パーム油と森林
「熱帯林を壊すパーム油発電やめて」~HISに要請書を提出
パーム油を原料として宮城県角田市でバイオ発電の建設が予定されています。事業者は、旅行会社大手のエイチ・アイ・エス(HIS)です。
パーム油の生産現場のマレーシア・インドネシアでは、熱帯林が大規模アブラヤアシ・プランテーションに転換され、野生生物の生息地の破壊や泥炭地からの大量の温室効果ガスの排出が問題になっています。計画では年間7万トンものパーム油を燃焼させることになりますが、これは日本の食用などの従来のパーム油の消費量の1割に相当します。
FoE Japanは、バイオマス産業社会ネットワーク、レインフォレスト・アクション・ネットワークなど森林や気候変動に取り組む多数の環境NGOや石炭火力発電に反対してきた宮城県の市民団体とともに、2月5日、HISの澤田秀雄社長宛てににパーム油を使ったバイオ発電事業を取りやめるように求める申し入れ書を提出しました。
申し入れ者代表の長谷川公一さん(東北大学大学院文学研究科教授・環境社会学者)は、記者会見で「日本を代表するような旅行会社が、熱帯林を破壊するような事業に加担してはならない」と述べました。
HISは持続可能であると認証されたパーム油を利用するとしていますが、それでは解決になりません。パーム油をエネルギーに利用することにより、既存の食用利用よりも爆発的に消費が増え、それが熱帯林破壊やさまざまな社会問題を引き起こすからです。
FoE Japanは以前より、パーム油などをバイオ燃料として使用した場合、消費量急増により、熱帯林伐採の圧力がさらに高まるなどの問題提起を続けてきています。 今後ともこの問題に取り組んでいく予定です。
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株式会社エイチ・アイ・エス 代表取締役会長兼社長 角田パーム油発電所の建設中止に関する申し入れ書
御社が宮城県角田市で建設を始めようとしているパーム油を利用した発電所について、私どもは重大な懸念を抱いており、建設の中止を強く申し入れます。これまでも再三、H.I.S.SUPER 電力株式会社社長の赤尾氏には懸念をお伝えし、パーム油の環境・社会影響の大きさについて情報提供をしてまいりましたが、発電所建設の見直しが行われていないのは大変残念です。 旅行業者として、「熱帯林地域への旅」という人々の夢の実現に寄与してこられた御社が、熱帯林破壊につながる事業を推進されることは非常に残念です。また地元宮城県の環境団体はいずれも、震災からの真の復興を願い気候変動被害を憂うる立場から、本当に持続可能なエネルギー、生産国の環境・社会にも負の影響を与えないエネルギーを求めて真摯に活動しています。2018 年12 月12 日付けで、角田市が所在する宮城県の河北新報紙には、添付の投書が掲載され、地元で大きな反響を呼び起こしております。12 月20 日開催の角田市議会では、市議から市長の対応を問いただし、「撤退の申し入れ」を強く求める質問がありました。 御社のグループ理念は「自然の摂理にのっとり、人類の創造的発展と世界平和に寄与する」であり、H.I.S.SUPER 電力は「よりクリーンで地球を傷めない持続可能なエネルギー供給を目指す」と謳っています。これらの理念に今一度立ち返り、角田市でのパーム油による発電所の建設を即時に中止していただけるよう、ここに申し入れます。 2019 年2月5日 申入れへの賛同団体・個人名は以下のとおり。 申入れ賛同個人(50音順) |