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インドネシア・インドラマユ石炭火力発電事業
インドラマユ農民が再審請求―石炭火力の環境許認可取消しを求める行政訴訟
日本政府・JICAは違法リスクを抱える事業への援助を控えるべき
国際協力機構(JICA)が援助を続けるインドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画(100万kW)について、住民が環境許認可の取消しを求め、再び訴訟を開始しました。今回は、最高裁が出した判決に対し、住民側が新しい証拠を揃え、再審請求した形となっています。
写真左:バンドン地裁での勝訴判決に歓喜するJATAYUメンバー(2017年12月)
写真右:事業予定地に広がる水田や畑(2019年3月)
同拡張計画によって農地や漁場など生計手段を奪われることを懸念し、現地の住民ネットワーク JATAYU(Jaringan Tanpa Asap Batubara Indramayu:インドラマユから石炭の煙をなくすためのネットワーク)が行政訴訟を起こしたのは、2017年7月5日のこと。JATAYUのメンバー3名が原告となり、環境許認可が不当に発行されたとし、取消しを求めました。
2017年12月6日に言い渡されたバンドン地裁の判決結果は、住民勝訴。西ジャワ州政府が発行の権限を有する環境許認可をインドラマユ県知事が不当に発行したとして住民側の訴えを認めるものでした。
しかし、被告であるインドラマユ県知事とインドネシア国有電力会社(PLN)が控訴すると、2018年4月9日にジャカルタ高裁が住民の訴えを棄却。住民はすぐに上告したものの、最高裁も2018年9月19日に住民の訴えを棄却しました。
棄却の理由はいずれも、「提訴期限である90日を過ぎていたことから、原告住民の訴えは受け入れられない」というものでした。つまり、環境許認可が発行された2015年5月26日から起算して90日以内に住民側の提訴が行われなかった点が非とされたのです。
一方、実際に住民が同環境許認可について認知し、入手したのは、2017年6月12日で、情報請求手続きを通じてのものでした。
今回の再審請求のなかでは、最高裁の判決が90日の起算方法において法規定を誤適用している点、また、2015年時の当局による環境許認可に関する情報周知方法が不適切であった点について、原告住民の弁護団から新たな証拠が提出されました。今後、最高裁での審査が進められることになります。
日本政府・JICAは、現在も同拡張計画の基本設計等にエンジニアリング・サービス借款を支払い続けています。また、同拡張計画の本体工事に対する円借款要請がインドネシア政府からなされれば、借款供与の検討を行なうとしています。しかし、違法リスクを抱える事業への税金の投入は、果たして適切なのでしょうか。インドネシア政府の弾圧にも屈せず、反対の声をあげ続けている住民の意見にも耳を傾けつつ、日本政府・JICAが同拡張計画への援助を停止することが求められています。
以下、住民ネットワーク JATAYU、および、現地NGOによるプレスリリースの和訳
です。
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プレスリリース
2019年5月9日
気候正義のための提言チーム
JATAYU(Jaringan Tanpa Asap Batubara Indramayu:インドラマユから石炭の煙をなくすためのネットワーク)
違法なインドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画
――問題を抱えた環境許認可
気候正義と人権を実現しようとする新たな法廷闘争が始まりました。この闘争で、国が住民を支持するか否かが試されることになるでしょう。
本日、2019年5月9日(木)、インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画(1,000 MW×2基)の建設により影響を受ける住民らが、最高裁判所の判事の判決に対して再審請求を求める文書を提出しました。影響を受ける住民らが健全で良好な環境に対する権利を守るための闘いの一つとして、請求書は弁護団を通じて提出されました。
今回の再審請求の試みは、新しい証拠と事実に基づくものです。その内容は、最高裁の判事の決定に反論できる論拠を十分に含んでいます。すなわち、今回の再審請求で私たちが論点にあげているのは、以下の点です。
1.判事は、訴訟提起の猶予期間である90日の起算方法において、法的根拠を誤用した。
2.判事は、環境許認可の発表が影響を受ける住民に周知されているかを考慮していない。
3.判事は、環境許認可の発表がなされることで、影響を受ける住民が直ちにその発表を知るところになると考えている点において誤っている。
4.判事は、猶予期間である90日の起算方法に関して原告が提示した証拠を考慮していない。
5.判事は、同事業の影響を受ける住民らの教育水準が依然として低い結果として、やはり、彼らが情報の収集能力の面でそれ程長けていないという事実に注意を払わなかった。
したがって、同再審請求を通じて、私たちは、最高裁の判事が公正な態度で、考慮すべきあらゆる点をすべて検討するよう要請します。インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画が国家戦略事業であることのみを見るのではなく、同事業によって引き起こされてきた影響や周辺住民が経験してきた影響も考慮すべきです。
インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画は、環境と人権に影響を及ぼします。同事業は、327ヘクタールの生産性の高い水田を他の用途に転換してしまいます。農業労働者や農業に依存する他の住民らの生計手段を奪ってしまうのです。
(※)インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
2,000 MW(1,000 MW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(1,000 MW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、基本設計等のためにエンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を2013年3月に締結。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。
詳細はこちら → https://foejapan.org/aid/jbic02/indramayu/