GX推進法案を通してはならない5つの理由
今期国会にかかるGX関連法案は2種類あります。
1.GX推進法案(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案)
…政府が定める「GX推進戦略」を推進するための法律
2.GX脱炭素電源法案
…原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案5つを束ねたもの。国が前面に立っての原子力推進、運転期間の実質延長などを法制化する内容。くわしくはこちらをご参照ください👉GX 脱炭素電源法案の問題点
このうち、「1」のGX推進法案について、「脱炭素だし、成長分野への投資だし、いいんじゃない?」と思っている人もいるかもしれません。しかし、この法案は、原発や火力を温存するために将来世代にわたって大きな国民負担を求める内容で、しかも官民のお金を流し込む先は経済産業省に委ねられるというたいへん問題の多い内容となっています。
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1.原子力産業を長期にわたり官民資金で支援する
- 政府がすでに閣議決定しているGX基本方針には、原発の着実な再稼働やそのための理解醸成に国が前面に立つこと、次世代革新炉の開発・開発建設、人材育成、事業環境整備、核燃料サイクルの促進などが含まれる。「GX推進法案」はこのGX基本方針を実現するための法案。
- 「GX脱炭素電源法案(※)」と車の両輪。長期にわたって原子力産業を国が支援し続けることになる。
※ 原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案5つを束ねたもの
- 官民の資金を原子力産業に投じることを正当化します。
2.経済産業省への白紙委任
- 第6条で、「政府はGX推進戦略を定めなければならない」としている。経済産業省が案を作成し、閣議決定する。
- 20兆円規模の「GX経済移行債」の発行、「GX推進機構」による金融支援や債務保証などにより、150兆円規模の官民のGX投資を生み出すとしている。これらの資金の投資先は、この「GX推進戦略」に基づき、決められる。つまり、経済産業省が巨額の官民の資金の行き先を決めることになる。
- 「GX推進機構」は経済産業大臣の認可法人。業務計画、財務・会計などは、「経済産業省令」によって定めるとしている。
- 「この法律に定めるもののほか、この法律の実施のために必要な事項は、経済産業省令で定める」(第74条)としている。
3.脱炭素基準、環境・人権配慮基準の不在
- 脱炭素、環境人権配慮の基準がない(注)。
- 閣議決定されたGX基本方針は、グレー(またはブラウン、ブラック)水素・アンモニア利用は化石燃料消費量を増やし、温室効果ガス排出増大をもたらす内容。
- CCS利用拡大方針は石炭をはじめとする化石資源利用を温存することになる。
- 1.5度目標、グラスゴー合意、G7コミュニケとの整合性がない
注)たとえばEUタクソノミーでは、エネルギー分野においては、太陽光・風力については閾値なし、水力・地熱に関してはライフサイクルにわたるGHG排出量が、1kWhあたり100g未満、運輸においては直接CO2排出がゼロ(トランジショナルな活動については1kmあたり直接CO2排出が2025までは50g未満)などと、具体的に定められている。また、気候変動の緩和・適応、水と海洋資源、循環型経済、環境汚染の防止と抑制、生物多様性といった環境分野の一つもしくは複数に貢献し、いずれに対しても著しい害を及ぼさないこと、ビジネスと人権に関する指導原則など「最低限のセーフガード」を満たしていることなどとされている。
4.将来世代を含めた国民が負担し、排出者を利する
- 大量のGHG排出を行っている大手電力などを支援する内容となっている。
- 財源は、国債発行(GX経済移行債)などで賄われるが、将来的に炭素賦課金などで回収することをあてにしている。最終的には電力消費者、すなわち国民が広く負担する内容となる。
5.資金の流れが不透明、監視、検証ができない
- 「GX経済移行債」による資金の使途、「GX推進機構」に流れこむ資金の流れが不透明である。国会(つまり国民)によるコントロール、監視、検証ができない。
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参考)経済産業省|「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」(GX推進法案)が閣議決定されました
【Q&A 原発の運転期間の延長、ホントにいいの?】
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