ベトナム・ギソン2石炭火力発電所事業とは?

化石燃料

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1.事業の概要

ベトナム北部タインホア省ギソン地区で、発電容量1,200MW(600MW×2基)の超臨界圧の石炭火力発電所を建設・所有・操業し、ベトナム国営電力公社(Vietnam Electricity:EVN)に対して25年間売電する計画。

建設地: ベトナム・タインホア省
発電総容量:1,200MW(600MW×2基)、超臨界圧
事業実施者:Nghi Son 2 Power Limited Liability Company(丸紅・韓国電力公社が出資)
EPC契約:斗山重工業(韓国)
総事業費:27億9千万米ドル
建設開始予定:2018年
運転開始予定:2022年

ギソン1ギソン2
発電容量300 MW *2600 MW * 2
発電効率亜臨界超臨界圧(SC)
事業実施者ベトナム電力公社(EVN)Nghi Son 2 Power Limited Liability Company(丸紅、韓国電力公社)
スケジュール2013,2014にそれぞれ1号機・2号機が商業運転開始2018年に建設開始
総事業費119,352 百万円(うち、円借款対象額:99,687 百万円)27億9千万米ドル(協調融資分18億6900万米ドル)

2.日本との関わり

出資:丸紅、韓国電力公社(50:50)
公的金融機関:国際協力銀行が融資(約560百万米ドル限度)、NEXIが付保検討中
民間金融機関: 三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、新生銀行

注:日系以外では韓国輸出入銀行(KEXIM)、OCBC銀行(シンガポール)、DBS銀行(シンガポール)及びMalayan Banking Berhad(マレーシア)が協調融資

3.主な経緯

動き
2005ギソン経済区設立
2010ギソン1石炭火力発電所1号機(300MW*2、出資EVN、建設丸紅,JICA円借款 )建設開始
2013.6ギソン1石炭火力発電所一号機稼働開始
2013丸紅と韓国電力社が国際入札でギソン2石炭火力案件落札
2014.6ギソン1石炭火力発電所二号機稼働開始
2015斗山重工業がギソン2建設受注
2015.6ベトナム当局が同プロジェクトの投資ライセンス(Investment license)承認
2016.11丸紅、同プロジェクトのBOT方式について商工省と合意
2017.11丸紅と韓国電力社、ベトナム政府とコンセッション契約締結
2018.2.6JBIC融資検討開始
2018.4.13JBIC融資契約締結 発表
2018.5.31NEXI 付保検討開始

4.主な問題点

社会影響(生計手段への影響)

事業予定地のハイファコミューンでは住民が先祖代々利用してきた小型漁船の停泊地があり、現在も数百隻が利用しているが、住民に適切な説明が行われないまま、撤去が始まった。人民委員会は、2018 年 5 月 9 日付で、ギソン 2 発電所のために緊急撤去通知を発出しており、漁船を異なる停泊地へ移動するよう、また、従わない場合は強制的に移動させると説明。住民らは、停泊地に留まり、漁船が撤去されないよう監視も行っていた。この間、漁民は停泊地からの撤去を恐れ、漁に出ることができておらず、生計手段への影響が生じている。

環境影響評価の不備

ベトナム当局によって承認されている環境影響評価(EIA)は、同経済区内に建設されたニソン製油所の環境影響を考慮したものになっていない。そもそも本事業計画のEIAは、2015年に作成され、2018年時点でも本格的に建設が開始していなかった。製油所の稼働開始など現地の環境に⼤きな変化がある以上、EIA そのものがやり直されるべきである。

大気汚染

ベトナムでは⼤気汚染の問題が深刻になっており、⽯炭⽕⼒発電所からの排出も⼀因とされている。⽯炭⽕⼒発電所由来の⼤気汚染が早期死亡率につながっていることも報告されており、ベトナムを含む東南アジア地域で現在計画中あるいは建設中の⽯炭⽕⼒発電所がすべて稼働した場合のシミュレーションによると、ベトナムは 2030 年までに ASEAN 諸国の中で汚染のひどい国の上位に位置づけられ、⼤気汚染による早期死亡者の数は年間2万⼈にのぼると推定されている。 地元からは既存のギソン1石炭火力発電所操業以来、近隣コミュニティにおける疾病の増加も報告されており、新たな石炭火力発電所の建設により、状況悪化が懸念される。

 

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