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インドネシア・バタン石炭火力発電事業
インドネシア・バタン石炭火力発電事業に関する国会質疑内容(2015年3月26日)
参議院・財政金融委員会(2015年3月26日)
>ウェブTVの映像はこちら [発言部分 01:09:07~]
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
● 尾立源幸 議員 (民主党・新緑風会):
それでは次に、JBICによる融資の問題について、これは本会議でも昨日若干ふれさせていただいたが、非常に荒っぽい開発が行われているんじゃないかと。また、そういうところに本当に日本企業やJBICが一体となってお金を貸して、商売のためといえ、事業をそのまま進んでいっていいのかというような懸念を大いに抱いている。まず、現在のJBICの海外投融資案件全体についてお伺いしたい。融資案件数、融資金額数、主な案件についてJBICからお聞かせいただきたい。
● 国際協力銀行 代表取締役副総裁 矢島浩一:
JBICでは、その業務の一つとして、日本企業の海外投資事業の支援を目的に日本企業や日系の現地法人に対して貸付けを行う投資金融と呼ばれる業務を行っている。平成24年4月の国際協力銀行の発足以降の融資承諾実績は、平成24年度は157件、3兆1,385億円、平成25年度は167件、1兆6,710億円、平成26年度は12月末までに数字で124件、1兆7,435億円、合計で448件、6兆5,531億円。主な支援事例は、日本人の企業が事業参画する資源開発あるいはインフラ開発、それから中堅、中小企業を含むが、製造業の海外事業、海外のM&Aが挙げられる。資源開発の例としては、オーストラリアのLNGプロジェクト、また、インフラの案件としては、イギリス都市間の高速鉄道プロジェクト、また、製造業としては、ベトナムの精油所プロジェクト等が挙げられる。
● 尾立議員:
昨日も取り上げたインドネシアのバタン石炭火力発電事業について、ちょっと詳しくお聞きしたいと思うが、まだ、この計画というのは今遅れに遅れているということだが、その理由として、住民との合意形成がうまく進んでいないと、加えて反対派住民に対する脅迫もあるということで、インドネシア国家人権委員会が問題を指摘している。また、インドネシア政府内でも、インドネシアの環境林業省が反対しているということが伝わっている。
今回、新たな大統領が来日されたが、以前のユドヨノ政権時代には、そういうこともあり、この事業を断念する方向に向かっておったということなんだが、今回のジョコ新政権では、今回来られた際にも言われたように、もう一回これを推進するということだと聞いている。
この途上国での開発プロジェクトは、大なり小なり、多かれ少なかれやっぱり軋轢というのは生じるんだと思うが、ただ、人権侵害が問題となるほど大きな問題になっているということについては、非常に、我々日本としても融資をする際に慎重に私は検討しなきゃいけないと思っている。そこで、JBICは、こういうことに当然いつも接してるということで、ルールがあると、銀行内に、ということなんだが、この社会的合意及び社会影響に関するルールというものについてちょっと説明をいただきたい。
● 矢島JBIC 代表取締役副総裁:
JBICでは、今御説明のあった環境社会配慮確認のためのガイドラインというものを制定している。このガイドラインは、制定するにあたり、産業界、NGO等に集まってもらいガイドラインを制定したという経緯がある。プロジェクトにおける環境配慮の主体は、プロジェクト実施主体であるが、JBICは、このガイドラインに基づき、プロジェクト実施主体により適切に環境社会配慮がなされていることを確認する。また、必要に応じて、プロジェクト実施主体に対して適切な環境社会配慮を行うことを促すこととしている。
ご指摘の社会的合意及び社会影響については、このガイドラインにおいて、プロジェクトは対象国、地域において社会的に適切な方法で合意が得られるよう十分な調整が図られていること、それから、社会的弱者に対しては、社会における意思決定プロセスへのアクセスが弱いことに留意し、適切な配慮がなされていること等を対象プロジェクトに求められる環境社会配慮の基本的な考え方として定めている。
● 尾立議員:
そういう自主ルールがあるわけで、是非これに則ってやってもらいたいが、まず、JBICは、この現地調査を今までいつどこでやったのかということを聞きたい。もう一点、私が申し上げたように、土地の買収をめぐって国軍や警察が同行することで、業者に、住民の自由な意思決定を阻害しているというふうな事実もあるということが指摘をされているが、そういうことをどこまで把握されているのか、まず現地調査にいつ行ったのかということも含めて伺いたい。
● 矢島JBIC 代表取締役副総裁:
現地調査だが、これは私ども本店の融資を担当する部門と、それから専ら環境社会面の審査を行う担当部門とが一緒になり、2013年7月にプラントの建設予定地を訪問して環境社会配慮確認のための調査を行っている。また、私どもジャカルタに駐在員事務所があるので、駐在員事務所を通じて現地情勢の把握に努めている。今後も、検討に当たり、必要に応じて現地を訪問し、ガイドラインに基づく確認を行っていく所存。
それから、ご指摘のあった国軍や警察が同行するというような話だが、事業会社によると、安全確保のために現地では軍や警察の護衛を付けることがあるということを聞いているが、これについては、脅迫や強権的な手段を用いている事実には当たらないと認識している。
● 尾立議員:
JBICが現地調査に行かれたのが2013年7月ということだが、その月末に警官や軍の暴力行為が起こって15人住民が負傷したということだし、また、それを受けて、2013年8月には、さきほど申し上げたインドネシア国家人権委員会が、軍や警察の用地買収交渉から撤退しろと、こういう勧告も出しているわけなので、JBICが行かれたのはこういう事件が起こる前だということなので、是非また近々に行って現地を調べていただかないと私はいけないと思っている。そういう意味で、昨日もちょっと聞いたが、地域住民やNGOへのヒアリングというのが、そういう状況があるということで行われている、聞きたいと思う。
● 矢島JBIC 代表取締役副総裁:
2014年9月に現地NGOの方及び現地の関係者の方と東京において面談を実施し、現地情勢についてのヒアリングを行った。これまでインドネシアの国家人権委員会あるいは環境・林業省から直接的な情報収集は行ってはいないが、今後、現地訪問を改めて実施しようと考えているので、その際に、必要に応じてこれら関係機関への、あるいは住民等とのヒアリングも行いたいと考えている。
● 尾立議員:
東京でたまたま訊ねてきた人たちから聞くだけじゃ十分じゃないので、しっかり自分で行って、目でみて、そして現地の人としっかり話す、また行政機関ともしっかり話してきていただきたいと思う。また報告を求めたい。
それと、もう一点、今回インドネシア政府関係者が土地収用は完了したと述べた一部報道もあるが、土地収用というのはどの程度進んでいるのかが一点の質問。そしてもう一点、新土地収用法というのが法律として通っているが、これは前大統領のときは過去に遡及して適用しないということで整理がなされていたが、新しいジョコ大統領は非常に前向き、それは遡ってこの新土地収用法を適用するということを言い出しかねないわけだが、この辺りの認識はどうか。
● 矢島JBIC 代表取締役副総裁:
現状、事業会社から聞いているところでは、プラント建設用地の現在8割以上まで取得を終えているという認識をしている。また、プラントの建設用地の未取得分については、インドネシア国営電力公社が新土地収用法に基づいて収用を行うと聞いており、現在ではその同法の適用に向けた手続きを進めているものと認識している。
また、新土地収用法だが、これは2014年6月、失礼、2012年の大統領に基づいて若干の修正がなされており、修正の大きなポイントは、これまでやや不明確だった手続きを明確化するということで、例を挙げると、用地取得の責任は新法においては明確に政府が持つと、それから土地収用のプロセス、日にちがはっきり書いていなかったが、これを最大で583日と、こういう手続面を明らかにするのが新しく法律が変わった趣旨であり、この法律を今適用せんとして手続が進められているというように承知している。
● 尾立議員:
それでは、この新しい法律を積極的に使ってこの事業を進めるという方向で今進んでいるということ。分かった。ただ、先ほど申し上げたように、今まで8割収用する際に、つなぎ融資をしているのは、これは日本の銀行じゃないのか、今までのお金を出しているというのは。そこをちょっと確認させていただきたい。これからは政府が責任を持って土地を買収するということなんだが、今までは日本の銀行がつなぎ融資をしているのかという質問なんだが、いかがか。
● 矢島JBIC 代表取締役副総裁:
当然、事業会社としては、これまでは8割以上と申し上げた、事業会社が用地取得ということで、当然そのための資金が必要だということではあるが、その資金をどこから融通しているのかというのは私ども承知していない。
● 尾立議員:
これは、私の聞いているところだと、日系の銀行がこの土地収用のためのお金を出しているということ。それで、今申し上げたような様々な問題がある中で、これも商売だからお金を出すよと、こういう、私、態度ではいけないんじゃないかと思っており、やはり、JBICまでとは言わないが、それなりの社会的責任もやっぱり貸し手である銀行もしっかり担っていただかなきゃいけないんだと思っているが、その辺りJBICは、邦銀とは横横の話合いというか、そういうことはされていないのか。もう邦銀さん勝手にやってくださいと、自分たちは自分たちのルールでやるというだけなのか。その辺り、これ協調融資だと思うんで、その辺りのガイドラインについての運用の在り方、邦銀にはどのような皆さん、ご示唆をされているのか、教えていただきたい。
● 矢島JBIC 代表取締役副総裁:
ご質問のあったこれまでの用地取得のための必要資金だが、これは先程もお話ししたが、ちょっと私どもどこから調達しているのかというのは事業会社からは聞いていない。承知していない。
私ども、これからプロジェクトが実際に動き、取得が終わると、これからプロジェクトがスタートするので、その後、開発資金の御融資をするということになるが、その場合には、私ども、民間金融機関との協調を原則としているので、民間金融機関と話をしながらプロジェクトを進めていくことになるが、大前提として、民間金融機関の方にも私どものガイドラインに則った確認を行うということについては了解いただいた上で、私どもと民間金融機関と協調でプロジェクトを支援していくということを考えている。
● 尾立議員:
いや、おかしい。私の資料では、民間銀行団が融資調達予定額の40%を融資する検討をしているということで、もう、つなぎ融資で、三井住友銀行が1億3,500万米ドル、三菱東京UFJ、みずほ等々、こういうところがつなぐ融資をもうやっているというふうに聞いているが、そういうこともご存知ないのか。
● 矢島JBIC 代表取締役副総裁:
繰り返しになりますが、私ども、現状のつなぎ融資については承知していない。
● 尾立議員:
承知しないじゃない、ちゃんとしっかり、これプロジェクト全体、皆さん関わっていらっしゃることで、皆さんがいないとこの事業は成り立たないわけだろう。だから、他は知らぬけど私たちだけというような、そういう態度じゃなくて、しっかり銀行団、シンジケートだと思うので、これ、しっかりした、しっかり把握をしていただきたいと。いいですか、そのことを確認したいが。
● 矢島JBIC 代表取締役副総裁:
本件においては、とりわけまだ未取得分があり、先生にご指摘いただいたような問題もございますので、民間金融機関等にコンタクトし、事実の確認をしたいと思う。
● 尾立議員:
最後に、しっかり現状の状況を踏まえていただき、融資の検討をやってもらうということが大事だということ、そして最後に、所管大臣である財務大臣に、改めて、こういう人権侵害等々の事実が明らかになれば、日本の名誉にも関わる問題なので、しっかり対応していただくこと、決意をお聞かせいただいて、私の質問の終わりとさせていただく。
● 麻生財務大臣:
JBICにおいては、同行が定める環境社会配慮確認のためのガイドラインに則って、融資を行なっていくということになっていると承知しているので、そういった意味で、財務省としては、所管官庁として、JBICがこのガイドラインに則って、引き続き、現地住民の声をよく聞きつつ、適切に環境社会配慮確認を行なうよう監督していきたいと考えている。
(以上)