ついに着工、山を削り森林を切り開く鴨川メガソーラー ~地元から上がる反対の声に事業者は~

気候変動

パワーシフト・キャンペーンの田渕です。10月4日、5日、千葉県鴨川市で工事が進められているメガソーラーの取材をしました。
私の祖父がこのエリアに住んでいたので、鴨川は故郷の一つです。2018年、FoE Japanは全国で環境破壊や住民の反対が起きている(以下乱開発)いくつかのメガソーラーについて調査を行い、鴨川のメガソーラーについては、現場に行き取材をしました。
現在の鴨川メガソーラーをとりまく状況は、以前よりも市民や議員の活動に広がりが見られます。その様子を報告します。
再生可能エネルギーであっても、環境を破壊したり住民の声をないがしろにするようなエネルギー事業は許されず止めるべきです。さらに乱開発によるメガソーラーによって再エネに対する誤情報もまぎれて広がってしまうことも心配です。気候危機を緩和させるためには原発や火力発電を早期にやめ、代わりのエネルギーとして再エネは欠かせません。乱開発による再エネではなく持続可能な再エネを広げるよう活動を続けていきたいと思います。

鴨川メガソーラーとは

鴨川市内のメガソーラー計画地

<主な情報>
場所:千葉県鴨川市池田小字神川谷689-1他21筆 *1
計画発電量:約100MW *1
FIT認定日:2014年3月31日 *1
運転開始期限(FIT開始起点日):2021年4月23日 *2
FIT価格:36円 *3、 広さ:約250ha *4
樹木伐採数:約37万本 *4、パネル枚数:約47万枚 *4

鴨川メガソーラーは再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)の認定を受け*5、発電規模が100MWを超える大規模事業です。国内にあるメガソーラーの中でも、森林を新たに切り開き、山と谷を大規模に改変するものは他に類をみません。ついに今年着工されてしまいました。
計画地の西側にある柚ノ木林道を行くと通行止めの看板と、事業許可証などの看板が掲げられていました。

計画地への分岐
工事看板

メガソーラーの計画地は山と谷の起伏があるいわゆる山間部です。木々に覆われている自然豊かな場所で、林道では動物も見られました。そんな山並みが続く稜線では動画で確認できる範囲だけでもショベルカーと見られる重機18台が入っており、木が伐採され山肌が削られています。

工事の様子(映像提供:鴨川の山と川と海を守る会。許可を得て撮影しています)

工区地図(千葉県に開示請求をして得た資料、手書き文字は市民団体が記載)
山に向かう道に設置された看板

市民主催メガソーラー説明会(10/4)

市民主催のメガソーラー説明会

2025年10月4日市民主催のメガソーラー説明会が市内の文化体育館で行われました。事業者が住民説明会を拒んでいるため市民が説明をしようという企画でした。
説明会といってもメガソーラーの説明は全体のプログラム(1時間半)の約20分ほど、他の時間は地元の鴨川自然王国でスローライフを行う歌手Yaeさん(加藤登紀子さんの娘さん)らの音楽で参加者を楽しませました。
最近、釧路湿原のメガソーラー問題がネット上で話題になっています。鴨川メガソーラーのこともSNS投稿で拡散されたり、テレビで報道されたりしたこともあり、本説明会には600人もの市民が集まりました。主催者によると鴨川で市民がこれだけ集まったのはお祭り以外では初めてではないかとのことです。
音楽目当てで来場された方もいたと思いますが、メガソーラーの説明が終わったとたん、次の音楽プログラムがあるにもかかわらず多くの方が退出されました。メガソーラーの説明を聞きたいという市民が多く関心の高さが伺えます。

事業者は対話を拒否

当時、林地開発許可を出した千葉県も、周辺の水質検査や土砂流出防止柵の設置を求めることなどを求め、これまでに58回もの行政指導を行ってきましたが、事業者は対応していません。このため環境保全や災害防止の観点から、県知事は県庁内に担当課による連絡会議の設置を指示しました。(10/4千葉日報)
また鴨川市議会は2024年3月、同事業に「安全性を求める」とする決議案を全会一致で可決。さらに事業者と広範囲への住民への説明を行うことなど、すでに5項目の協定を結んでいます。それにもかかわらずそれが実行されていないため、千葉地裁館山支部に調停申し立てを行い(5/10東京新聞)、調停は2025年7月3日に、第1回が行われました。その際、市は出向いて出席しましたが、事業者は電話での出席でした*2
その後も事業者は住民説明会を拒むばかりか、締結した協定の内容は法的根拠が不明と言い、協定を反故にしようとしています。このように事業者は対話を拒否し続けており、事業の内容以上に非対話の姿勢が問題です。
さらに当時から本件に関わる佐藤和幸市議は言います。「事業者はメガソーラーでは採算が取れないということが分かっていて、別の考えがあるのではないか。用途を変えるには開発許可の変更をしなければならないので容易ではないものの、例えば産廃場所などにされないか注意していく必要がある」

市民は

会場に設置されたメッセージボードには、「森はいのちの源」「海を守りたい」といった自然を守りたいという言葉が多くありました。2019年にFoE Japanが取材したときに、いち早く鴨川市漁業協同組合も反対していたことからもわかるように、森林の破壊が海に影響するということ、自然はつながっているということが市民に浸透している様子がうかがえます。

会場に設置されたメッセージボード

また2019年には鴨川市議会議員では佐藤和幸議員だけが反対の立場で活動していましたが、現在は、積極的に反対を公言する方は5人に増えたそうです。
鴨川の山と川と海を守る会の活動から発展し、市民にも市議にもやめるべき事業として意識が根付いてきたのではないかと思います。

おわりに
FIT期間が20年より大幅に短縮されるなか*5、事業者がどのような思惑で事業を進めているのかわかりません。今後事業変更などがないかなども含め注視していく必要を感じます。
気候危機を緩和させるためには再エネは欠かせません。しかし、再エネによるFIT制度はあくまで「環境保全」を目的としたものであり、乱開発による自然破壊は本末転倒で中止すべきです。また、地元の反対の声を無視した事業者の不誠実な対応は許されるものではありません。これからも持続可能な再エネのために活動を続けていきたいと思います。
(田渕 透)

(参考情報)
*1 資源エネルギー庁 事業計画認定情報より https://www.fit-portal.go.jp/publicinfo
*2 佐藤和幸 鴨川市議による
*3 環境手帖 https://nature-note.com/?p=1
*4 鴨川の山と川と海を守る会より https://kamogawa-nature.com/
*5 2014年に再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)認定を受けましたが、事業開始まで時間がかかっており、今年、山の造成工事が始まったばかりです。発電できるまでにはあと数年はかかるでしょう。事業開始まで時間がかかっている案件に対しては、FITの未稼働案件に対する措置として、運転開始期限が設定されます。これは発電しているかしていないかによらず、FIT期間(20年)がスタートすることになります。そのため運転開始期限が2021年に設定されました。従って、すでに4年が経過しており、工事が3年で完了したとしても、発電開始までにFIT期間のうち7年を消費することになります。

 

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