資源エネルギー庁およびバイオマス持続可能性ワーキンググループにバイオマス発電のFITガイドラインに関する要請書を提出

バイオマス

国際環境NGO FoE Japanは、資源エネルギー庁およびバイオマス持続可能性ワーキンググループに要請書を提出しました。

要請書では、「現状のままバイオマス発電を促進することは、燃料需要の拡大が森林の減少・劣化の原因となり、生物多様性を脅かすのみならず、森林や土壌の炭素貯留を減少させることで、気候変動をかえって加速させる恐れがある」とし、「 森林減少・劣化、生物多様性に悪影響をもたらす事業はFITから除外すべき」などとしています。

要請書本文は以下の通りです。

要請書>PDF版


2021年10月22日

経済産業大臣 萩生田 光一 様
バイオマス持続可能性ワーキンググループ委員各位

バイオマス発電のFITガイドラインに関する意見

私たちは、現状のままバイオマス発電を促進することは、燃料需要の拡大が森林の減少・劣化の原因となり、生物多様性を脅かすのみならず、森林や土壌の炭素貯留を減少させることで、気候変動をかえって加速させる恐れがあることを懸念しています。現在のFITの事業計画策定ガイドラインは、持続可能性について触れてはいますが具体的ではなく、森林減少・劣化を防止するには十分ではありません。よって、以下の通り提言いたします。

なお、バイオマス持続可能性ワーキンググループにおいて、NGOからの意見聴取も行うこともあわせて提言します。現在まで持続可能性ワーキンググループでは、業界団体からの意見聴取に終始しており、公平性にかけると考えています。

1. 以下の事業はFITから除外すべきである。
a. 森林減少・劣化、生物多様性に悪影響をもたらす事業
b. ライフサイクルを通じてのGHG排出削減が十分期待できない事業
c. 土地や水資源などを含め、食料や従来の資源利用との競合を引き起こすおそれのある事業。農産物に関しては、「副産物かつ非可食」という現在の規定を維持すべきであり、既認定の燃料にも適用すべきである。
d. 主伐による木質バイオマスを燃料とする事業(丸太の利用)
e. パーム油を燃料とする事業
f. 放射性物質など汚染物質が含まれる燃料を想定している事業

2. 燃料生産段階での森林および土壌の炭素貯留の減少を評価すべきである。
現在、温室効果ガス(GHG)排出評価についてバイオマス持続可能性ワーキングで議論されているが、生産段階での森林および土壌の炭素貯留の減少については、「直接的土地利用変化(例えば、森林から農地に土地利用が転用された場合)のみを計上」としている。しかし、木質バイオマス燃料生産のための伐採は、多くが「土地利用変化」に該当しないが、中には大規模で破壊的な伐採が行われているケースもある。

3. 木質バイオマスに関しても、少なくとも農産物由来のバイオマスと同様、持続可能性確認を具体的に求めるガイドラインとするべきである。
現在のFITガイドラインは、木質バイオマスに関しては林野庁の「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」(2006年2月)を参照する構造になっている。林野庁ガイドラインでは、第三者認証のみならず、団体認定や企業独自の確認も認められており問題が多い。

4. バイオマス発電事業の持続可能性に関する第三者チェックを可能にするために、使用燃料の種類や産地(農園や伐採地)、GHG排出評価にあたっての前提や計算手法などを公開とするべきである。

5. 住民の反対を無視し、騒音や大気汚染により住民の生活を脅かすバイオマス発電事業が横行している。また、燃料に関する情報が開示されなかったり、申請時から燃料が変更されたまま事業が進められたり、FIT事業計画策定ガイドラインに違反とみられる事業もある。
a. FIT事業計画策定ガイドラインには、現在、「地域住民と適切なコミュニケーションを図る」というあいまいな記述しかない。地域住民に対する十分な情報開示および合意取得について記述すべきである。
b. 住民や第三者から、事業に関する疑義が提起されたときに、適切に調査し、解決するためのメカニズムを導入すべきである

以 上


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見解:バイオマス発電は「カーボン・ニュートラル(炭素中立)」ではない
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