JERA碧南火力でのアンモニア混焼実証試験に対し抗議〜アンモニア混焼は気候変動対策ではない〜

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2024年3月26日、株式会社JERA(以下「JERA」)は、愛知県碧南市での碧南火力発電所でのアンモニア混焼の実証試験を開始すると報道されている[1]。(*26日16時現在、試験は未開始であることを同発電所に確認している。)JERAは「燃焼時にはCO2を出さない」としてアンモニアをゼロエミッション燃料と掲げているが、今回の実証試験を含め使用されるアンモニアは、当面の間は化石燃料由来のものであり、その製造や輸送の過程で、多くの温室効果ガスを排出する。FoE Japanは、アンモニア混焼は化石燃料産業を温存し、気候変動対策を遅らせるものであるとして同実証試験に強く抗議する。

アンモニアはゼロエミッション燃料ではない

今回の混焼は、碧南火力発電所の4号機(発電出力100万kW)の燃料である石炭の20%をアンモニアに置き換えるというものである。同実証試験は、2024年6月まで行われる予定で、4万トンのアンモニアが使用される。また、現在商用的に確立しているアンモニアの製造方法は、天然ガスなど化石燃料を原料としたものだ(天然ガスに含まれる炭化水素と大気中の窒素を反応させて製造するハーバーボッシュ法)。最新の設備を用いても、1トンのアンモニアを製造するのに約1.6トンのCO2が排出され、「脱炭素」燃料とは言えない。

アンモニア発電は、気候変動の緊急性に応えられない

JERAは、実証試験を通じ、石炭からアンモニアへの転換率を2040年頃までに50%以上、2050年までには100%まで高めるための課題を探り、シミュレーションを重ねるとしているが、その工程も未定であり、それまで石炭火力発電が続くということでもある。しかし、2024年3月19日に公表されたWMOの報告書によれば、2023年が記録上最も暖かい年であり、世界の地表付近の平均気温が産業革命前より1.45℃上回ったと報告された[2]。気候危機の被害が深刻化する中、アンモニア専焼の実現を待つ時間的猶予はない。

アンモニアの危険性、燃焼時の技術的・経済的課題

気候変動の緊急性に応えていないという課題やコスト的な課題に加え、アンモニアの燃料としての利用自体にも課題がある。アンモニアは燃焼時に大気汚染物質のNOxを排出する。また、アンモニア自体に毒性・腐食性があり保管にあたってリスクもあり、万一漏洩した際の安全性に懸念も残る。また、コスト面でも、英国のシンクタンクTransition Zeroによれば、2030年においても各技術の発電コスト(LCOE)推定値比較では、アンモニア発電よりも太陽光や風力発電の方が安価になると推定されている。

真の気候変動対策として求められているのは、化石燃料からの脱却だ。日本以外のG7各国は、2030年までにすべての石炭火力発電所を廃止することを決めており、日本も2030年までに石炭火力発電の廃止が求められている。この世界の要請に鑑み、省エネなどを通じて消費電力量を根本的に減らした上で、水素・アンモニア発電に頼らずに、石炭火力から再生可能エネルギーへと舵を切ることが、日本のすべき気候変動対策である。

注[1]:日本経済新聞「JERA、石炭とアンモニアで発電 26日から実証」、2024年3月13日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC114OX0R10C24A3000000/、2024年3月26日最終閲覧

注[2]:WMO, “State of the Global Climate 2023”, 2024年3月19日、 https://wmo.int/publication-series/state-of-global-climate-2023、2024年3月25日最終閲覧

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