G-bio石巻須江バイオマス火力発電所のFIT認定取り消しを求める要請書を提出
宮城県石巻市須江地区に建設が予定されているG-bio石巻須江バイオマス火力発電所(出力102,750kW)は、騒音・振動・悪臭など生活環境の悪化が生じるおそれがあるため、地元自治体や住民が反対しています。また、事業者の燃料に関する説明は二転三転し、FIT認定取得時ははパーム油を燃料とするとしていましたが、直近では、ポンガミアというマメ科植物をモザンビークで栽培し、日本に輸入するとしています。しかし、ポンガミアはFITでは認められていない上、モザンビークで大面積の農地を、日本の発電のために占有することになり、大きな環境社会影響を伴います。また、長距離輸送に伴い、大量の温室効果ガスが発生します。
こうした状況を踏まえ、FoE Japanは、6月25日、「石巻須江地区の火力発電の建設中止・撤回を求める、環境を守る住民の会」「須江地区保護者の会」などの住民団体や本件に懸念を有するNGOや市民団体とともに、経産省に本事業のFIT認定取り消しおよびFIT事業計画策定ガイドラインの強化を求める要請書を提出し、また意見交換を行いました。
要請書本文は以下の通りです。
2021年6月25日
経済産業大臣
梶山 弘志 様
G-bio石巻須江バイオマス火力発電所のFIT認定取り消し
およびFIT事業計画策定ガイドラインの強化を求める要請書
宮城県石巻市須江地区に建設が予定されているG-bio石巻須江バイオマス火力発電所(出力102,750kW)は、建設予定地周辺に小学校、保育所、住宅地があり、振動、悪臭、大気汚染など生活環境の悪化、燃料を運ぶ大型トレーラーの通行増加による危険性など、多くの懸念がある。また、燃料はポンガミアというマメ科植物をモザンビークで栽培し、日本に輸入すると説明されているが、モザンビークで大面積の農地を、日本の発電のために占有することになり、その環境社会影響は計り知れない。栽培・生産・輸送などのライフサイクルを考えれば、膨大な量の温室効果ガスが発生する。FIT法がその目的に「環境負荷の低減」をかかげている以上、このような事業をFITにより推進することは許されない。
2017年2月、本事業はFIT認定を取得しているが、私たちが得ている情報では、当時は燃料としてパーム油を利用するとして申請を行ったとのことである。その後の事業者の燃料に関する説明は二転三転し、現在は燃料をポンガミアにするとしている。パーム油の価格の高騰やFITの事業計画策定ガイドラインで求められている第三者認証を取得したパーム油の入手が困難であることが原因であると考えられる。しかし、経済産業省の持続可能性ワーキンググループにおいては、ポンガミアは燃料として認められていない。
さらに、本事業に関しては、地元石巻須江地区において、多くの住民が反対している。地元住民は、「環境を守る住民の会」や「須江地区保護者の会」を結成し、計画撤回を求める申し入れを何度も行っている。建設反対の署名は、今年2月末、住民の過半数である1万人を超えた。
一方で、事業者に住民からの疑問に真摯に答える姿勢はみられず、事業内容も不確かである。そもそもモザンビークでのポンガミア栽培計画も、内容がまったく不明であり、事業の実現可能性が疑われる。
さらに、同じ宮城県角田市では、旅行大手H.I.S.が出資するH.I.S.SUPER電力がパーム油を燃料とするバイオマス発電所を計画し、2021年1月より運転を開始しているが、パーム油が調達困難なためか、実際には稼働していない。事業者は燃料をポンガミアに切り替えるという情報もある。
こうした状況を踏まえ、私たちは以下を要請する。
1.G-bio石巻須江バイオマス火力発電所の認定を取り消すこと
2.バイオマスFIT事業計画策定ガイドラインの内容を以下の通り強化すること
1)森林破壊のリスクを伴い大量の温室効果ガスを発生するパーム油をFITの対象から外すこと
2)ライフサイクルを通じての温室効果ガス(GHG)排出量の評価および排出量の上限を設定すること
3)事業者に住民との合意の取得および燃料調達計画の開示を義務付けること
4)事業に対して住民または第三者が、FITガイドラインに照らして異議申し立てを行った場合、その内容を調査し、公表する仕組みを設けること
石巻須江地区の火力発電の建設中止・撤回を求める、環境を守る住民の会
須江地区保護者の会
Fridays For Future Sendai
仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会
ウータン・森と生活を考える会
舞鶴西地区の環境を考える会
NPOきらきら発電・市民共同発電所
Mighty Earth
プランテーション・ウォッチ
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
地球・人間環境フォーラム
(公財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
国際環境NGO FoE Japan
意見交換の報告
意見交換において、経済産業省は、「ポンガミアは現段階ではFITの燃料としては認められていない」としました。
事業者は、燃料としてパーム油を使うとしてFIT認定を取得したようです。その後、住民に対しては、ポンガミアを使う、と説明していますが、経済産業省に対して、変更申請をしたのかどうかは不明です。
主なやりとりは以下の通りです。
Q:上記の要請についてのお考えをおきかせいただきたい。
A:FITにおいては、燃料安定調査等実施等の認定基準があり、それらに違反している事実を確認次第、指導や改善命令などの違反解消手続きをとる。違反が解消されない場合、認定取り消しを含めて対応する。
FITの燃料については、食料競合や温室効果ガス排出などの持続可能性に観点から、バイオマス持続可能性ワーキンググループにおいて議論をしている。輸入燃料だからダメだということではなく内外差別の原則。引き続き持続可能性を確保しながら、再生可能エネルギーの導入拡大を進めていきたい。
住民とのコミュニケーションに関しては、地域に合わせて進めることが最良である。燃料調達計画の開示を義務付けることについては、内容が事業者の事業計画のコアな部分であり、個人情報保護法の法律との関係や商業上の秘密もあるので開示できるかは難しい。
Q:石巻市議会、宮城県議会の両議会において、全会一致にて「G-bio発電所建設は中止すべきと国に意見書を提出する」と決議されている状況、また、県知事から住民合意を得て進めることという意見書が出されているのにもかかわらず、事業者が事業を進めようとしていることについて、どう考えるか。
A:経済産業省としても、住民の懸念や地元自治体の意見は承知している。地元住民の懸念を受けて、東北経済産業局からも事業者とコミュニケーションをしながら適切な事業を促したい。
Q:ポンガミアは、農産物であり、主産物にあたると思われるが、現在のFITガイドラインでは許容されないのではないか。
A:そもそも現在、ポンガミアはFIT制度の対象の燃料としては認められていない。
Q:一般的に、FIT認定の際に申請していた燃料から変更を行うことは認められるのか。
A:一般的に燃料変更は許容されている。
Q:G-bio石巻須江バイオマス火力発電所の事業者から、燃料の変更の申請はあったか。
A:個社の情報なので答えは差し控える。なお、ポンガミアに変更ということであれば、現時点で認証燃料でないので、申請がでたとしても認定されない。
Q:FIT申請時には、誰により、どのような審査が行われるのか。その際、燃料調達計画の妥当性や適切性については審査されるのか。
A:地方経済産業局が審査する(本件は東北経済産業局)。事業者提出書類で審査。農林水産省、林野庁とも協議をして審査している。
Q:H.I.S.SUPER電力による宮城県角田市のバイオマス火力発電所について、パーム油をポンガミアに変更するという相談は受けているか。
A:個社の話なので、答えられない。
Q:住民がFIT事業に関して、異議申し立てを行いたい場合、現在、どこに申し立てればよいのか。
A:地方経済産業局(本件は東北経済産業局)もしくは本省ということになる。
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>「バイオマス発電をめぐる要請書 FIT法の目的である『環境負荷の低減』の実現を」
>「バイオマス発電に関する共同提言」
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