【プレスリリース】ミャンマー・イェタグンガス田事業 三菱商事の撤退方針は一定の前進も、責任ある撤退が必要

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メコン・ウォッチ
国際環境NGO FoE Japan
Justice For Myanmar

本日、ミャンマー・イェタグンガス田事業について、三菱商事が天然ガスの枯渇で採算が悪化していることから撤退する方針を固めたとの報道が複数なされました。メコン・ウォッチ、FoE Japan、Justice For Myanmar(JFM)は、この三菱商事の方針決定を一定の前進と評価しつつも、三菱商事の撤退が責任あるものであり、かつ、事業に関連する人権侵害にこれ以上加担しないことを求めます。

責任ある撤退には、同事業の収益がミャンマー軍政に支払われないようにすることを含む必要があります。支払われれば、国軍が展開している恐怖の作戦を資金的に援護することになります。

昨年12月にJFMが公表したリーク文書によると、2021年10月21日からの6ヵ月間にイェタグン事業から2,237万米ドルの収入が軍政に入ることになります。同文書では、非合法軍政の指導部が、イェタグン事業がミャンマー石油ガス公社(MOGE)に収める支払いについて直接の関心を示しています。つまり、三菱商事や他の出資者が支払を通じて非合法軍政に関与しているということです。

メコン・ウォッチとFoE Japanは、三菱商事および他の日本の出資者に対し、イェタグン事業の収益が国軍に流れないようにし、事業に関連してこれまでに支払われた、あるいは今後支払う予定の各種支払を公開するよう、要請してきました。しかし、いずれの出資者も具体的な措置を取らず、支払いについても明らかにしていません。

今年1月、メコン・ウォッチ、FoE Japan、JFMを含む市民団体は、ミャンマーで軍政と関係のある事業を行っている日本企業の株主に対し、ミャンマー国軍の資金源を確実に断つ措置を講じるようエンゲージメントを依頼する要請書を送りました。対象とした事業の出資者には三菱商事も含まれていました。

イェタグン事業は、マレーシア国営会社のペトロナス・チャリガリが率いるコンソーシアムが操業しており、他の構成員はタイのPTTEP、JXミャンマー石油開発、そして、国軍の支配下にあるMOGEです。このうちJXミャンマー石油開発は、ENEOSの子会社であるJX石油開発、日本政府、三菱商事による合弁です。

今日に至るまで、日本政府もENEOSも、事業から撤退するとの意向は表明していません。

メコン・ウォッチの事務局長、木口由香は、「イェタグン・ガス田の天然ガス採掘は2000年に始まり、他のガス田と同様、当時のミャンマー軍政の重要な収入となっていた。また、この収入は、国軍の予算も増加させていたと見られている。三菱商事の参画は2013年からだが、ミャンマーで現在起きている残虐行為に相当な責任がある。採算の悪化を理由にイェタグン事業からただ撤退するということなら、責任を十分に果たしたとは言えない。さらに三菱商事はランドマーク事業やティラワ経済特別区(SEZ)事業など、他にもミャンマーで問題のある事業に、説明責任を果たさず、または十分な人権配慮をしないまま参画している。人権水準を上げて、イェタグンにおいては環境・社会に十分配慮した責任ある撤退が求められる」と述べました。

JFMのスポークスパーソン、Yadanar Maungは、「三菱商事はイェタグン事業への投資を通じて非合法軍政による重大な人権侵害と残虐行為の罪に資金的に加担してきた。撤退するということならば、同事業が今後も引き続き国軍の資金源にならないよう、具体的な措置を取らなければならない。日本の名立たる企業として、三菱商事は他の事業パートナーが国民統一政府(NUG)との協議の上、同事業の収益をエスクロー口座に入れるよう促すべきである」
「三菱商事のイェタグン事業からの撤退は、マレーシアおよびタイ政府に強力なメッセージとならなければならない。両政府はそれぞれペトロナスとPTTEPを通じて同事業の大部分の株を持つ構成員だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国としてもタイとマレーシアが、テロリストのような軍政とビジネスを展開することは、継続的な暴力に資金を注ぎ込む国軍に巨額のマネーを提供することになり、ASEANの『5項目の合意』をないがしろにする」と述べました。

連絡先

Yuka Kiguchi, Mekong Watch(メコン・ウォッチ 木口): info@mekongwatch.org
Yadanar Maung, Justice For Myanmar: media@justiceformyanmar.org

 

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