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サハリン石油・天然ガス開発事業
サハリンⅡ石油・天然ガス開発
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サハリンの北東部の2鉱床で、オホーツク海の海底に埋蔵する石油とガスを掘削し、800kmに及ぶパイプラインを通してサハリン南部まで運ぶ事業です。
輸出先は日本向けが約6割、その他に韓国や米国など。
1999年から夏季の原油生産を開始し(フェーズ1)、2008年12月には石油の通年生産、2009年春にはガスの生産が開始された(フェーズ2)。
サハリン・プロジェクト全体は9つの鉱区(サハリン1~9)の開発が計画されています。 >サハリン1概要
【プロジェクト概要】
原油 | 天然ガス | |
推定埋蔵量 | 約11億バレル (日本の年間需要の約0.7倍) |
LNG換算3.4億トン (日本の年間需要の約6倍) |
ピーク生産量 | 約18万バレル/日 (日本の輸入量の4%相当) |
約960万トン(LNG換算)/年 (日本の輸入量の15%相当) |
サハリン2では、複数の企業が出資してつくったサハリンエナジー社が開発事業を行っています。
事業者 | サハリン・エナジー社 ・・・露国営ガスプロム50%+1株、ロイヤル・ダッチ・シェル27.5%-1株、 三井物産12.5%、三菱商事10% |
融資機関 | 国際協力銀行(JBIC):総額約38億1600万ドル融資 日本貿易保険(NEXI):14億ドル付保 欧州復興開発銀行(EBRD):1億1600万ドル融資 民間銀行:約30億ドル融資 |
問題点
絶滅危惧にある野生生物や生物多様性への影響の懸念
・オオワシ(*1)やニシコククジラ(*2)を含む希少な野生生物や生物多様性に対し、開発行為及び油流出により影響が懸念されている。これらに対する影響を回避・最小化する対策が不十分
・日本の野性生物専門家がサハリン・エナジー社作成の環境影響評価(EIA)の記述の誤りや不十分さを指摘。保全対策における生態系の観点の欠如など
*1) 北海道で越冬。天然記念物、日露渡り鳥条約、種の保存法指定)
*2) 生息数約130頭。国際自然保護連合(IUCN)、水産庁、日本哺乳類学会で絶滅危惧種指定)
油流出対策
・油流出事故が起きた場合、北海道及びサハリンの地域経済を支える「漁業資源」への深刻な影響の懸念
・タンカー事故発生時の関係国への通報体制、ロシア・日本の円滑な連携の問題
パイプライン
・800kmの陸上パイプラインが、サケ・マス類の生息に重要な1000本以上の河川を横断して埋設される。工事により土砂流出、水質汚濁から、サケの産卵場や河川生態系を守る措置が不十分
・パイプラインルートに22の活断層があるため、地震による破損、油流失が起こる懸念
アニワ湾での浚渫(しゅんせつ)作業・海洋投棄
・LNGプラント、原油ターミナル建設に伴う海底浚渫作業及び土砂投棄による漁業資源への被害の懸念
・投棄場所について代替案の検討が不十分
社会・経済的な影響
・先住民族や地元の住民の生業や生活環境に与える影響
・生産分与協定の不平等さ(サハリンへの経済的利益の問題)
・ロシア法の違反
・ステークホルダーとの不十分な情報提供・協議
これらの問題提起をFoE Japanを含めた様々な国のNGOや多様なステークホルダーが行ってきました。
その結果、サハリンエナジー社が事業の環境社会配慮や情報公開を拡充した部分もありました。
サハリン2では、生物多様性保全のためにモニタリング結果を公開し、ステークホルダーからの意見を踏まえながら、随時改善を図ることが重要です。