CCS(炭素回収貯留)ってなに?

気候変動2026.2.3

社会の脱炭素化が急がれる中、炭素を回収して地中などに貯留する「CCS(炭素回収貯留)」が注目されています。CCSは気候変動対策になるのでしょうか?よくある質問と回答をまとめました。

Q1. CCS(炭素回収貯留)とはなんでしょうか?

CCSとは、カーボンキャプチャーアンドストレージ(Carbon Capture and Storage、炭素回収貯留)の略で、製油所や発電所、工場などから排出される二酸化炭素(CO2)を分離・回収して地中に貯めることを指します。回収したCO2を資源として利用する場合はCCU(炭素回収・利用)やCCUS(炭素回収利用・貯留)と呼びます。陸地や海底に地中貯留を行う場合、回収したCO2を輸送し、圧入井を通じて貯留に適した地層に圧入されます。[TOP]

Q2.  CCS事業はすでに実施されているのでしょうか?

CCSの技術は1970年代から、石油増産のために研究されてきました。回収したCO2を油田に圧入し、原油の採掘量を上げるEOR(原油増進回収)が、石油ガス業界によって実施されています。一方、発電所などにCO2回収装置を設置してCO2を回収する事業は、コストの高さなどが原因でほとんど進んでいません。日本では、規模の大きなものとして、北海道の苫小牧で「CCS大規模実証試験」が行われました。同事業では、2016年4月から2019年11月の3年半をかけて、2つの圧入井から合計30万トンのCO2が圧入され、現在もモニタリングが続けられています。(関連ブログ:本当にできる?日本でのCCSの可能性と苫小牧実証事業 | FoE Japanブログ

海外では、米国、カナダ、ノルウェーなどでCCSの実例があります。グローバルCCSインスティテュートによると、2024年時点で、世界で50のCCS事業が稼働しており、すべての事業のCO₂の回収容量は累計で年間約5,000万トンです(実際に回収された量とは限らない)。このうち、全体の7割にあたる34事業が、石油増産につながるEOR事業でした。残る3割は、回収されたCO₂を海底などに貯留する事業ですが、その貯留容量は合計しても年間1,000万トン程度1。日本最大の火力発電所・碧南火力1ヵ所だけで年間約2,300万トンが排出されるので、もし容量分を貯留できたとしてもその半分にも届きません。回収されたCO2の4分の3近くがEORに利用されており、化石燃料生産を後押ししているだけであることが窺えます2(図1)。[TOP]

図1:二酸化炭素回収の取り組みは大手石油会社に利益(出典:IEEFAの資料を翻訳

Q3. 日本に回収した炭素を埋める場所はあるのでしょうか?

世界では、回収されたCO2の多くがEORに使われていますが、日本にはほとんど油田がなくEORを行うことは現実的ではありません(そもそもEORであれば脱炭素に貢献しません)。

地中に注入するためには、地層にいくつかの条件が必要とされています。グローバルCCSインスティチュートによると、一つは地下1km以深であること、地層にCO2を十分に貯留できる多数の小さなボイド(空洞)があること、CO2が漏れ出るのを防ぐ地層(キャップロック)が存在することです。このような特徴を持つ地層のほとんどが堆積盆地と呼ばれる地質にあります。

日本CCS調査株式会社によれば、日本の領域内、特に海洋に大規模な貯留ポテンシャルがあるとされていますが、コストが高く、具体的な貯留地はまだ見つかっていません。また回収したCO2を運ぶ輸送船もまだなく、実証実験が始まろうとしている段階です。加えて日本政府内では、国内における適地確保に課題があり貯留コストが高いことから、安価に貯留できると予測される海外にCO2を運んで貯留するという議論まで行われています。[TOP]

Q4. 回収した二酸化炭素はどのように運ぶのでしょうか?

日本では、CO2の導管(パイプライン)輸送と船舶輸送が想定されています。高圧ガス保安協会によると、中〜長距離のCO2パイプラインの敷設事例は日本にはありません。 米国はCO2パイプラインが最も発達している国で、現在合計で5,300マイル(=8,529.523km)に及ぶCO2パイプラインが敷設されています。米国ではCO2輸送パイプラインの事故が多数報告されており、パイプラインの安全性も課題の一つです。2020年にはミシシッピ州でパイプライン事故が発生し、破断したパイプラインから約500万リットルの液化CO2が噴出・漏洩しました。事故現場の近隣住民約200名が退避、呼吸困難等で45名が入院する事態になりました2024年にもルイジアナで事故がありました。周囲400mの住民に屋内退避が呼びかけられましたが、警告はソーシャルメディアで呼びかけられ、自治体の安全システムには周辺8軒の住宅の電話番号しか登録されておらず、安全対策に懸念が投げかけられました。 パイプライン輸送に加え、CO2を液化して船で運搬することも計画されており、液化CO2船の開発が政府の支援で行われています。低温・低圧状態でCO2を運ぶ実証試験船「えくすくぅる」が2023年に完成し、実証運転をおこなっていますが、まだ実用化されていません。

ノルウェーでは「ロングシップ」というCCS事業が開始。これは世界初の国境を跨いだCCS事業と言われており、ノルウェー国内で排出されたCO2の他、デンマーク、オランダなど近隣諸国で回収されたCO2を貯留する計画です。ノルウェー西部の受け入れ基地まで海上輸送し、約100キロメートルのパイプラインで北海沖合まで運び、海底下約2,600メートルの帯水層に貯留します(CO2を回収して運ぶ部分の事業名は「ノーザンライト」)。この事業のため、建造が予定されている4隻のうち、「ノーザンパイオニア」と「ノーザンパスファインダー」「ノーザンフェニックス」というCO2運搬船が稼働していますが、それぞれが運搬できるCO2の量は8,000トンたらず、船の燃料はLNGです。

調査報道によると、同事業にはノルウェー政府から多額の補助金が投入されていますが、コストが上がり続けている他、「CO2の運搬」も課題の一つとなっています。たとえば、ノルウェーに本社を持つ肥料大手のYaraが所有するオランダのアンモニアプラントから排出されるCO2を年間80万トン回収しノルウェーで貯留する計画ですが、一隻が運べる量が現状8,000トン程度なので、仮にこの工場からの排出量を目標分回収して運搬しようとすると、100回以上航行する必要があります。さらに、ただピストン運行するだけではなく、CO2を下ろしたあとに清掃をして再度回収に戻るのに3日かかるため、今のCO2船の量とスペックではとうてい目標達成は不可能と指摘されています。

参考:二酸化炭素貯留事業等安全小委員会 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/carbon_dioxide/index.html

Q5. CCSは環境に悪影響を及ぼさないのでしょうか?

CCSには様々な環境影響が懸念されています。

例えば、地中に注入することにより地震が誘発される可能性、二酸化炭素が漏れ出した時のリスク、水ストレスの増加、海洋酸性化などが挙げられます。

例えばアルジェリアで行われたCCS事業では枯渇したガス田にCO2を圧入していましたが、CO2が漏れ出るのを防ぐ地層に動きが認められ、漏出の懸念もあったために注入が中断されました4。前述のように2020年、アメリカ・ミシシッピ州におけるEOR事業では、付随するCO2輸送パイプラインが破損、200人が避難し45名がCO2中毒症状で病院に運ばれました5

火力発電所にCCSを設置する場合、発電所そのものに必要な冷却水に加えて、CCS装置にも冷却水が必要になります。そのため、すでに水不足が生じている地域においては特に、CCSの導入が水ストレスを増加させることが懸念されています。

燃焼後、排ガスからCO2を回収する技術として、化学吸収法(アミン等の溶剤を用いて化学的にCO2を吸収液に吸収させ分離する方法)、物理吸収法(高圧下でCO2を物理吸収液に吸収させて分離する方法)、膜分離法(CO2 が選択的に透過する膜を用いて分離する方法)、深冷分離法(極低温下で液化し沸点の違いを用いて分離する方法)があります。苫小牧で採用されているアミンを利用する化学吸収法は、アミンによる生態系や環境への有害性も懸念されています6。[TOP]

Q6. Q.6 CCSには長期モニタリングが必要と聞きますが、どれくらいの期間モニタリングが必要なのでしょうか?

CCSが温暖化対策として成立するためには、回収し貯留したCO2が大気中に漏れ出すことなく、長期にわたって安定的に貯留される必要があります。そのため、貯留後に漏洩がないことをモニタリングすること、またCO2を回収し貯留のために運搬される過程での漏洩を監視することが必要になります。

欧州などでは、貯留サイトを閉鎖した後20年間のモニタリング義務があり、その後政府にモニタリングの責任を移管することができます。

日本でも、圧入中、圧入停止後から貯留事業の廃止の許可を受けるまでの期間、事業者はモニタリングを行う必要がありますが、圧入後のモニタリング期間について法律で必ずしも明確に定められていません。また、事業者によるモニタリングの終了後は国が出資するJOGMECがモニタリングを引き継ぎます。詳細なモニタリング事項などは政府の審議会やワーキンググループで2025年現在も議論されています。[TOP]

参考・貯留事業の制度検討について

Q.7 CCS事業に環境影響評価は必要ないのでしょうか?

開発事業による重大な環境影響を防止するためには、環境の保全についてもあらかじめよく考えていくことが重要となります。そのため日本では環境アセスメント(環境影響評価)制度が導入されており、例えば火力発電所や道路が建設される際には環境影響評価が行われ、住民からの意見聴取も行われます。一方、CCSは大規模な掘削やパイプライン敷設を伴うにもかかわらず、環境影響評価は義務付けられていません。CCS事業法が国会で議論された際に複数の議員から環境影響評価の必要性が指摘されましたが、法律には反映されませんでした。

諸外国ではどうなっているのでしょうか。例えばEUは、炭素貯留事業の環境影響評価を義務付けています。あらゆる漏洩リスクに対応するためのモニタリングシステム、是正措置、および閉鎖後計画を策定することも義務付けられています。米国では、州にもよりますが、CO₂を貯留する井戸は、安全飲料水法(Safe Drinking Water Act)に基づき、詳細な立地評価、リスク評価、モニタリング計画および是正措置計画の策定が義務付けられています。

日本のCCS事業法は、環境や社会に対する影響を適切に評価し開示する仕組みが整っておらず、環境・社会影響が最小限に抑えられるのか周辺自治体や住民が判断するのは困難です。[TOP]

Q8. IPCCはネットゼロ達成のためにCCSが必要だといっているのでしょうか?

気候変動対策として最も必要とされているのは化石燃料依存からの脱却です。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、CCSを最もコストが高く削減効果が小さい技術の一つとして認識しています。図2は、それぞれの策がもたらす削減効果を示しています。バーの長さは削減への貢献量を示し、色はコストを示しています(青色はコストが安く、赤はコストが高い)。これを見ると、CCSはコストも高く、削減効果も小さいことが示されていることがわかります。一方で、風力や太陽光などはコストも安く、削減効果も高いことが示されています。
さらに、貯留の安全性やコストへの懸念、そして貯留や運搬時にCO2が漏れ出るリスクも見逃せないことなどを指摘しています。さらにCCSの利用が化石燃料利用を延長させてしまうことにも触れられています7。IPCCによるシナリオの中にCCSが含まれていますが、あくまでCCSは限定的な利用に留められており、化石燃料のフェーズアウトが最優先であることは間違いありません。[TOP]

図2:2030年における排出削減対策と削減費用別の削減ポテンシャル(出典:IPCCをもとに国立環境研究所が作成

Q9. CCSは気候変動対策として有効なのでしょうか?

気候危機を食い止めるためには、温室効果ガスの確実な削減に貢献する対策を早期に実行することが必要です。すでに、特に電力セクターにおいては、再生可能エネルギーや省エネなど、確実で安価な脱炭素技術が存在します。一方で、化石燃料の採掘や燃焼から生じるCO2を分離・回収・貯留しようというCCSは、化石燃料の利用を継続し、温室効果ガスの排出を前提とした技術といえます。また、CCSによって全てのCO2が回収されるわけではありません。90%程度の回収率が目安とされていますが、実際の回収率は60〜70%に留まっています。また、回収されるのはCO2のみで、メタンなどその他の温室効果ガスが回収されているわけではありません。さらに分離・回収のために莫大なエネルギーや水が必要になります。例えば、首都圏CCS事業では年間120万トン、将来的には年間500万トンのCO2を回収貯留するとされています。しかしこれは、大規模な石炭火力発電1基の年間排出量とほぼ同じで、大きな効果とは言えません。石炭火力からの脱却こそ急ぐべきです。[TOP]

Q10. CCSは経済的に成り立つのでしょうか?

過去に行われたCCS事業は、ほとんどすべてと言っていいほど失敗しています。1995年から2018年の間に計画されたCCS事業のうち、43%が資金不足などの理由で中止か延期されていました。さらに大規模な事業(年間3万トン以上のCO2を回収するもの)に至っては78%が中止か延期されていました8

2022年に経済産業省のCCS事業コスト・実施スキーム検討ワーキンググループで示された試算によると、CCSコストは12,800円〜20,200円/tCO2で、これを2050年までに6割程度に低下させるとしています。日本政府のCCS長期ロードマップは「コスト目標に向け、引き続き、コスト低減を可能にする技術の研究開発・実証を推進する」とあり、目標到達が可能なのか曖昧です。6割となっても、高額であることには変わりありません。またIEEFAの調査でも、発電所におけるCCSの導入は発電コストを大幅に増大させることが示されています。エネルギー別LCOEの比較を示す図3をみると、CCS付きの石炭火力およびガス火力は、蓄電設備を備えた洋上風力や太陽光発電のコストを大幅に上回っています。[TOP]

図3:エネルギー別LCOE(発電量あたりのコスト)比較(出典:IEEFAの資料を翻訳

Q11. 日本政府はどれくらいCCSを導入する予定なのでしょうか?

日本政府は2022年度、CCS長期ロードマップを作成し、2050年までにCO2を年間1.2億トン〜2.4億トン貯留する目標を立てています。また、2030年までにCCS事業を本格的に開始するために、コストの低減や法整備、国民理解を深めるとしています。仮に2030年にCCS事業を本格的に開始した場合、CO2圧入井1本あたりの貯留可能量を年間50万トンと仮定すると、2050年までの20年間で年間12〜24本の圧入井を増やす必要があります。苫小牧の実証実験が3年間で30万トンであること、また国内における貯留適地がまだ選定されていないことも考えると、とても実現可能性があるようには見えません。

経済産業省が所管するエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2023年以降、9つのCCS案件を先進的CCS事業として選定し支援を行っています。そのうちの4つの事業は海外へのCO2輸送を前提にしています9。ちなみに日本の年間排出量は11億2,200万トン(CO2換算、2021年)です。貯留量の目標である年間1.2~2.4億トンとは、その10~20%に当たります。削減効果が不確実でコストの高い技術に頼るのではなく、省エネと再エネで削減量を減らすことを今すぐに始めるべきではないでしょうか。[TOP]

図4:CCS事業7案件(出典:経済産業省の図を下にFoE Japan作成)

Q.12 千葉県でもCCSの事業が計画されているようですね。どのような事業でしょうか?

千葉県の内房エリアで排出されたCO2を回収し、80キロメートルのパイプラインでCO2を運んで九十九里浜沖に貯留する「首都圏CCS」事業が進められています。

首都圏CCS事業は、JOGMECが選定した先進的CCS事業9つのうちの一つで、実施可能性調査等が国の補助金を使って行われています。

計画では、当面は、日本製鉄君津製鉄所から発生するCO2を分離回収し、パイプラインを通して木更津市、袖ヶ浦市、市原市、長柄町、茂原市、白子町、九十九里町と千葉県を横断して運び、九十九里町沖の海底地下に貯留するというものです。事業者は株式会社INPEX、日本製鉄株式会社、関東天然瓦斯開発株式会社の3社。2026年度末までに投資判断を行い、2030年には操業を開始する目標で、2025年には地元での説明会が始まりました。将来的には、製鉄所のみならず、京葉臨海工業地帯に範囲を広げCO2を回収し、年間500万トンの貯留を行うことを目指しています。

パイプラインの建設予定地には住宅地も含まれます。CO2が投棄される九十九里浜やその沖合は、漁業やマリンスポーツが盛んです。事業者は「ステークホルダーに十分な説明を行う」としていますが、説明会はパイプラインが通る限られた範囲でしか行われていません。

参考:

注釈

1. https://co2re.co/FacilityData, 2023年10月閲覧
2. IEEFA, “The carbon capture crux: Lessons learned" 2022年8月
3. 自然エネルギー財団「CCS火力発電政策の 隘路とリスク」2022年
4. MIT, “In Salah Fact Sheet: Carbon Dioxide Capture and Storage Project"
5. ハフィントンポスト “The Gassing Of Satartia" 2022年8月, The Intercept “Louisiana rushes buildout of carbon pipelines, adding to dangers plaguing cancer ally" 2023年8月
6. 環境省資料「二酸化炭素分離・回収プロセスの環境負荷評価」
7. CIEL, “IPCC Unsummarized" 2022年4月
8. Wang et al, “What went wrong? Learning from three decades of carbon capture, utilization and sequestration (CCUS) pilot and demonstration projects” Energy 2021年11月
9. 経済産業省「日本のCCS事業への本格始動」2023年6月

参考

CCSって何?動画で説明しました

CCS、ブルー水素に関する動画も公開しています

FoE Scotlandが制作したCCS、ブルー水素に関する動画に日本語訳字幕を追記しました。ぜひご覧ください。

CCS(炭素回収貯留)は気候変動対策?〜グリーンウォッシュにだまされないで!〜

ブルー水素は気候変動対策?〜発電事業者や化石燃料企業のグリーンウォッシュに注意!〜
 

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