国際協力銀行によるTrafiguraへの融資と贈賄防止違反の可能性について要請書を提出

化石燃料

 本日、国内外5つの環境団体は、国際協力銀行(JBIC)が日本へのLNG輸入支援のために行った融資が、同行の贈賄防止方針に違反する可能性があるとして、融資判断の根拠の開示と融資の停止を求める書簡を送付しました。

 2024年3月28日、JBICは、シンガポール共和国法人Trafigura Pte Ltd(以下「Trafigura」)との間で、融資金額390百万米ドル限度(JBIC分)の貸付契約を締結しました。本融資は三井住友銀行との協調融資です。一方、同日(米国3月28日)、ブラジルにおける贈賄でTrafiguraの米国海外腐敗行為防止法違反が確定しています。

 JBICは贈賄防止への取り組みの中で、わが国の輸出企業やJBICが貸付等を行う政府・企業等を含む国際商取引を行う当事者は、贈賄に係る自国の法令への理解及び遵守が求められるとしています。JBICによる融資締結は2024年3月28日ですが、2023年12月の時点でTrafiguraのアンゴラにおける贈収賄に関する報道も流れており、JBICのデューディリジェンスのあり方が問われています。

 詳しくは書簡をご覧ください。

 JBICによるTrafiguraへの融資と贈賄防止違反の可能性について

株式会社国際協力銀行
代表取締役総裁 林信光様
CC: 株式会社三井住友銀行
頭取CEO 代表取締役 福留朗裕 様

国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
メコン・ウォッチ
オイル・チェンジ・インターナショナル
気候ネットワーク

 2024年3月28日、国際協力銀行(JBIC)は、シンガポール共和国法人Trafigura Pte Ltd(以下「Trafigura」)との間で、日本へのLNG輸入支援のため、融資金額390百万米ドル限度(JBIC分)の貸付契約を締結しました[1]。同日、Trafiguraはブラジルにおける贈賄で米国海外腐敗行為防止法違反が確定しています。私たちはこの融資に関し、Trafiguraへの融資が貴行の贈賄防止方針[2]に違反するのではないかと考えています。

 Trafiguraは、米国およびスイスにおいて犯罪捜査の対象となっています。2023年12月、複数のメディアが、米国およびスイスの当局が、Trafiguraがアンゴラの公務員に対し長年賄賂を渡していたかどで告発したことを報道。Trafiguraは2009年4月から2011年10月までの間に、アンゴラの石油産業におけるTrafiguraに優位な契約の見返りに500万米ドルを超える支払いをアンゴラの政府関係者に対し行っていました。この贈賄によりTrafiguraが得た利益は1億5,000万米ドルだと推計されています[3]。加えて米国司法省はブラジルにおけるTrafiguraの贈賄捜査も行っており、2024年3月28日に米国海外腐敗行為防止法違反が認められ[4]、Trafiguraは米国政府に対し1億2,700万米ドルの罰金を支払うことに合意しています[5]

 Trafiguraは米国輸出入銀行(US EXIM)からの支援も受けていますが、同社が贈賄含む事件の捜査の対象となっていることを理由に、2024年1月に米国のNGOらが支援の即時停止を求める書簡をUS EXIMに提出しています[6]。US EXIMの汚職防止方針では、上記のような汚職・賄賂を禁止しています。

 さらに、2024年5月10日、US EXIMの監察総監室(OIG)がレポートを公表し、Trafiguraがスイス当局と米国当局により捜査を受けていることを認識したOIGが2022年にUS EXIMに対して情報提供をしていたにもかかわらず、US EXIMがOIGが提供した情報に基づいて行動しなかったことを明確に指摘。継続して2025年にもさらなる監督業務を行うとしています[7]

 JBICも贈賄防止への取り組みの中で、「わが国の輸出企業やJBICが貸付等を行う政府・企業等を含む国際商取引を行う当事者は、贈賄に係る自国の法令への理解及び遵守が求められる[8]」としています。

 また、2019年3月にOECD理事会にて採択された「公的輸出信用と贈賄に関するOECD理事会勧告」(OECD贈賄勧告)に基づき、誓約・確認の取得をするとしています。

 JBICによる融資締結は2024年3月28日ですが、2023年12月の時点でTrafiguraの贈収賄に関する報道が流れていました。またOIGが2022年の時点でUS EXIMに情報提供を行うことができた状況を踏まえれば、JBICはTrafiguraの贈収賄リスクについて事前に情報を知ることができたはずです。

 以上の背景から、以下質問および要請します。

  • JBICは米国およびスイスにおけるTrafiguraに対する贈賄捜査について融資決定前に認識していたか。また、TrafiguraはJBICに対し、贈賄に関する捜査が進行中であったことを共有していたか。
  • JBICはTrafiguraからOECD贈賄勧告で求められている誓約・確認の取得を行ったか。
  • OECD贈賄勧告違反であるにも関わらず、本件融資契約に踏み切った理由についてお示しいただきたい。
  • 現状をふまえ、Trafiguraに対する貸出を停止し、強制期限前弁済を求めるべきではないか。

以上


[1] 三井住友銀行との協調融資。協調融資総額は約560百万米ドル相当。Trafiguraは、大手資源商社として液化天然ガス(LNG)を含めた数多くの資源のトレーディング事業を展開しており、本件は日本企業がTrafiguraからLNGを輸入するために必要な資金を融資するもの。JBIC「シンガポール共和国法人Trafigura Pte Ltd に対する融資 日本企業によるLNGの安定確保に貢献」2024年3月29日 https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2023/press_00218.html

[2] JBIC「贈賄防止への取り組み」https://www.jbic.go.jp/ja/support-menu/export/prevention.html

[3] Bloomberg “Trader Trafigura Targeted by US and Swiss Over Corruption” Dec 6 2023 https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-12-06/trafigura-charged-in-switzerland-over-alleged-angola-bribery

[4] US Department of Justice “Swiss Commodities Trading Company Pleads Guilty to Foreign Bribery Scheme” March 28 2024 https://www.justice.gov/opa/pr/swiss-commodities-trading-company-pleads-guilty-foreign-bribery-scheme

[5] Reuters, “Trafigura pleads guilty, agrees to pay about $127 million to settle US probe” March 28 2024 https://www.reuters.com/markets/commodities/trafigura-pay-127-million-over-us-doj-probe-2024-03-28/

[6] Bloomberg, “NGOs Say US Should Stop Backing Trafigura After Bribery Charges” Jan 24 2024 https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-01-23/trafigura-bribery-charge-ngos-say-us-should-withdraw-backing

[7] OIG, “Management Alert: Lack of Agency Action Related to an OIG Enhanced Due Diligence Referral” May 10 2024 https://www.oversight.gov/sites/default/files/oig-reports/EIB/EXIM-OIG-Final-Management-Alert-Lack-Agency-Action-Related-OIG-Enhanced-Due-Diligence-Referral-OIG-O.pdf

[8] JBIC 「贈賄防止への取り組み」https://www.jbic.go.jp/ja/support-menu/export/prevention.html

 

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