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インドネシア・チレボン石炭火力発電事業
インドネシア・チレボン石炭火力に係る行政訴訟
現地NGOが政府による控訴を批判
4月19日にインドネシア地裁が住民の訴えを認め、環境許認可が取り消された西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業・拡張計画(1000 MW。丸紅、JERA出資)ですが、西ジャワ州政府が4月21日に控訴しました。この動きを受け、5月4日、原告住民側の弁護団が異議申立書を裁判所に提出しました。
(写真)4月19日、バンドゥン地裁前で判決を待つカンチ・クロン村の原告住民ら
国際協力銀行(JBIC。日本政府100%出資)は地裁の判決1日前に同拡張計画への融資契約に調印していましたが、事業者やインドネシア政府当局の主張だけでなく、住民側の主張にもしっかりと耳を傾けた上で、同拡張計画の違法性を精査すべきです。日本政府、JBICには、地域住民の権利やインドネシアの司法判断を重視し、分別のない公的融資の貸付等を控えることが求められています。
以下、現地NGOが5月4日に発出したプレスリリース(和訳)です。
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WALHI(インドネシア環境フォーラム)
プレスリリース
「チレボン発電所に係る環境許認可の取消判決に対する政府の控訴は不当、かつ、地方条例の明確な違反」環境団体が批判
2017年5月4日 バンドゥン発 ―現地 の環境団体は、バンドゥン地方行政裁判所の判決に異議を申し立てた西ジャワ州政府の動きについて、政府が自身の法令の明確な違反を正当化しようとするものであり、明らかなモラルハザードであると批判しました。
2017年4月21日、西ジャワ州政府は、チレボン石炭火力発電所2号機(1,000 MW)の拡張計画に対する環境許認可の取消を政府に命じた裁判所の判決について、控訴しました。
「地裁は、政府が自身の法令に違反していることを明確に示しました。政府による控訴を私たちは遺憾に思います。というのも、政府が住民の健康や生計手段を破壊している事業を擁護するため、手段を選ばないというシグナルを市民に送るものだからです。」WALHI(インドネシア環境フォーラム)西ジャワ州支部のキャンペーン・マネージャーであるワヒュ・ウィディアントは述べました。
「政府が事業者に約束した可能性のある事項にかかわらず、事実関係は依然として不変です。つまり、西ジャワ州政府がチレボン県空間計画(※訳者注1)を無視し、また、不備のある環境アセスメント(AMDAL)に基づき、環境許認可を発行したということです。」
実際、チレボン県空間計画の改訂がなされていないにもかかわらず、同拡張計画の事業者チレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)に対する環境許認可が発行されています。この空間計画に係る犯罪はまったく明らかであり、議論の余地はありません。なぜなら、空間計画に関する2007年法律第26号では、空間計画に違反した許認可政府当局や事業体等は刑事罰に処せられることが明確に規定されているからです。
裁判所の決定では、環境許認可が地方の空間計画条例に明確に違反していると明記しており、西ジャワ州政府に許認可を取り消すよう命じています。
インドネシア法によれば、環境許認可はインフラ整備事業の重要な要件とされており、環境アセスメント、つまり、AMDALが十分に実施された上で、地方政府が発行することになっています。
同行政訴訟は、2016年12月に「気候正義のための提言チーム」の支援を受けた環境保護民衆(RAPEL)が提訴したものです。
(政府による)控訴では、大統領規則2016年第4号に言及し、戦略的電力事業を推進するため、同規則を根拠に地方空間計画を改訂できるとしています。しかし、法律では、空間計画の改訂のため、住民協議や地方議会の承認を伴う詳細なプロセスが規定されています。
また、環境法では、空間計画、および、その改訂は戦略的環境アセスメント(KLHS)に従わなくてはならないと規定されています。
チレボン県空間計画(2011年条例第17号)は、チレボン・インドラマユ・マジャレンカ・クニンガン地域の戦略的環境アセスメントに従って起草されたものです。同空間計画のいかなる改訂も、戦略的環境アセスメントに関する協議が必要となり、区画割り等が行なわれる前には、環境容量などの環境要素について検討する必要があります。
「政府の動きは多くの疑問を提起させるものです。住民を犠牲にして建設される、このように大規模な石炭火力発電所の開発は必要ないように思えます。というのも、現在、ジャワ・バリ系統では(電力)容量がすでに過剰な状況にあるからです。2022年まで同系統ではこれ以上の(電力)容量を増やす必要はないと見積もられています。」WALHI本部のキャンペーナーであるドゥウィ・サウンは述べました。
今日(5月4日)、RAPELを代表して、気候正義のための提言チームは、CEPRの進める拡張計画への環境許認可の取消に関する州政府の控訴に対し、異議申立書をバンドゥン行政裁判所に提出。同裁判所に同文書の被告への転送を求めました。
※訳者注1
チレボン県空間計画(2011年条例第17号)では、石炭火力発電事業の開発地域はアスタナジャプラ郡のみとされている。しかし、チレボン石炭火力発電所2号機・拡張計画の実際の事業予定地は、アスタナジャプラ郡の他、ムンドゥ郡、パングナン郡も含まれているため、県の空間計画に沿わないものとなっている。バンドゥン地裁は、この点を明確に違反とみなし、西ジャワ州政府に環境許認可の取消を命じる判決を下した。
(※)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、Indika Energy(25%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、JERA(10%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約20億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団が融資を検討してきた。現場では本格着工に向け、アクセス道路の整備や土地造成作業などが進められており、2020年に運転開始見込み。
詳細はこちら → https://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/background.html
●関連WEBサイト
「JBICの石炭発電融資にNo!」プログラムについて → https://sekitan.jp/jbic/