お知らせ
フェアウッドセミナー開催報告
「日本の違法伐採対策について ~合法木材と小売業界の役割~」
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“合法木材の普及に小売業界はどのような取組みができるのか”
をテーマに、3月15日、フェアウッドセミナーを開催しました。
小売業界や、住宅、家具、建材、製紙など木材関連の会社の方、一般・学生など60名に参加いただきました。
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冒頭に、日本の違法伐採対策について、G8サミットから派生した違法伐採対策の流れや、グリーン購入法やガイドラインの内容、また海外の違法伐採対策の事例についてについて林野庁の川口大二氏に説明いただきました。
また、各国の生産現場の現状として、生産時の違法性が依然懸念されるマレーシア、トレーサビリティの観点で書類での遡及可能性が低いロシアの状況をFoE Japan が報告しました。
続いて、各企業による先進的な取り組みが報告されました。
まず「紙製品」の分野で2003年から取組みを始めている(株)リコーの駒田仁彦氏から、リコーでは2010年に紙のみならず木材にも対象を拡げ、また国内外のグループ全体に拡大し、紙製品および製品の付属品(マニュアル類、包装材など)の原料に保護価値の高い森林に由来する原料は、生物多様性保護の観点から望ましくないと判断し使用禁止と規定したことが報告されました。
供給業者に対しても協力要請し、規定の要求を満たさない場合は取引停止も視野に入れており、厳しいスタンスで原料の持続可能性を確保しています。
「木材製品」の分野からは、自社の木材調達ガイドラインを策定し、積極的に環境配慮材調達に取り組んでいる朝日ウッドテック(株)の谷口正剛氏より、商品面、調達面、技術面という3つの視点での取組みが報告されました。
「製品体積の70%以上が持続可能な木質部材で構成されている製品=環境配慮型製品」という明確な基準を設定し、徹底したサプライチェーン管理の下、森林認証材やアグロフォレストリによって生産される材の調達が報告されました。また、環境配慮材調達に伴う技術開発に取り組む様子も紹介されました。
そして小売業界からは、チェーンストア業界/総合スーパー最大手であるイオン(株)の鈴木裕章氏より、他業種に比べ合法木材など木質原料調達面での環境社会配慮については遅れているものの、他方、植林活動や各種認証製品の取り扱い等は一部実施していることが報告されました。
プライベートブランド(PB)製品には、品質維持の面でサプライチェーン管理を必須としており、SA8000認証取得などを通して製造委託先等への協力を要請しています。今後の課題として、コンシューマーグッズフォーラムでの取り組みやCSR調達ガイドライン策定へ向けた研究会立ち上げなども報告されました。
海外の事例としては、IKEAのミハイル・タラソフ氏より「IKEA林業のデューディリジェンス」と題し、IKEAが世界で展開する原料調達面でのデューディリジェンスの内容について報告されました。
IKEAはブランドイメージを確保するためにも、原料の合法性確認には重きを置いており、IWAYと呼ばれる独自に確立したデューディリジェンスシステムを運用しています。これにより、63.5%はFSC-CoC認証、17.3%は自己検証、その他の第三者検証等を合わせ、81.3%の木材は検証されています。
課題として、森林認証材など限られた量の低リスク原料の確保を挙げ、独自に認証面積の拡大を支援する取り組みの重要性に触れました。同時に木質原料のトレーサビリティの確立は非常に困難であり、サプライチェーン管理の本質は原料が市場を流通する前の段階でリスク軽減措置を取ることが肝要だと報告されました。
パネルディスカッションでは、2つの議題について議論が交わされました。
「最終消費者の合法木材への関心は高まっているのか」
この議題では、「最終消費者の合法木材の関心は残念ながらまだ発展途上であるが、企業の間では確実に関心は高まっている」との認識が確認されました。
IKEAのミハイル氏から、最終消費者の関心を高めるために、店舗でのビデオやちらしを用いた様々な顧客とのコミュニケーションを図っている事例も紹介されました。
朝日ウッドテックの谷口氏からは、住宅業界では成功事例とも呼べるほどその関心は高く、「合法木材」は最低要件になっているという意見が、リコーの駒田氏からは、複写機業界では、合法のみならず、より保護価値の高い森林に由来する原料を排除するという「持続可能性」に踏み込んでいるとの意見がありました。
「合法木材のシェアを高めるにはどうしたらよいか」
二つ目の議題では、イオンの鈴木氏から、リテーラーとしての波及効果を発揮するためにも、社内で調達方針を策定し、全社的な取り組みに発展させていくことが第一歩であるものの、一社のみではその効果は限定的で、他社、NGO、政府など様々な連携が重要だとの意見がありました。
朝日ウッドテックの谷口氏からは、住宅は成功事例として捉えれば業界団体等のリーダーシップとトップランナーの牽引力と集団で取り組んでいくことが大切ではないかとの意見がありました。リコーの駒田氏は、複写機業界でも同業他社で協力しながら取り組みを進めていきたい、といった意見が出されました。
他方、複数のパネラーより、合法性のみならず持続可能性への取り組みもみられる中で、企業としてどこで線を引くのか、どういった
ものを選んでいくべきなのか、といったところがはっきり見えるようにしてほしい、という企業側の悩みも出されました。
小売業界でさまざまな立場で森林保全・合法木材普及に携わるパネラーの方々から情報提供、意見交換があり、コーディネーターの足立氏からも、「木材の合法性や違法性といった問題意識を持った仲間になり得る人々が一同に介したというのは貴重な場でだったこと、そして今後マルチステークホールダーの活動が日本でもはじまっていくことが期待される。」との総評もあり、充実した議論の場となりました。 <お問い合わせ/FoE Japan 三柴 03-6907-7217> |