COP30 折り返し地点ー交渉の行方は

気候変動に関する国際会議、COP30が11月10日に開幕し、会期は残すところあと数日となりました。記念すべき30回目の、またパリ協定が成立して10年の節目のCOPですが、どのような結末を迎えるのでしょうか。通常、COPでは一週目に技術的な内容に関しての交渉が行われ、2週目以降に閣僚も交えた政治的議論を経て、最終的な決議が行われます。今回は18日火曜日まで技術的な交渉がおこなわれ、議長による主要課題のコンサルテーションが開幕直後から継続して行われました。
現地時間17日には気候資金など議長預かりの議題についての交渉文書案(Mutirao decision)が出され、これには化石燃料フェーズアウトや森林劣化減少の抑止の文言が含まれています。また同時に最終的な交渉文書案がパッケージ(Belem Political Package)で提示されました。議長国ブラジルが重視する議題は、「公正な移行(JT)」、適応、グローバルストックテイクのフォローアップ(再エネ目標、脱化石、CCS、原発と森林減少などの議題含む)ですが、その他の交渉議題も含まれています。
これまでの議論のハイライトをまとめました。
議長によるコンサルテーション
COP冒頭、各国が複数の議題を提案し、議題をめぐる対立が懸念されていましたが、主に4つの議題が議長預かりとなり、コンサルテーションが行われました。議長国は、主要な対立点を議長国主導の非公式な交渉トラックに振り分けることで、交渉開始の遅れと対立を回避した形といえます。4つの領域は「途上国側が重視する2項目」と「先進国側が重視する2項目」に分かれており、気候資金、気候変動対策に関連する貿易的一方的措置(UTM)、 国別決定貢献に関する統合報告書への対応および1.5℃目標と実施ギャップへの対処、パリ協定第13条に基づく報告とレビューがそれらにあたります。
前回のCOP29では、「気候資金」について十分な成果を出すことができず、途上国が気候危機対策を行うための資金が全く足りていません。依然、COP30でも気候資金の議題の重要性が極めて高いといえます。
第2週の冒頭、これら4つの議題に関する決定文書案「Mutirão」(注:ポルトガル語で共同作業を意味する)が提示され、またCOPの他の交渉項目と併せて「ベレン政治パッケージ」と名付けられたパッケージが提示されました。このパッケージには、適応目標、公正な移行、森林を通じた緩和、エネルギー転換、そして昨年の新しい資金目標合意に基づく気候資金(途上国向けの資金は極めて少なく、民間資金動員の色が強い)が含まれています。
炭素市場
炭素市場に関する交渉はこれまでのCOPですでにほぼ完了しており、今回のCOPでの大きな議論は予定されていませんでした。しかしインドネシアが、炭素市場に関するパリ協定第6.4条に関して、A6.4の監督機関が最近設定した基準(ガイドライン)の「自然を活用した対策(NBS)」への影響について深刻な懸念を示し、基準の緩和を求めました。これにコスタリカも賛同しています。FoEグループはかねてからNBSや気候変動対策にならない炭素市場に警鐘を鳴らし続けてています。詳しくは→ https://www.foejapan.org/climate/about/PDF/chasing-carbon-unicorns-carbon-markets-net-zero-report_jp.pdf
公正な移行(ジャスト・トランジション)
「公正な移行(Just Transition)作業計画」は予定通りいけば来年のCOPで作業が完了します。市民社会は、作業を継続し今後の資金や支援の仕組みを持たせるために「ベレン行動メカニズム(BAM)」の創設を求めており、途上国政府も類似の提案をしています。しかし当初、EU・英国・日本など先進国は新たな制度的枠組みを拒否し、詳細は不明ですが、EUは代替案を提示しています。
適応
「適応の世界目標(GGA)」に関する指標を合意し、新たな適応枠組みを立ち上げる予定でしたが、資金支援や指標、モニタリングなどの論点で対立が続いています。
グラスゴー(COP26)では適応資金を倍増することが合意されましたが、実現していません。現在、アフリカ・グループは「2030年までに適応資金を3倍に」と求めています。
グローバル・ストック・テイク
2年前のCOP28では、化石燃料の段階的廃止、再エネ3倍、2030年までの森林破壊停止を記した決定文が合意されました。その具体的実施に向け、様々な作業グループの元で議論が進んでいます。(グローバル・ストックテイク(GST)、UAEダイアログ、緩和作業プログラムなど)。しかし、その中には原子力・水素・CCUS・バイオマスなど多くの偽りの解決策の推進が含まれており、注視が必要です。
(ブラジル・ベレンー小野寺ゆうり、東京ー深草亜悠美)