は電気事業法に基づき、JERAに対して業務改善勧告を行いました。
2020年末から21年1月半ばに起きた未曽有の電力価格の高騰では、多数の新電力が経営危機に陥り、倒産が相次ぎました。一方、JERAは4年半にわたる不当な価格操作で、一日当たり最大1億円の不当な利益を得ています。
経済産業省は、JERAが余剰電力を供出していないことを見過ごしたまま、「供給力不足」「電力不足」などとして、火力発電を増強し、原発の再稼働・新増設を推進する方針を次々に打ち出しています。当時は武豊火力は建設中で未稼働でした。「電力不足」に対して社会的要請に応じるような形で武豊火力が稼働しました。そもそもその判断が誤っていた可能性があります。また、事故後武豊火力が長期停止した後も電力不足に陥っていません。武豊火力の稼働は必要ないことを物語っています。
よって、 私たちは以下を要請します。
- JERA武豊火力発電所の再稼働を認めないこと
- 石炭火力発電所へのバイオマス混焼を推進しないこと
- JERAによる電力市場操作の実態およびその影響を徹底的に検証すること
武豊町の環境問題を考える会
国際環境NGO FoE Japan
気候ネットワーク