原発推進で、私たちの電気代は上がるの?
〜改正電気事業法から考えるくらしへの負担〜

2026年7月17日、原発など大規模電源の建設への新たな支援制度を含む改正電気事業法が成立しました。今日は、このしくみによる消費者への負担について中心に、影響を見てみたいと思います。
今回導入されるのは、原発をはじめとする大規模電源の建設等に対し、財政投融資という公的資金を原資とした長期融資を行う新たなしくみです。政府は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)*を通じて融資を実施します。これは、本来事業者が負うべき原発のリスクやコストを、将来世代も含めた国民に負わせるものです。市場原理にも、公正な事業環境を実現するという電力システム改革の理念にも反しています。FoE Japanは、消費者団体や環境団体などとのネットワークで、制度の概要が明らかになった昨年12月から問題点について訴え、署名活動や経済産業省との交渉を行ってきました。
>「原発融資新制度」の撤回を求める署名提出集会 | 国際環境NGO FoE Japan
*電力広域的運営推進期間(OCCTO)とは、電力の需給計画などを全国レベルで調整する期間で、すべての発電事業者や小売電気事業者、送配電事業者などが登録しています。

図:融資制度の概要(経済産業省審議会資料より)
消費者への負担はどうなる?
大きな問題は、もはや事業性を失った原発を無理に支えることで、日本のエネルギー転換をますます困難にすること、そして電気代ほか大きな負担を将来にわたって固定することです。近年、原発の建設費は欧米ではすでに数兆円に達し、建設予定も10年単位で大きく遅延しています。
>最近稼働した原発の建設コストは?…今や数兆円は当たり前、当初予算の数倍に膨張も | 国際環境NGO FoE Japan
そのような原発を、7月に決定された現在の方針(「今後の原子力政策の方向性と行動指針」)では、2040年代までに2~5基、2050年代までに11~14基新設(建前は建て替え)しようというのです。それを財政面で具体的に支援するのが今回のしくみです。
日本でも、建設コストも期間も想定よりも膨れ上がっていくおそれが十分にあります。無理に建設を進めるとすれば、その費用が電気代を直接押し上げることになります。原発を建設する大手電力はもちろん、市場価格などを通じて新電力にも影響します。
それが、1基だけでも10年単位、建設基数が増えれば20年、30年にわたって負担が膨らんでいきます。
さらに、返済が滞ったり貸し倒れになったりする場合には、一般送配電事業者から「拠出金」を集めるしくみも検討されています。今回の法律には入っていませんが、審議会の資料にはすでに書かれています。一般送配電事業者は、すべての小売電気事業者からその資金を徴収します。つまり、原発を持っていない小売電気事業者、およびそのユーザーも含めて消費者が広く薄く負担するしくみがもう一つ作られるおそれがある、ということです。
そもそも、太陽光などの再エネが増えることで原発や火力の経済性は悪化するという理屈で、電力自由化以降、すでにいくつもの支援制度がつくられてきました。
・託送料金による原発事故賠償費用や廃炉費用の回収
・容量市場
・長期脱炭素電源オークション
これらによってすでに、「すべての電力消費者が」原発を支えています。それでも新規建設には足りない、民間金融機関だけでは支えきれないということが、電力業界から再三にわたって強く要請されてきていました。その声を受けて第7次エネルギー基本計画(2025年2月)に「何らかのファイナンス支援」が書き込まれ、それが今回の法改正につながりました。
図:融資制度の概要(経済産業省審議会資料より)※「拠出金等」がすでに入っている
高リスクでも高コストでも、大規模電源温存
そこまでコストもリスクも高い原発を、国民に負担を押しつけながら何としてでも建設するという方針なのです。それでも計画通りには進まないでしょう。とにかく、その分再エネの導入がどんどん遅れ、電気代は上昇し、火力発電は温存され、気候変動が加速し続けます。
今回の制度の対象電源など詳細については経済産業省の審議会で議論が行われていますが、
・出力50万kW以上の大規模電源(ただし、同一発電所内の複数機を束ねることは可)
・長期脱炭素電源オークションの対象電源を基本としつつ、広く安定供給に資する電源
という方向です。
原発はもちろん、脱炭素火力(石炭火力のアンモニア混焼など)さらにはLNG火力さえも対象となりうる書き方です。事業者は、LNGも対象とすべきと発言しています。火力発電に新技術を付け加えた「脱炭素」火力も、詳細は省きますが技術的にも問題山積で、非常に高コストです。
日本は、2050年までにカーボンニュートラルをめざすことを国際社会に宣言しています。そのために一刻も早く化石燃料から脱却し、省エネ・再エネに移行すべきはずです。
それなのにこれからも、そして2030年以降も、LNGや石炭などの火力発電にも支援するというのです。高リスク・高コストの原発や火力の大規模電源を、どんなに赤字になろうとも国や消費者の負担で支えるという政策・・・これが「GX」の正体です。
なお、8月26日に発表された「エネルギー需給構造強靱化総合パッケージ (POWERR GX)も、「原子力の最大限の活用」や水素・アンモニアなどの「代替燃料の活用」、などこれまでの方針が強化されたのみです。
再エネについては、価格低下と普及が5~10年後に見込まれているペロブスカイトへの注力のみで、すでにある再エネや省エネの強化は、残念ながら何も追加されていません。
>GX実行会議(第17回)
どうしたらいい?何ができる?
「すべての消費者が」原発や火力を支えるしくみが作られていることは確かですが、だからといって再エネ新電力への切り替えが無意味なわけではありません。上記見たように、様々な支援策の前に大手電力の電気代が、原発や火力を支えているのです。大手電力シェアが95%から約80%になり、以前より収入が減ったために、それだけでは足りないと支援策が求められているのです。もっともっと、再エネ新電力のシェアを増やす必要があります。
まだの方は今すぐ、再エネ切り替え(パワーシフト)を。参考はこちら。
>https://power-shift.org/
また、気候危機は切迫しています。今年も各地で痛ましい災害が起きています。化石燃料燃焼などによる人為的な温室効果ガス排出が、気候危機の原因となっています。
そのため一刻も早く省エネルギーや再生可能エネルギーに移行しなければなりません。温室効果ガスは大気中に蓄積されるので、影響をすぐに回避できるものではありません。
いずれにしても、火力発電を新たに建設したり、再エネを妨げる原発など大規模電源に莫大な資金をつぎ込んでいる場合ではありません。
そのために必要なのは、省エネ・再エネの支援に加え送配電網の整備、蓄電システムや需要側対策など、短期間で効果を発揮し、地域にも利益をもたらす投資です。将来世代にさらなる負担を残す原発や化石燃料依存ではなく、省エネと再エネを中心とした持続可能で公平なエネルギー政策への転換を改めて強く求めます。
具体的に何ができるか・・地域から、自治体再エネを増やしていくことが欠かせません。
こちらでもお話ししましたのでご覧ください。
https://www.youtube.com/embed/shKsDRV7EFY?si=Kqj9gIQ7kPLOGAti
(吉田明子)