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インドネシア・インドラマユ石炭火力発電事業
国会審議:日本の海外における石炭火力発電支援は地球温暖化対策と整合するか?
国際協力機構(JICA)が支援するインドネシア・インドラマユ石炭火力・拡張計画(1000 MW)の問題が3月23日の参議院・外交防衛委員会の国会審議のなかで取り上げられました。気候変動対策の観点からパリ協定の下、国際的に「脱炭素」の流れが強まるなか、日本政府が石炭火力発電所の輸出を推進していることについて疑問が呈されましたが、岡本 外務大臣政務官からは、高効率である「超々臨界以上の(石炭火力)発電整備」を輸出する日本政府の方針が説明されました。
インドラマユの地元では、すでに同拡張計画の関連設備の土地造成作業が始まり、事業予定地の周辺にフェンスを設置する作業が始まるなど、小作農や農業労働者が生活の糧を失うという死活問題に直面しています。日本政府・JICAは、「誰のためのODAか」を問い直すとともに、現場の実態を直視し、違法リスクや気候変動リスクもある同拡張計画への援助を早急に停止すべきです。
以下、同問題に関する2018年3月23日の参議院・外交防衛委員会での質疑内容全文です。
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参議院・外交防衛委員会(2018年3月23日)
>インターネット審議中継の映像はこちら [発言部分 01:30:16~]
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
●牧山ひろえ議員(民進党・新緑風会):
ODAは日本国民の血税を使って行なわれるものなので、現地の人にも喜ばれて当然だが、結果、長期的な日本の国益に結びつくということが理想的だと思う。国際的に疑義を呈される事業については、やはり、慎重に対処しなければならないのは言うまでもないと思う。
日本のODAによって、インドネシア西ジャワ州で進む石炭火力発電計画インドラマユ石炭火力発電事業というものがあるが、これに対して、地元住民は反対しており、また、国際社会からの批判も浴びせられている。100万キロワットの発電所2基の増設の計画立案のため、JICAが円借款による約17億円の低利融資を行なうもので、今後、インドネシア電力公社から要請があれば、数百億円規模の本体工事に対する支援も行なわれるとの報道がなされている。
現在、石炭火力発電に関しては、地球温暖化対策に逆行しているとの国際的な批判がなされている。そして、日本国内でも石炭火力発電の新増設には議論がある。国際的には、石炭火力発電事業への公的資金の投融資を制限するか、投融資から撤退する。こういった動きが広がっている。国際社会が脱石炭に舵を切りつつある今日となっては、将来的に処理に困る資産を抱えるリスクもある。
ここで質問だが、海外の石炭火力発電の新増設計画に対する支援に関し、地球温暖化対策との整合性について政府はどのように考えているか。
●岡本 外務大臣政務官:
ODAによるエネルギー分野の支援を行なうにあたっては、パリ協定、加えて、SDGsの目標を踏まえ、相手国のニーズに応じて、再生可能エネルギーや水素等も含め、CO2排出削減に資するあらゆる選択肢を相手国に提案をし、その選択に応じた支援を行なう方針である。その上で、エネルギー安全保障、および、経済性の観点から、石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、当該国から我が国の高効率な石炭火力発電への要請があった場合に限り、OECDのルールも踏まえて、相手国のエネルギー政策や気候変動対策との整合性を考えた上で、原則、超々臨界圧、いわゆる、USC以上の発電設備についてのみ導入を支援していく方針である。こうした取り組みを通じて、実質的な世界の排出の削減に貢献するとともに、各国との協調関係の深化につなげていきたいと考えている。
●牧山議員:
相手国に寄り添うのはもちろん必要だが、よりクリーンなエネルギーを促進するという環境重視の方針をはっきり出すことも質の高いインフラの整備を掲げる日本のODAには重要ではないかと思う。
(以上)
(※)インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
2,000 MW(1,000 MW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(1,000 MW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、エンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を2013年3月に締結。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。
詳細はこちら → https://foejapan.org/aid/jbic02/indramayu/