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マングローブ再生プロジェクト
6年目の活動報告 /2014年
2014年、スマラン市のモデル地区タパック村では、住民主体の保全活動がますます活発になっています。環境教育やエコツアー等の多くのプログラムを実施する他、FoE Japanが支援してきた古タイヤを利用した護岸の技術を使い、海面上昇により失われた養殖場を復活させ、今後の住民の収入増加も期待されています。近年、FoE Japanは保全活動への女性参加を促進してきましたが、女性グループはマングローブの恩恵であるシーフードやマングローブの実を使ったスナック等を加工して販売したり、エコツアー等の外部の訪問者に提供し始めています。まだまだ安定した収益の確保には課題がありますが、新たな商品開発などへの意欲が見られます。また、このような女性の参画が増える中で、マングローブ植林やエコツーリズムなどこれまで若い男性が中心になって進めてきた保全活動へも女性が参加するようになりました。女性目線の活動の充実も期待され、さらなる活性化が楽しみです。
一方、スマラン市のもう一つのモデル地区であるカラガニャール村は、深刻な問題に直面しています。主な植林対象地である河川沿いの養殖場に次々に工場が建てられています。ほとんどが環境アセスメントも不十分で正式な許可も下りていない違法な開発で、住民グループが育ててきたマングローブが無断で伐採されることもしばしばあります。残された養殖場もこの先工業地に転嫁される可能性が高く、漁業や養殖業で身を立ててきた住民たちは収入源を失うことになります。また、同地はスマラン市がマングローブ保全地の成功事例とするタパック村(FoE Japanの最初のモデル地区)に隣接しており、カラガニャール村に工業団地が乱立することは将来的にタパックに深刻な環境悪化を及ぼしかねません。今後、早急な対応を求めて行政に働きかけていきます。
2011年から支援するプカロンガン市のカンダン・パンジャン地区では、住民によるマングローブの育成能力が高まり、マングローブ公園への植林用だけでなく、他地域への植林用にも苗の注文が多く入るようになっています。マングローブ公園は住民グループにより管理されることになり、今後はエコツーリズムからの収入なども入り保全活動の継続発展が期待されています。
本年よりFoE Japanはマングローブ公園に隣接するバンドゥンガン地区の支援を始めました。バンドゥンガン地区もカンダン・パンジャン地区同様に急速な浸水地拡大により広大な農地を失っています。マングローブの植林も支援していますが、すでに浸水地は沿岸部から数百mまで広がっており、沿岸部への植林で浸食を止めることは困難だと考えられます。同地区では2006年までは多くの住民が農業に従事しており、収入源の喪失や家屋の浸水による劣悪な環境での生活を強いられています。FoE Japanはこのような状況を気候変動影響への適応の限界であるかを見極め、気候変動による「損失と被害」への支援の在り方を探るために同地の詳細な調査を実施します。
2015年1月16日、支援を続けてきたプカロンガン市長のモハマド・バシル・アフマッド氏と面会し、市の保全政策や今後の課題等について意見交換してきました。
沿岸保全に関するプカロンガン市長の意見: 保全活動には継続性が最も重要であり、単発のプロジェクトではなく総合的な保全政策の一環としての位置づけと、他の関連する政策や住民生活、活動との共存、連携が必要です。沿岸地域にはマングローブ保全の他にもテクノパーク構想等も立ちあがっています。マングローブ保全との両立や環境配慮型テクノパークなども考慮するべきでしょう。
また、コミュニティの保全活動への参画は歓迎すべきことである一方、住民の保全管理能力を高めるためには引き続き行政やNGOからの助言やサポートが必要です。今後とも行政とNGO、住民の間でのコミュニケーションを密にしながら協力を継続していきたいです。
プカロンガン市長との面談 |
【住民による自立的な活動の発展】(スマラン・タパック村)
海面上昇で使用できなくなっていた養殖場をタイヤ護岸とマングローブで復活
視察やツーリストが立ち寄り情報収集できる活動拠点も設置 | 女性メンバーも参加し活気づくマングローブグループ |
【マングローブの成長】(スマラン・タパック)
2010年の植林木が生長して小さな森に | 天然更新も進んでいます。 |
【女性の活動の活性化】(スマラン・タパック)
商品開発やマーケティングについて語る女性グループ | 人気の加工品〝オタオタ″。皮の中身は香辛料が効いたすり身。 |
【工場の建設ラッシュ】(スマラン・カラガニャール村)
カラガニャールの植林地に隣接する工場群 |
【浸水が深刻化】(プカロンガン・カンダン・パンジャン地区)
家までは水の中を通って往来しなければならない | 浸水で使えなくなった家 |
インフラが整ったマングローブ公園 | 高潮でなぎ倒されるマングローブ |
浸水する道 | バンドゥンガン地区のマングローブ苗床 |
初期投資や管理費の少ない海藻栽培に挑戦 |