南極に住むこの星の小さなスーパーヒーロー!8月11日は世界オキアミの日

気候変動

 2023年8月11日は、2度目の世界オキアミの日です。オキアミは南極海に生息する驚くべき生物で、この日は世界中の専門家や団体がオキアミへの注目を高めるため、様々な形で働きかけを行なっています。

南極オキアミ(Euphausia superba)という種は、南極の生態系が精緻なバランスを保つために重要な役割をはたしています。オキアミは南極の多くの生物にとって主要な食料です。さらに、オキアミは植物プランクトンを食べることで海の生態系へ貯留される炭素「ブルーカーボン」を増やす役割をはたしています。つまり、地球規模の炭素循環や、気候変動への対処をする上で欠かせない、保護すべき生物なのです。

「世界オキアミの日2023」のために用意された資料やツールの一部を以下に紹介します。

1. 南極・南極海連合(ASOC)のクレア・クリスチャンによるオキアミ折り紙の折り方ビデオ(日本語字幕つき)

2. 「オキアミ科学者が語る南極海のキーストーン種保護の必要性」世界オキアミの日を前に、ベティナ・メイヤー博士と川口創博士が漁業管理改善の緊急性を解説します。(英語のみ)

3. 「#世界オキアミの日」に – 世界のリーダーへのメッセージ

カナダ系アメリカ人の女優、モデル、メディア・パーソナリティでもあるパメラ・アンダーソンがナレーションを務める素敵なビデオ。美しい映像に、言葉の一つ一つが響きます。

「オキアミについてもっと知ろう。南極の小さなスーパーヒーローで、とても重要な生き物だということを。
南極のほとんどの生物は、オキアミなしには生きていけない。
エビに似たオキアミは、アザラシやペンギン、海鳥、魚、そして巨大なクジラまで、多くの南極の生物にとって欠かせない食べ物だ。
でも、オキアミが重要なのは野生生物にとってだけではない。
オキアミは、細かなプランクトン食ベて排泄することで、大気中の炭素を大量に、深い海へと運んでいる。その量は、3500万台の車が年間に排出する炭素の量に匹敵する。
だからオキアミは、漁獲するよりも、海にいてくれる方が重要なのだ。
気候変動に対処しようとするとき、自然は最強の味方になる
自然を痛めつけるのはやめて、リスペクトしよう。
幸い、プランはある。
南極海の広大な3つの海域を保護することが提案されている。
必要なのは、南極海域の保護に責任のある国々が、賛成してくれること。
実現へ、力を合わせよう。
南極海の保護にYESと言おう、この地球と子どもたちにより良い未来を約束するために。」

4. 日本とオキアミについてのFoE Japanからのメッセージ

 ビデオの中でパメラ・アンダーソンは、現在南極海の提案されている3つの海洋保護区(MPA)の設置について語っています。3つの場所とは、南極半島、ウェッデル海、東南極です。南極海洋生物資源保存条約(CCAMLR)には日本を含む27カ国が加盟しており、そのうち21カ国が少なくとも1つの提案に賛同しています。しかし、日本はブラジル、中国、ナミビア、ロシア、南アフリカと並んでいずれのMPAにも賛同していません。

 日本のオキアミ業界は2012年、南極オキアミを直接漁獲することをやめ、オキアミ漁船団を韓国に売却、現在は韓国やノルウェー(他にはチリ、中国、ウクライナなど)からオキアミを輸入し、オキアミ油(クリルオイル)やフィッシュミール[訳注:飼料等に使用]などとして利用してきました(オキアミ漁には通常、海から大量のオキアミを吸い上げる巨大な船が使われている)。現在、日本の水産業界は南極でオキアミ漁を再開しようとしています。また、オキアミは持続可能な方法で漁獲されていると主張し、オキアミ油、フィッシュミール、ペットフード向けの日本での消費量を増やそうとする企業も複数あります。(関連メモ:日本は2019年に南極海クジラサンクチュアリでの「調査捕鯨」プログラムを停止したため、南極海での捕鯨は完全に終了した)

 CCAMLRは毎年10月に開催され、全会一致で物事が決まる議決方式です。日本も投票権を持つものの、日本の代表団は水産庁と産業界の立場を代弁することがほとんどで、生態系や海洋生物のもつ気候を守る機能について十分な配慮ができていません。日本の代表団のメンバーには通常、漁業組織組合や巨大水産企業を代表する人たちが入っています。いくつかの国では、CCAMLRに出席する代表団に環境省や環境NGOを入れていますが、日本の代表団には含まれていません。これは、日本のCCAMLR代表団の立場には生物多様性や気候変動、生態系に関する懸念など、市民社会の声や関心が、十分反映されていないことを意味します。

 国際的な舞台では、日本政府はG7やG20、またBBNJ協定(世界の海の3割を2030年までに保護する目的も含める「公海の生物多様性保護協定」)などの国連条約、南極条約協議会などの場で、南極海やその他の海洋を保護するために多くの約束をしてきました。しかし、南極海における具体的なMPA提案に関しては、日本は現在の3つの提案のどれひとつにも賛同していません。また、日本は、資源の探索ではなく保全を目的とした科学的調査のために、もっと多くの貢献ができるはずです。

 日本は現在、南極海での漁業活動(メロ漁)を制限しており、オキアミ漁や捕鯨も行っていないため、ミドルパワーの国として一定の信頼を得ています。つまり、今日本には、南極の海洋保護のために、より強い声を上げるよい機会がきているといえます。CCAMLRの次の重要な会合は2023年10月です。

 私たちは、南極海でのMPA設立を支援するため、日本がもっと積極的な役割を果たすことを期待しています。

 私たちは、市民が国会議員に手紙を書いて、南極海を保護し、地球の小さなスーパーヒーローであるオキアミを救うために後押しするよう呼びかけます。

ボランティアや詳細情報については、こちらからご連絡ください。

南極海におけるナンキョクオキアミの群れ。写真提供:Aker BioMarine

 

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