原子力事業への国際公的支援に関する意見書を米国議会に提出
米国下院金融サービス委員会(US Financial Services Committee)において、2024年1月17日、世界銀行などによる原子力事業に対する支援のあり方について公聴会が開催されました。FoE Japanからも意見書を提出しました。
昨年ドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)において、米国が主導し、原発の容量を2050年までに3倍にする宣言が有志国によってなされましたが、宣言の中には、「世界銀行、地域開発銀行(アジア開発銀行など)などの株主に対して、融資政策に原発を含め、積極的に支援することを奨励する」という文言も含まれています。世界銀行や地域開発銀行に対し原発を支援するよう求める圧力の高まりが懸念されます。
意見書のポイントは以下の通りです。意見書全文はこちらからご覧ください(英文)。
- 原発はコストが高く、リスクが大きい。一度事故が起きれば、影響は長年続く。福島原発事故のケースを見ても、これらのコストをカバーできる保険は存在しない。
- 近年再生可能エネルギーのコストは減少する一方、原発のコストは増加傾向にある。
- ウラン採掘から発電所の運転に至るまで、被曝や放射能汚染のリスクがあり、また放射性廃棄物は長期間管理する必要がある。事業者はおろか、金融機関がそのような長い期間、事業をモニタリングできるとは考えにくい。
- 原発は事故などが多く、不安定な電源である。
- ロシアによるウクライナ侵攻で、原発に対する軍事攻撃のリスクが表面化している。
- 原発は気候変動に対しより脆弱になっている。例えばフランスでは熱波の影響により出力制限や運転停止を強いられている。海面上昇などのリスクも指摘されている。
- 原発は気候変動の解決策にはならない。パリ協定の1.5℃目標を達成するためには2030年までに二酸化炭素の排出を半減する必要があるが、近年、原発建設に平均9年以上費やされている。気候変動対策には遅すぎる。
- 融資を受ける国の財政基盤を危うくする。新たに原発を建設する可能性のある国として幾つかの途上国が挙げられているが、原発建設のコストは途上国の国家財政規模を上回る場合がある。
- 原発事業に関する情報公開は、通常の事業に比べて限定的になる可能性がある。原子力は核セキュリティと密接に関わっていることから、センシティブな情報が環境影響評価などに記載されず、一般に公開されないおそれがある。金融機関が適切な判断を下す、もしくは影響を受ける住民が適切な情報を得られず融資決定が行われる可能性がある。
- 原発は人権を脅かす。ウラン採掘から原発労働にいたるまで健康リスクが存在する。実際に原発作業員の白血病が報告されている。ウラン採掘による先住民族に対する人権侵害も報告されている。