【プレスリリース】ミャンマーのガス開発で合弁相手がEUの制裁対象に 日本政府と企業は早急かつ責任ある撤退を!
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メコン・ウォッチ
国際環境NGO FoE Japan
2021年2月のクーデター以降、国軍による市民への暴力と深刻な人権侵害が続いていることを理由に、2月21日、EUが新たな制裁対象の追加(22個人、4社)を発表しました(1)。その中に、ミャンマー石油ガス公社(MOGE)が含まれています。MOGEとは、経済産業省とENEOS、三菱商事がイェタグン・ガス田開発(2)で合弁を組んでいます。
MOGEは国有企業で、ミャンマーの石油・ガス分野の規制機関として石油やガスの探鉱・生産などを監督しています。MOGEを制裁対象とする理由としてEUは、「MOGEは国軍に支配されていて、国軍のために収入を生み出しており、その結果ミャンマー/ビルマにおいて民主主義と法の支配を弱体化させる活動を行う国軍の能力を助長している。(MOGE is thus controlled by and generates revenue for the Tatmadaw, therefore contributing to its capabilities to carry out activities undermining democracy and the rule of law in Myanmar/Burma.)」と述べています。
日本の官民が関与しているイェタグン・ガス田開発は、MOGEを通じて多額の収入を国軍にもたらす可能性が指摘されてきました。昨年12月にミャンマー市民団体Justice For Myanmarが公表したリーク文書(3)によれば、2021年10月21日からの6ヵ月間にイェタグン・ガス事業から国軍に2,237万米ドルの収入が入ることが示唆されています。今回のEUによる制裁は、これまでの指摘を裏付けるものであり、日本の官民が出資してきたガス事業からMOGEを通じて一体幾らの資金が国軍に流れたきたのか、そして国軍の人権侵害に加担してきたのか、厳しく問われるものです。
メコン・ウォッチとFoE Japanは、イェタグン・ガス田開発にJXミャンマー石油開発を通じて出資している経済産業省、JX石油開発(ENEOSの子会社)、三菱商事に対し、同ガス事業の収益が国軍に流れないよう、また事業に関連してこれまでに支払われた、あるいは今後支払う予定の各種支払を公開するよう、要請してきました(4)。しかし、支払いに関する情報はいずれの出資者も一切明らかにしていません。先週、同事業からの撤退方針をようやく固めたと報じられた三菱商事も、その理由に採算の悪化をあげており、ミャンマーの人権状況を考慮した結果ではありませんでした。
日本はイェタグン・ガス田開発に1990年代から携わっており、軍政時代の2000年から操業を開始しました。このガス田はその操業期間のほとんどの間、軍事政権の重要な財源の一つとなってきました。国軍の暴力と人権侵害に加担してきた日本の官民の責任は甚大です。
経済産業省、ENEOS、三菱商事は、ミャンマー国軍による人権侵害にこれ以上加担することを回避するためにも、同事業の収益がミャンマー国軍に支払われないよう確実な措置を講じながら、責任ある撤退を早急に実現することが求められています。
(1) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32022D0243&from=EN
(2) イェタグン・ガス田の権益は、マレーシア国営企業 ペトロナス・チャリガリ社が40.9%、ミャンマー石油ガス公社(MOGE)が20.5%、タイ政府系のPTTエクスプロレーション・アンド・プロダクション(PTTEP)が19.3%、日系のJXミャンマー石油開発が19.3%を保有。
(3) https://www.justiceformyanmar.org/stories/leaked-documents-show-min-aung-hlaing-personally-concerned-over-oil-and-gas-payments
(4) https://foejapan.org/aid/doc/210915_myanmar.html
本件に関するお問合せ
メコン・ウォッチ 木口: info@mekongwatch.org
関連資料
※関連プレスリリース
2022年2月18日 「ミャンマー・イェタグンガス田事業 三菱商事の撤退方針は一定の前進も、責任ある撤退が必要」
※イェタグン・ガス田開発の関連資料
メコン・ウォッチのWEBサイトをご覧ください > http://www.mekongwatch.org/report/burma/gas.html