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インドネシア・チレボン石炭火力発電事業
【緊急声明】現地地裁が環境許認可の取消判決
JBICは違法事業への融資決定を早急に見直し、撤回を!
―現地国の司法判断を無視したJBICの拙速な融資決定に厳重抗議―
本日、日本の官民が推進してきたインドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力(国際協力銀行(JBIC)融資。丸紅、JERA出資)について、インドネシア地裁が環境許認可の取消判決を言い渡しました!一方、JBICは同判決を待たず、前日の18日に融資を決定。こうした事態を受け、NGO3団体より以下の緊急声明を発出しました。
(写真)4月19日、バンドゥン地裁前で判決を待つカンチ・クロン村の原告住民ら
以下、緊急要請の本文です。
>PDF版はこちら
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2017年4月19日
国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
【緊急声明】 インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業・拡張計画
現地地裁が環境許認可の取消判決
JBICは違法事業への融資決定を早急に見直し、撤回を!
―現地国の司法判断を無視したJBICの拙速な融資決定に厳重抗議―
インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業・拡張計画(丸紅、JERAが出資。1000 MW)について、地域住民が環境許認可の取消を求めていた行政訴訟で、4月19日、西ジャワ州バンドゥン地裁が住民の訴えを認めました。
国際協力銀行(JBIC)は、それに先立つ4月18日、同拡張計画に対して、融資契約を締結していました が、地域住民の権利と現地国の司法判断を真摯に受け止め、現地法に照らして違法な事業、かつ、「相手国及び当該地方の政府等が定めた環境に関する法令の遵守」や「相手国政府等の環境許認可証明書の提出」を要件とする『環境社会配慮確認のためのJBICガイドライン』(ガイドライン)にも違反した状態の同拡張計画への融資決定を早急に見直し、撤回するべきです。
今回のJBICの融資決定は、同拡張計画に対する環境許認可の取消しという事業の違法性を争う非常に重要な行政訴訟の地裁判決を1日後に控えたタイミングでなされました。JBICは、同訴訟の進捗について認識していることを4月13日の国会答弁 でも確認しており、同判決を待たずに融資決定したJBICの判断は、地域住民の権利と現地国の司法判断を著しく侵害したものに他なりません。また、今回の融資決定は、JBICガイドラインの上述の規定の遵守について依然明確な確認が不可能である状況のなか行なわれました。私たちは、このように企業の利益を優先して地域住民の権利を後回しにした、また、現地国の司法判断と自身のガイドラインを明らかに無視したJBICの拙速な融資決定に対し、厳重な抗議を表明します。
チレボン石炭火力発電事業では、すでにJBICが融資を供与して稼働中の1号機(丸紅が出資。660 MW)によって、様々な環境社会影響が引き起こされてきました。昨年11月には、小規模漁業、貝採取、製塩、農業等の生計手段や収入機会をすでに喪失した、また、大気汚染による健康状態の悪化を懸念する住民が、JBICに対し異議申立書を提出。しかし、これら既存案件による影響に対し、依然有効な対策はとられておらず、住民は深刻な問題を抱えたままです 。住民は2号機の拡張計画が進めば、さらに被害がひどくなると懸念し、同拡張計画の中止を求めてきました。
今回の行政訴訟では、昨年12月に住民6名が原告となり、同拡張計画でチレボン県空間計画が未修正のままであったり、環境影響評価(EIA)の策定過程でコミュニティーの適切な参加が確保されていないなど、複数の環境法違反を指摘。西ジャワ州政府によって環境許認可(番号660/10/19.1.02.0/BPMPT/2016。2016年5月11日発行)が不当に発行されたとし、同許認可の取消を行政裁判所に求めました。
JBICは、この1年の間に、深刻な人権侵害を引き起こしたインドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業(2,000 MW) 、また、フランスの民間銀行が自身の石炭融資を削減する公約に沿って(融資)銀行団から撤退した中ジャワ州タンジュンジャティB石炭火力発電事業の再拡張計画(5、6号機。2,000 MW) と、すでに計3,730百万米ドルもの融資を決定しています。今回、融資契約がなされたチレボン石炭火力発電事業についても、仏クレディ・アグリコル銀行が同様の理由ですでに撤退を決めていましたが、日本政府に対しては世界各国から、パリ協定に沿って劇的な炭素排出削減を行っている世界の努力を蔑ろにせぬよう、融資拒否を求める声があげられてきました 。
日本政府・JBICは、住民や国内外の懸念の声にしっかりと耳を傾けるとともに、現地国の司法判断を真摯に受け止め、これ以上、地域住民の生活・社会環境が悪化することのないよう、また、国際的な石炭関連事業からの融資撤退(ダイベストメント)の動きを直視して、同事業への融資決定を早急に見直し、撤回すべきです。
以上
連絡先:国際環境NGO FoE Japan(担当:波多江)
Email: hatae@foejapan.org
(※)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、Indika Energy(25%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、JERA(10%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約20億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団が融資を検討してきた。現場では本格着工に向け、アクセス道路の整備や土地造成作業などが進められており、2020年に運転開始見込み。
詳細はこちら → https://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/background.html
●関連WEBサイト
「JBICの石炭発電融資にNo!」プログラムについて → https://sekitan.jp/jbic/