脱原発・エネルギーシフトに向けて
【プレスリリース】
福島市・大波地区「特定避難勧奨地点に指定せず」に抗議する
―― 結論ありきの説明会、放射線管理区域の5倍もの被ばくを許容
国際環境NGO FoE Japan
福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
スライド資料 >https://dl.dropbox.com/u/23151586/110908_hinan.pdf
私たちは、福島の子どもたちを守るため、自主避難したい住民たちに対して賠償などを保証する「選択的避難区域」の設定を提言してきました。その活動の一環として、福島市・大波地区で9月3日に開催された説明会に参加しました。
■大波地区は「特定避難勧奨地点」に指定されず
大波地区は、事故以来、高い線量が続いていたのにもかかわらず、半年も放置された上でのようやく開催された説明会でした。国や市は「3.1マイクロシーベルト/時を超える地点はない」として、大波地区を特定避難勧奨地点に指定しないと説明。福島市は、冒頭、「避難は経済が縮小する。住民の協力を得て除染を頑張りたい」と発言しました。
以下住民の方々の発言です。
「畑は4マイクロシーベルト/時を越える、畑で長い時間を過ごす人が多い。なぜ生活の場である畑を測らないのか?」
「線量が下がってから測っている。指定されないのは納得できない」
「年1ミリをもとに避難基準を設定すべきではないか」
「子どもたちは既に内部被ばくをしている。すぐに避難させて欲しい」
「すべての子どもたちの避難に補償を出して欲しい」
「山や畑の除染は不可能ではないか?」
「除染でさらに被ばくさせられるのは納得できない」
「事故直後、高い線量を示した時にせめてそれを知らせてもらえれば、余計な被ばくを避けることができた」
しかし、国・市は、これらの疑問に明確に答えず、結論ありきの説明会でした。
■放射線管理区域(0.6マイクロシーベルト/時)の5倍以上の被ばくを許容
今回の国および市の対応に関しては、下記のような問題点があります。
大波の線量は当初から高い水準を示していたが、事故後6カ月も説明会が開催されなかった。
国および福島市は、特別避難勧奨地点の水準を3.1μSv/時にしているが、これは「放射線管理区域」の水準(0.6マイクロシーベルト/時)の5倍以上でそもそも高すぎる放射線管理区域は、子どもを含む一般人の立ち入りは禁じられ、厳格な放射線管理が行われ、事前に訓練を受けた者だけが立ち入ることのできる区域である。市が示した詳細調査結果では、のきなみこの放射線管理区域の水準を上回っている。(スライド12枚目参照)
住民によれば、生活の場である農地が高い線量を示しているのに、計測されず、考慮にも入れられていない。
文部科学省が実施した自動車の走行サーベイにおいては、3.1マイクロシーベルト/時以上の線量を示している地域がある。(スライド13枚目)
報道等によれば、子どもや妊婦への配慮のため、伊達市では、2.7μSv/時、南相馬市では2.0μSv/時(50cm高)という基準が決められているが、福島市では決められていない。
(スライド15枚目参照)
福島市は、「除染をがんばる」としているが、山林に囲まれた大波において除染の効果は限定的である。現に、福島市による計測では、除染した直後においても測定高50cmでは平均11.8%、測定高1mでは平均6.7%しか線量は低下せず、場所によってはまったく低下していない場所もある。 (スライド14枚目参照)
除染に地域住民の協力を求めているが、特定避難勧奨地点にも指定されず、さらなる被ばくをさせられることとなる。
国や市は、説明会の最後には、除染の困難性を訴え、ボランティアの参加を呼びかけました。特定避難勧奨地点の指定を延ばしに延ばした上で見送り、避難よりも除染をと連呼した挙句、除染は困難だからボランティアで手伝えというのです。これは、経済的利害のために高線量地域の人々、とりわけ子どもたちの健康を犠牲にし、目処が立たない除染に住民を駆り出して、さらに被ばくを強要しようというものであり、許しがたいものと考えます。
さらに、国・自治体による説明会のあとに東京電力が住民に対して説明する時間帯が設けられました。このとき「万が一、がんになった場合、東電は補償してくれるのか」という住民の問いかけに対して、東京電力側は「因果関係が証明できない病気については補償しない」と言い切りました。
■注目される渡利地区の動向
福島市・渡利地区においても、6月の時点の市の計測で、非常に高い線量を示しており(小豆塚で3.56マイクロシーベルト/時、平ヶ森で3.20~3.83マイクロシーベルト/時)、私たちは、政府交渉の場で、再三、市民向けの説明会の開催を要求してきましたが、なかなかそれは実現しませんでした。
それが、今月になって、ようやく、渡利などでも特定避難勧奨地点に関する説明会が開催されるという情報が入っています。大波と同じように、一方的に、「特定避難勧奨地点に指定せず」ということが通達されることも予想されます。
このような説明会は、地元の住民の意向も踏まえた意思決定をするべきというICRPの勧告にも反しています。
私たちは地元の住民の方々とともに、この事態をなんとか改善すべく、今後とも、国や自治体への働きかけを継続していく予定です。
【問合せ】
FoE Japan Tel: 03-6907-7217 Fax: 03-6907-7219 E-mail:finance@foejapan.org
満田夏花(みつたかんな)