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インドネシア・バタン石炭火力発電事業
インドネシア住民が異議申立てに来日
「バタン石炭発電計画で生活悪化、人権侵害」
JBIC/OECDガイドライン違反を指摘
7月29日、日本の官民が連携して推進しようとしている「インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業」(※1)に4年間、反対し続けてきた住民3名が来日し、国際協力銀行(JBIC)と『経済協力開発機構(OECD)多国籍企業行動指針』日本連絡窓口(NCP)(※2)に異議申立書を直接提出しました。
>申立書の本文(英文)はこちら
・JBICへの異議申立書(23名署名)
・OECD・日本NCP宛て、日本企業への申立書(23名署名)
>申立書の概要(和文)はこちら
・JBICへの異議申立書 概要
・OECD・日本NCP宛て、日本企業への申立書 概要
同事業から生活を守ることを目的に設立された地元の住民組織「UKPWR協会」の23名のリーダーが署名した今回の申立てのなかで、住民らは、同事業が現在、および、将来にわたり「生活悪化」と「人権侵害」を引き起こすことから、『JBIC環境社会ガイドライン』と『OECD多国籍企業行動指針』に違反している点を指摘。同事業への融資
を検討中のJBICに住民との直接対話を通じた問題点の精査、そして、OECD・日本NCPに日本企業(伊藤忠、および、J-Power)への適切な対処の奨励を求めるとともに、改めて同事業の中止を訴えました。
申立ての提出は、参議院議員会館にて、尾立源幸 参議院議員(民主党)、倉林明子 参議院議員(日本共産党)、島津幸広 衆議院議員(日本共産党)の3名の議員の立会いの下、行なわれました。
同事業は、農地や漁場など生計手段への影響を懸念する住民が強い反対の声をあげ、土地収用が難航。3年間、着工が延期されてきました。現在も71名の地権者が土地売却を拒んでいます。しかし、すでに土地収用が行なわれた場所では、農業ができなくなり、厳しい生活を強いられている農民がいる他、今年4月には、建設予定地の一部
でインドネシア国軍が土地整備を始めるなど、現場では、住民の反対の声を抑えようとする圧力が強まっています。
7月29日から8月1日まで、来日した住民3名は東京や京都で、日本の市民に以下のように訴えました。
「自分は身に覚えのない罪によって、7ヶ月も投獄されました。昨年12月にやっと釈放されたと思ったら、今年に入り、国軍が自分の農地の四方を盛土で囲んでしまい、灌漑用水がちゃんと流れなくなっています。私の土地は、まだ事業者に売っていないにもかかわらずです。」(地権者・農民)
「私たちの農地は唯一の生活の糧です。先祖代々受け継いできた伝統的なお墓も、この事業によって失われてしまいます。どうか私たちのバタンの地で同事業を進めないでください。日本政府や企業がこうした事業に関わることを日本のみなさんは望みますか?」(地権者・農民)
「インドネシアの他の石炭火力発電所の建設で、多くの漁民が漁場を失い、苦しい生活に陥っているのを目にしてきました。自分たちは同じ運命に遭いたくありません。また、この事業はすでに多くの人権侵害を引き起こしてきました。日本は今すぐに、この事業から撤退すべきです。」(漁民)
こうした現地住民の切実な訴えにどう対処すべきか――現在、日本のアジア向けインフラ輸出の増大方針が示されていますが、今回の異議申立ては、大型インフラ輸出の影で起きる環境社会・人権問題を蔑ろにしない、日本の官民の真摯な取り組みの必要性を喚起しています。
(※1)インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業
J-POWERと伊藤忠が参画を決定。総額約40億ドル以上もかかると見込まれている資金の約4割は、国際協力銀行(JBIC)が融資を検討中。建設されると東南アジア最大級の石炭火力発電所(2,000MW)となる。
詳細はこちら → https://www.foejapan.org/aid/jbic02/batang/index.html
(※2)各国連絡窓口(NCP:National Contact Points)
『OECD多国籍企業行動指針』の実施に関連して生じた個別の問題解決に寄与し、同指針を効果的にするため、同指針の参加各国に設立。日本NCPは外務省、厚労省、経産省の各担当課で構成。
(以上)