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サハリン石油・天然ガス開発事業
プロジェクト概要 サハリンⅡ(2008年7月現在)
場所:ロシア連邦サハリン州
事業主体:サハリン・エナジー・インベストメント社(SEIC)…ロイヤル・ダッチ・シェル(55%)、三井物産(25%)、三菱商事(20%)が出資
融資機関:
【第一期工事】 旧日本輸出入銀行(現在のJBIC)、欧州復興開発銀行(EBRD)、海外民間投資公社(OPIC)が融資を実施。
【第二期工事】 JBIC及び民間銀行団、サハリンII第2期工事に総額53億ドルの融資契約に調印。
総事業費:1兆2000億円とされていたが、SEICは2005年7月、2兆2000億円に倍増したと発表。
概要: サハリン北東部沖合から石油および天然ガスを採取する計画。第一期工事は既に終了しており、1999年から生産開始。 モリクパックという掘削リグを用いて原油の採掘を行い、タンカーで原油を日本や韓国へ輸送している。 しかし冬場は海が氷で覆われ、タンカー輸送ができなくなるため、現在実施されている第2期工事では、陸上に約800kmのパイ プラインを敷設し、サハリン島の最南端まで石油・ガスを運ぶことが計画されている。その他、2基の掘削プラットフォーム増設、海底パイプライン、 陸上処理施設及び島南部に石油輸出ターミナルと液化天然ガス(LNG)プラントを建設予定。
サハリン島周辺で計画されている開発は「サハリンⅠ」から「サハリンⅥ」まであるが、現在開発が進んでいるのが「Ⅰ」と「Ⅱ」。 第2期工事では、2006年末から石油、2007年から天然ガスの生産開始の予定であったが、SEICは2005年7月、生産開始時期が2008年半ばまでずれ込む見通しを発表。推定可採埋蔵量は石油が約1億トン、コンデンセートが約0.4億トン、天然ガスが約4000億立法メートル。
この開発によって、先住民族などサハリン州の住民の生活、希少な野性生物や漁業資源への影響などが懸念されている。北海道に越冬する貴重な鳥類やオホーツク沿岸への大規模な油流出による事故が懸念されている。
日本との関わり
公的融資機関の関わり:第1期で旧日本輸出入銀行が116万ドルの融資を実施。第2期で国際協力銀行が約20億ドルの融資を検討中。
日本企業の関わり:実施主体のSEICに対し、三井物産と三菱商事が出資。出資率は第1期工事段階では、米マラソン・オイル(37.5%)、シェル石油(25%)、三井物産(25%)、三菱商事(12.5%)だったが、2000年にマラソン・オイルが撤退し、現在シェル(55%)、三井物産(25%)、三菱商事(20%)の出資。
地理上の関わり:サハリン島は北海道から約40㎞と地理的に近く、世界遺産知床を含めた北海道沿岸部への環境的、社会的影響が懸念されている。
問題点
絶滅危惧にある野生生物への懸念
・オオワシ(北海道で越冬。天然記念物、日露渡り鳥条約、種の保存法指定)やニシコククジラ(生息数約100頭。国際自然保護連合(IUCN)、水産庁、日本哺乳類学会で絶滅危惧種指定)を含む貴重な野性生物に対し、開発行為及び油流出により甚大な影響が及ぶ懸念。これらに対する影響回避の対策が十分ではない。
・日本の野性生物専門家がSEIC作成の環境影響評価(EIA)の記述の誤りや不十分さを指摘。
油流出対策
・油流出事故による、北海道及びサハリンの地域経済を支える「漁業資源」への深刻な影響、また「地域社会」への被害。
・第2期工事で建設される関連施設の「油流出対応計画書(OSRP)」が操業開始寸前まで完成しないため、「地震による流出対策」「結氷時の流出対策」、「分散剤による自然環境への影響」など多くの問題が残されたまま。
・タンカー事故発生時の関係国への通報体制、ロシア・日本の円滑な連携の問題。
パイプライン
・800kmの陸上パイプラインが、サケ・マス類の生息にとって重要な1000本以上の河川を横断して埋設されるため、工事による土砂流出、水質汚濁の懸念。サケが産卵する河川への深刻な影響。
・パイプラインルートに22の活断層があるため、地震による破損、油流失が起こる懸念。
アニワ湾での浚渫作業・海洋投棄
・LNGプラント、原油ターミナル建設に伴う海底浚渫作業及び土砂投棄による漁業資源への被害。
・投棄場所について代替案の検討が不十分。
社会・経済的な影響
・先住民族や地元の住民の生活環境に与える深刻な影響
・生産分与協定の不平等さ(サハリンへの経済的利益の問題)
・ロシア法の違反
・ステークホルダーとの不十分な情報提供・協議