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ベトナム・バンフォン1石炭火力発電事業
世界25か国50団体が署名 - JBICに緊急要請書提出「石炭火力発電事業への融資にNO!JBICは汚染を引き起こす事業から撤退を」
2019年3月19日
本日、日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)に対し、同銀行が融資検討中のベトナム・バンフォン1石炭火力発電事業から撤退するよう求める国際要請書を提出しました。要請書には25か国から50団体の団体賛同署名をしています。
バンフォン1石炭火力発電事業は、2基の660メガワット(MW)の超臨界圧の石炭火力発電所を、カインホア省ニンホアのニンフックコミューンに建設する計画です。住友商事が出資する同事業に対し、現在、JBICが融資を、NEXIが付保を検討中であり、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行が融資する可能性も報道されています。
また本日、国内外の環境NGOが、ファイナンシャルタイムズにJBIC及び日本に対し、同事業に支援しないよう求める意見広告も掲載し、国際的な非難の声も高まっています。
OECD公的輸出信用アレンジメント(OECDルール)では、500MW超の石炭火力発電所への支援を制限しており、500MW超の石炭火力発電事業であるバンフォン石炭火力発電所に対し、JBICおよびNEXIは同事業を支援すべきではありません。
また日本の第5次エネルギー基本計画はOECDルールも踏まえ、支援対象を原則、超々臨界圧またはそれ以上の技術を採用する石炭火力発電所にするとしています。バンフォン1石炭火力発電所への支援は、日本のエネルギー政策とも、日本も批准しているパリ協定とも矛盾します。
>注釈・署名団体含む要請書本文はこちら(pdf版 日本語/English(原文))
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石炭火力発電事業への融資にNO!
JBICは汚染を引き起こす事業から撤退を
JBICは汚染を引き起こす事業から撤退を
2019年3月19日
(原文英語)
(原文英語)
以下に署名する団体は、国際協力銀行(JBIC)に対し、ベトナム・バンフォン1石炭火力発電事業に融資しないよう求めます。
バンフォン1石炭火力発電事業は、低効率の技術を使い、大気汚染物質も大量に排出します。使用予定の技術は利用可能な最良の技術(BAT)ではなく、ベトナムの大気汚染を悪化させ、発電所周辺に住む人々の健康を害する恐れがあります。
また、パリ協定の目標を達成しようとするならば、新たな石炭火力発電所を建設する余地はありません。バンフォン1石炭火力発電事業への融資は、日本の気候変動へのコミットメントとも矛盾します。
OECDルール違反
日本も加盟しているOECD の公的輸出信用アレンジメントでは、石炭火力発電事業に関するセクター了解において、500MW超の石炭火力発電所については公的支援の対象は1) 超々臨界圧、もしくは2) 温室効果ガスの排出が750g CO2/kWh未満のものに限られると規定しています。
バンフォン1はこのどちらにも当てはまらず、支援の対象外です。
JBICは最初の環境社会影響アセスメント(ESIA)が2011年に完了しベトナム当局により承認されていたことから、セクター了解の対象外(移行期間) としています。しかし、ESIAは2015年に改訂され、さらに最新のESIAが完了したのは2017年11月です。改定されたESIAは古いものに比べて倍のページ数があり、様々な情報の追加が行われていることからも、2017年より前に行われたESIAをもって、移行期間の例外要件を満たしているとは言えません。
大気汚染物質の高い排出値
バンフォン1石炭火力発電所は、ESIAによれば大気汚染物質も大量に排出する発電所です。バンフォン1は他国の最新の石炭火力発電所にくらべて、多くの大気汚染物質を排出します。
たとえば日本で建設される最新の石炭火力発電所にくらべ、バンフォン1は少なくとも3倍ものSO2を排出します。また、NO2は、少なくとも5倍の量を排出します。よりよい大気汚染対策が可能であるなか、ベトナムにこのような低効率の発電所を輸出することは受け入れがたく、また銀行にとっても大きな法的・評価リスクをもたらすでしょう。
さらに、ESIAの中で水銀が十分に考慮されていません。JBICによれば、水銀の値は検出限界値以下であり、ESIAには水銀の値が「0」と記されています。しかし、0にはなり得ません。水俣条約でも推奨されている国連環境計画の水銀キットを用いると、仮に水銀の排出対策が取られた発電所が、インドネシアとオーストラリアで産出された典型的なタイプの石炭を燃焼した場合、年間50kgの水銀を排出します。利用可能な最良の技術(BAT)を用いて水銀をコントロールした場合でも、水銀による環境影響は甚大であり、ESIAの中でしっかりと考慮されるべきです。また近隣のコミュニティに対しても、水銀が住民の健康に対してもたらすリスクについて周知されるべきです。そのために、水銀の値を再計算し、さらなる住民説明会が必要です。
JBICの環境社会配慮ガイドラインによれば、環境レビュー中に適切かつ十分な環境社会配慮がなされていない場合には融資を拒否する可能性も規定しています。ガイドラインにおいては「適切と認める場合には、他の国際金融機関が定めた基準、その他の国際的に認知された基準、日本等の先進国が定めている基準またはグッドプラクティス等をベンチマークとして参照する」としています。バンフォン1は、明らかにこれに違反します。
気候変動を止めるため、石炭火力発電所を建設する余地は残されてない
石炭火力発電所の新設は、パリ協定のゴールと矛盾します。気温の上昇を2度未満、まして、1.5度以下に抑えるためには、IPCCやIEA(国際エネルギー機関)の事務局長も言うように「温室効果ガスを排出するものを建設する余地はない 」のです。
日本政府は気候変動に取り組むと宣言しています。安倍総理は、2018年の西日本で起きた異常気象や北米やヨーロッパの熱波、フィリピンの台風被害などについて触れながら、気候変動対策を行うと約束しました 。バンフォン1石炭火力発電所への支援は、日本の気候変動へのコミットメントに矛盾します。また、G20が迫る中、気候変動問題等の課題に貢献し、議長国として力強いリーダーシップを発揮する としている安倍首相の呼びかけにも矛盾します。
その他の社会・環境影響とJBICのガイドライン違反
上記に加え、バンフォン1をめぐっては社会・環境影響に関する懸念が残っています。事業のESIAは、地域住民に適切に公開されてされていませんでした。プロジェクトが大規模であることから、地域の環境や社会に多大な影響を及ぼしうるにも関わらず、十分な情報が地域住民などのステークホルダーに提供されていませんでした。
実際、プロジェクト予定地近隣のコミュニティーのメンバーは、ベトナムの市民団体に対し、石炭灰の影響や、温排水が湾内の魚類に及ぼす影響についての懸念を伝えていました。ベトナムの市民団体によれば、事業による住民移転がすでに行われているものの、移転を強いられた農家や漁業従事者に対する生計回復が不十分であると指摘しています。
影響を受けている地域住民らは協議会に招かれておらず、ESIAについても十分な情報を提供されていません。事業の意思決定プロセスに参画する機会が与えられていません。こうした状況は、「環境社会影響評価報告書の作成に当たり、事前に十分な情報が公開されたうえで、地域住民等のステークホルダーと協議が行われ、協議記録等が作成されていなければならない」と規定するJBICのガイドラインに違反しています。
上記の理由により、私たちはJBICに対し、バンフォン1石炭火力発電事業への融資を行わないよう要請するとともに、これ以上新たな石炭火力発電事業に融資しないよう求めます。
CC:
内閣総理大臣 安倍晋三様
経済産業大臣 世耕弘成様
財務大臣 麻生太郎 様
日本貿易保険代表取締役社長 板東一彦殿
三菱UFJ銀行 取締役頭取執行役員 三毛兼承殿
みずほ銀行 取締役頭取 藤原弘治殿
三井住友銀行 頭取CEO(代表取締役) 高島誠殿
住友商事株式会社 代表取締役 社長執行役員 CEO 兵頭誠之殿
OECD Secretariat
(原文英語、翻訳:FoE Japan)