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サハリン石油・天然ガス開発事業
サハリンⅠ石油・天然ガス開発
サハリンの北東部でオホーツク海の海底に埋蔵する石油とガスを掘削し、ロシア本土へのパイプライン輸送及び東アジア等への輸出を行う事業です。
2005年10月から原油・天然ガスのロシア向け販売開始。2006年10月には原油の東アジア向け輸出を開始。4割が日本向けと言われています。天然ガスは、日本、中国への供給も交渉中。3つの鉱床を段階的に開発しています。
【プロジェクト概要】
原油 | 天然ガス | |
推定埋蔵量 | 約23億バレル (日本の年間需要の約1.4倍) |
LNG換算3.4億トン (日本の年間需要の約6倍) |
ピーク生産量 | 約25万バレル/日 (日本の輸入量の6%相当) |
約800万トン(LNG換算)/年 (日本の輸入量の13%相当) |
総事業費: 約120億ドル
事業への参加企業、融資機関、輸出先のいずれにも日本が深く関わっています。
事業主体 | エクソン・ネフテガス社(米)[30%] (※1) |
参加企業 [権益比率] |
サハリン石油ガス開発株式会社(SODECO)(日本)[30%] (※2) ONGC Vinesh Limited(インド)[20%] RN-Astra(ロシア)[8.5%] Sakhalinmorneftefgas-Shelf(ロシア)[11.5%] |
融資機関 | 国際協力銀行(JBIC):総額約16.6億ドル融資 |
※1 石油メジャーエクソン・モービル社100%出資子会社
※2 出資内訳は、経済産業省50%、伊藤忠商事㈱18%、石油資源開発㈱14%、丸紅㈱12%、その他6%
おもな問題点
不十分な情報公開
環境影響評価(EIA)等、基本的な環境配慮に係る文書が、日本語や英語で公開されておらず、日本のステークホルダーへの情報公開が不十分。
絶滅危惧にある野生生物や生物多様性への影響
開発行為及び油流出によるオオワシ(*1)やニシコククジラ(*2)を含む希少な野生生物や生物多様性への影響が懸念されている。
しかし事業者は、影響や対策について勧告を行う既存の独立専門家委員会に協力的でなく、これらに代わるものも設置していない。
*1)北海道で越冬。天然記念物、日露渡り鳥条約、種の保存法指定
*2)生息数約130頭。国際自然保護連合(IUCN)、水産庁、日本哺乳類学会で絶滅危惧種指定
パイプライン
・パイプラインからの油流出の懸念
・海底パイプラインが、ニシコククジラの重要や生息域付近を通ることによる影響の懸念
油流出対策
・ロシア本土、デカストリからタンカー輸送される原油の流出事故への懸念
・タンカー事故発生時の関係国への通報体制、ロシア・日本の円滑な連携の問題
社会・経済的な影響
先住民族や地元の住民の生業や生活環境に与える影響
これらの問題提起は、FoE Japanを含めた様々な国のNGOや多様なステークホルダーが行ってきました。
しかし、これらの指摘にも関わらず、事業にほとんど改善が見られないまま、開発が進んでいます。
>これまでの動き
事業者はこれまで、市民の声にほとんど耳を傾けようとしませんでした。 まずは事業者が、事業に関心を寄せる日本の市民に環境社会配慮に関する情報を広く公開すること、そして、公的融資機関である国際協力銀行は自身のガイドラインを遵守するために、事業者のステークホルダーとの対話を促すべきでしょう。