国会議員宛てに要望書を提出ー原発GX法案は問題だらけ!

福島支援と脱原発2023.7.10

本日、国際環境NGO FoE Japanを含む9つの市民団体は、衆議院で現在審議が行われている「GX脱炭素電源法案」(※)について、衆議院経済産業委員会、環境委員会、原子力問題調査特別委員会に所属する国会議員宛てに、同法案の問題点を指摘した要望書を提出しました。(※原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案5つを束ねたもの。「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」)

9団体は、①原子力基本法に「国の責務」として、立地地域の地域振興、国民の理解促進、人材育成、事業環境整備などを追加することは、原子力産業を国が過度に保護することになり、モラルハザードを生むこと、②原子炉等規制法から運転期間の上限に関する規定を削除し、電気事業法に移すことは、必要性の根拠がなく、安全規制の緩和であること、③運転期間から運転停止期間を除外することに合理性はないこと--などを指摘しています。

また、原子力基本法を含む5つもの法律の重大な修正案を「束ね法」として審議するという提案方法そのものが、国会での議論を軽視したものと指摘し、個別の審議を丁寧に行うべきとしています。

PDF版

2023年4月6日

国会議員各位

原子力市民委員会
原子力資料情報室
国際環境NGO FoE Japan
気候ネットワーク
地球環境市民会議(CASA)
市民電力連絡会
グリーンピース・ジャパン
Fridays For Future Japan
国際環境NGO 350.org Japan

GX脱炭素電源法案に関する要望書

 国政に関する日々のご活動に心より感謝いたします。
 さて、3月30日、5つの法律改正案を束ねた「GX脱炭素電源法案」(脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案)について衆議院本会議で趣旨説明が行われました。束ねられているのは、原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案です。
 私たちは、原子力の推進については、経済合理性がないこと、電力の安定供給をむしろ損なうこと、事故やトラブルのリスクが大きいことなどの理由で反対の立場です。
一方で、たとえ原子力を容認もしくは推進の立場にたったとしても、この束ね法案には、以下のような問題が含まれていると考えています。

1.原子力基本法:「国の責務」の詳細な書き込みで、原子力産業を手厚く支援

 原子力基本法の改正は、その必要性に関してまずは原子力委員会における十分な議論が求められます。また、当該議論に基づき、パブリック・コメントなど、国民の意見を幅広く反映させる必要があります。しかし、そのような手続きは踏まれませんでした。
改正案において、「国の責務」をかなり詳細に書き込んでいますが(注1)、これは以下の観点から疑問です。
・ 「再エネ特措法」など他の法律とのアンバランスが著しい。「原子力」のみを特別扱いしている。
・ エネルギーの安定供給や、エネルギー部門における脱炭素化は、原子力のみならず総合的に考慮すべきであるため、「エネルギー政策基本法」で十分に対応できる。
・ 本来、原子力事業者が自らの責任で実施すべき内容を、国が肩代わりすることになる。結果的に原子力事業者を過度に保護する内容となり、モラルハザードを生む。
・ 原発がエネルギー安定供給、自律性の向上に資するかは議論の余地が大きい。たとえば、原発の事故やトラブルが電力供給に及ぼす影響、ウラン燃料は100%輸入依存であることなどを考慮すべきである。

2.原子力基本法:運転期間についての規定は本末転倒

 原子力基本法改正案(第十六の二 第2項)において、「運転期間に係る規制は、(中略)原子力の安定的な利用を図る観点から措置する」としています。これは、運転期間の上限を原子炉等規制法から外し、電気事業法に新たに盛り込むこととの整合性をつけるためであると思われますが、個別法にあわせて原子力基本法を改正することは本末転倒です。また、運転期間にかかる規制を利用に従属させるとも解釈でき、不適切です。

3.原子炉等規制法:運転期間上限削除に立法事実なし

 原子炉等規制法の改定において、現行の運転期間を原則40年にするという規定(第四十三条の三の三十二)を削除しようとしています。
2012年当時、運転期間上限に関する定めは、明らかに「規制」の一環として原子炉等規制法に盛り込まれました。このことは、今国会において岸田首相も答弁している通りです。
その後、運転期間の上限を撤廃する理由となる、新たな事象が生じたわけではありません。
すなわち、これを削除する立法事実はありません。
政府は、運転期間の上限について「利用側の政策」として整理したと説明し、その根拠として、原子力規制委員会の令和2年7月29日の文書(「運転期間延長認可の審査と長期停止期間中の発電用原子炉施設の経年劣化の関係に関する見解」)をあげています。しかし、当該文書の主旨は、運転期間から長期停止期間を除外することは適切ではないというものであり、策定過程において、運転期間の上限の撤廃の可否について委員の間で議論が行われたものではありません。根拠とするには不適切なものです。

4.原子炉等規制法・電気事業法:安全規制の緩和につながる

 今回提案されているのは、運転期間の上限に関する規定を原子炉等規制法から電気事業法に移し、原発の運転期間の延長については、経済産業大臣が認可を行うことです。認可にあたっては、電力の安定供給を確保することに資すること、事業者の業務実施態勢を有していることなど利用上の観点からの判断となります。
政府は、原子炉等規制法に30年を超える原発の劣化評価を規定することにより、規制は強化されるとしています。しかし、従来から、30年超の原発に対する10年ごとの劣化評価は、高経年化技術評価として行われてきました(原子炉等規制法第43条3の22第一項の下の「実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則」)。今回、これを法律に格上げすることになりますが、基本的には、従来の制度の延長線上であり、新しい制度というわけではありません (注2)。
すなわち、今回の改定は、運転期間の上限規定を原子炉等規制法から削除することとなりますが、安全を担保するための制度を新規に追加するわけではなく、原子力規制委員会の権限を縮小し、規制を緩和するものです。

5.電気事業法:長期停止期間を運転期間から除外する合理性なし

 今回、電気事業法に運転期間の延長に関する認可が移されますが、①関連法令の制定・変更に対応するため、②行政処分、③行政指導、④裁判所による仮処分命令、⑤その他事業者が予見しがたい事由――によって運転停止を行っていた期間については運転期間から除外できることになります(電気事業法第27条の29の2第4項)。しかし、たとえこれが事業者にとって他律的なものであったとしても、当然、経年劣化は進行します。また、利用側の観点に立ったとしても、これらの停止期間を運転期間から除外できるとする合理的な理由は見当たりません。さらに、この運転停止事由に関してはそれぞれ当時運転停止を命令もしくは要請すべき社会的なあるいは法令上の理由があり、運転停止の必要がなかったと経済産業省が認定することは適切ではありません。

以上の理由から、貴職におかれましては、本案に反対していただけますよう、お願いいたします。また、これらの問題点について国会審議で明らかにしていただけますようご尽力いただければ幸いです。

なお、原子力基本法を含む5つもの法律の重大な修正案を「束ね法」として審議するという提案方法そのものが、国会での議論を軽視したものではないでしょうか。丁寧な議論を行うために、個別の審議をお願いいたします。

[注1] 第二条の二において、「国は、エネルギーとしての原子力利用に当たっては、原子力発電を電源の選択肢の一つとして活用することによる電気の安定供給の確保、我が国における脱炭素社会の実現に向けた発電事業における非化石エネルギー源の利用の促進及びエネルギーの供給に係る自律性の向上に資することができるよう、必要な措置を講ずる責務を有する」とした上で、同第2項において、「原子力施設が立地する地域の住民をはじめとする国民の原子力発電に対する信頼を確保し、その理解を得るために必要な取組及び地域振興(中略)推進する責務を有する」とし、さらに第二条の三において、人材育成、産業基盤の維持および強化、事業環境整備などを定めている。

[注2] 老朽原発の劣化評価についての具体的な審査手法や、岸田首相の求めた国民への「わかりやすい説明」の内容は、現在原子力規制委員会で議論されているが、60年を超える原発の実運転データは存在しないこと、「設計の古さ」への対応は困難であることなど、課題が山積している。

【解説】GX脱炭素法案とは? 国会の審議状況は?

今期国会にかかる原発推進GX法案は2つあります、(1)GX推進法案、(2)GX脱炭素電源法案(※)です。※原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案5つを束ねたもの
(1)については、3月30日、衆議院で可決。今後、参議院で審議されます。詳しくは⇒「GX推進法案を通してはならない5つの理由
(2)については、同日、衆議院で審議入りしました。以下の内容を含んでいます。

1.原子力基本法の改悪:「原発の活用」を国の責務に

第二条の2に、電気の安定供給の確保、脱炭素社会の実現などのために原子力を活用することを、国の責務として盛り込みます。
また、原発立地地域の住民や国民の理解の促進、地域振興などを促進することも盛り込んでいます。
さらに第二条の3に、原子力にかかる人材の育成、産業基盤の維持、強化、再処理等、使用済燃料の貯蔵、廃止阻止の円滑な実施のための地方公共団体との調整などを盛り込んでいます。
「国の責務」として盛り込むということは、税金その他公的資金を、上記のような原発推進のために投入するということです。初期段階にあり、これから伸びていく、社会的にも望ましい産業を育てるためであれば、国費を投じていくこともありうるでしょう。しかし、すでに開始から50年以上も経過しており、斜陽産業である原子力にここまで手厚い保護をすることに合理性はあるのでしょうか。

2.原子炉等規制法から運転期間の上限に関する定めを削除し、電気事業法に移す

現在、老朽化した原発の安全確保のために、原子力規制委員会が所管する原子炉等規制法には2つの仕組みが盛り込まれています。
1つめは原発の運転期間を原則40年とするルール。原子力規制委員会の審査を合格した場合、1回に限り20年延長できます。
2つめは、30年を超えた原発について10年ごとに審査を行うルールです。
この1つ目の運転期間に関するルールを、「原子炉等規制法」から削除し、経済産業省が所管する「電気事業法」に移すというものです。
「電気事業法」に移すことにより、原子力を規制する立場の原子力規制委員会ではなく、原子力を利用する立場の経済産業省が、原発の運転期間に関する決定権をもつことになります。

3.運転停止している期間を、運転期間から除外できるようにする

除外できるのは、東日本大震災発生後の新規制基準制定による審査やその準備期間、裁判所による仮処分命令その他事業者が予見しがたい事由によって生じた運転停止期間などです。

4.30年を超える原発についての劣化評価を、法律に格上げする

今までも、「高経年化技術評価」として、30年を超えた原発について10年ごとに劣化評価に基づく審査を行っていました。これは、原子炉等規制法の下の規則により位置づけていました。これを、原子炉等規制法に格上げし、若干の変更を行います。たとえば、いままで「10年ごと」としていましたが、「10年を超えない期間ごと」としています。
政府は、これをあたかも新しい制度を盛り込むかのような説明をしており、メディアもそのように報じていますが、30年を超える原発の劣化評価は、従来も行ってきた制度であることに注意が必要です。

原発の運転期間については、こちらもご覧ください👉「Q&A 原発の運転期間の延長、ホントにいいの?

  1. 原子力産業を長期にわたり官民資金で支援する
  2. 経済産業省への白紙委任
  3. 脱炭素基準、環境・人権配慮基準の不在
  4. 将来世代を含めた国民が負担し、排出者を利する
  5. 資金の流れが不透明、監視、検証ができない

【Q&A 原発の運転期間の延長、ホントにいいの?】

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