【声明】H.I.S.のパーム油発電所の本格稼働に抗議する~熱帯林を破壊し、気候危機を加速化させる~

バイオマス2023.7.10

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旅行大手エイチ・アイ・エス(H.I.S.)が、宮城県角田市でパーム油火力発電所(41MW)建設を進めてきており、近日中にも本格稼働かとみられています(※1)。

本事業は年間7万トンものパーム油をマレーシアまたはインドネシアから輸入し、それを燃やす事業です。パーム油生産のためのアブラヤシ農園の拡大は、東南アジアにおける熱帯林破壊の最大要因とも指摘されてきました。インドネシアとマレーシアでは過去20年間に約 350万haもの熱帯林がアブラヤシ・プランテーションに転換されました(※2)。多様な樹種から構成される熱帯林が一度伐採され、単一のアブラヤシが植えられる農園になると、もともと熱帯林に生息していたオランウータンやゾウなどの野生生物が生息できなくなり、生物多様性が失われます。また、熱帯林は、大量の炭素を蓄えています。地上の炭素の3割を貯留するともいわれる泥炭地にプランテーションが造成されてしまうこともあります。また、パーム油の製造過程では農薬や化学肥料を多用、搾油工場での加工や廃液処理など多くの行程で温室効果ガスが排出されます。このため、パーム油を燃料とする発電は、化石燃料の火力発電所以上の二酸化炭素を排出し、気候変動を加速化させます。

私たちは以前から、たびたびH.I.S.に対して申し入れを行い、本事業を中止するように求めてきました。また、世界各国から集めた20万筆以上の反対署名を提出しました。しかし、残念ながら、H.I.S.は私たちとの面会を拒否し、このような反対の声に耳を傾けようとしませんでした。

H.I.S.は、発電所が燃やすのはRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)で認証されたパーム油であることを、ウェブサイトなどで説明してきました(※3)。私たちは、たとえRSPOの認証油であったとしても、耕作可能な農地に限界がある以上、エネルギー用途に大量のパーム油を使うことそのものが問題であると指摘し続けてきました。なお、RSPOの認証油は流通量に限界があり、従来の食品などの用途ですら調達はたいへん困難であるのが現状です(※4)。発電のために燃やすこと自体、大きな問題をはらんでいます。

この事業はFIT(固定価格買取制度)により、私たちの電気料金によって促進されています。「環境負荷の低減」を目的に掲げたFIT制度のもとで、このように森林破壊を伴うリスクが高く、ライフサイクルにわたっての温室効果ガスの排出が高い事業が支援されることは大きな問題であり、私たちとしても制度の改善を求めているところです。一方で、制度に便乗して、問題を認識しながらも、事業を進めるH.I.S.の姿勢は厳しく問われるべきでしょう。

私たちは、H.I.S.が、熱帯林破壊や気候危機の加速を懸念する世界中からの声に耳を傾けることなく、かたくなにこの事業を進めていることに強く抗議し、あらためて事業の中止を求めます。


国際環境NGO FoE Japan /Fridays For Future Sendai /ウータン・森と生活を考える会 /熱帯林行動ネットワーク(JATAN) /国際環境NGO 350.org Japan /気候ネットワーク /環境エネルギー政策研究所(ISEP) /「環境・持続社会」研究センター(JACSES) /国際環境NGO グリーンピース・ジャパン / WALHI National Executive /熱帯林行動ネットワーク(JATAN) /仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会 /プランテーション・ウォッチ /マイティ・アース /舞鶴西地区の環境を考える会 /群馬県邑楽町にパーム油発電所建設を反対する会 /三恵バイオマス発電所公害被害者の会 /石巻須江地区の火力発電の建設中止・撤回を求める、環境を守る住民の会 /NPOきらきら発電・市民共同発電所 理事長 水戸部秀利 /NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊みゆき

連絡先:国際環境NGO FoE Japan (info@foejapan.org)


(※1) 本日、施工業者の東芝プラントシステム株式会社から、事業実施会社のH.I.S.スーパー電力が引き渡しを受け、その後本格稼働とみられる。
(※2) 3.5 million ha of Indonesian and Malaysian forest converted for palm oil in 20 years
https://news.mongabay.com/2013/11/3-5-million-ha-of-indonesian-and-malaysian-forest-converted-for-palm-oil-in-20-years/
(※3)事業会社であるH.I.S.スーパー電力のウェブサイトの中で、「持続可能性の基準に適合したRSPOのセグリゲーション(SG)方式の認証油のみを使用します」としている。https://www.his-power.jp/ しかし、「使用燃料における固有識別番号はこちら」とされているリンク先の表はブランクのままとなっており、果たして実際にRSPOの認証油を使っているのかどうかには疑問が残る(2020年12月19日参照)。
(※4)「認証パーム油100%」の裏側 日本勢、苦渋の混合品(日経新聞2020年12月1日付)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66812100Q0A131C2TJ3000


※関連情報
何が問題? H.I.S.のパーム油発電 Q&A
見解:バイオマス発電は「カーボン・ニュートラル(炭素中立)」ではない
「バイオマス発電をめぐる要請書 FIT法の目的である『環境負荷の低減』の実現を」
「バイオマス発電に関する共同提言」

 

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