脱原発・エネルギーシフトに向けて
【プレスリリース】
次期首相への要望
原発事故への早急な対応と、脱原発方針の維持・確立を
国際環境NGO FoE Japan
3月11日の東日本大震災および福島第一原子力発電所事故から半年が経とうとしている今なお、放射能汚染と被ばくにさらされて生活する人々の現状は深刻です。FoE Japanは、菅直人内閣総理大臣が表明した脱原発の方針、また再生可能エネルギー促進法の成立については、大きな一歩として評価し、次期首相にもこの姿勢の堅持と具体化を要望します。一方で、放射能被害対策や原発輸出方針などで、新たな施策や方針の大胆な見直しが必要です。
次期首相には、福島原子力発電所事故の被害の現実を議論の出発点として、以下のような課題に早急に取り組まれることを強く要望します。
【1】福島県および周辺の被ばく被害の最小化に向け、適切な避難区域設定を早急に行うとともに、自主的な避難・疎開についてもサポートすること。
福島県内にはいまだ放射線量の高い地域、区域が多数存在し、特に妊婦や子どもへの影響は深刻である。避難基準となっている年20ミリシーベルトの見直し(注)に加え、新たに「選択的避難区域」を設け、住民の自主的な判断による避難に対して、賠償や行政的サポートを認めるべきである。
注)計画的避難区域、避難勧奨地点の基準となっている年20ミリシーベルトは、一般人の立ち入りが禁止されている放射線管理区域の基準(年5.2ミリシーベルト)よりもはるかに高く、また、チェルノブイリの周辺国において避難が義務付けられた積算線量(5ミリシーベルト)の4倍である。
【2】内部被ばくを最小化するために、食品の暫定規制値の早急な見直しをはじめ、あらゆる対策をとること。
現在の食品の暫定規制値(「飲食物摂取制限に関する指標」)では、規制を守ったとしても最大で年17ミリシーベルトの被ばくを受ける可能性がある。食品の暫定規制値は年1ミリシーベルトを順守できる値とするべきである。また、給食の測定や産地公表など、子どもたちの内部被ばくの影響を最小化するためのあらゆる措置をとるべきである。
【3】原子力安全指針を根本的に見直し、福島第一原子力発電所事故をふまえた徹底した安全性評価を行うこと。また、その終了まで停止中原子力発電所の再稼動を行わないこと。
福島原子力発電所事故により、従来の安全評価指針の破綻が明らかとなっている。ストレステストのみによって再稼動を実施するのではなく、安全評価指針を根本から見直すべきである。またそれまでは、停止中の原子力発電所の再稼動は凍結すべきである。
【4】原子力安全審査機関の独立を確保すること。
経済産業省の原子力安全保安院と内閣府の原子力安全委員会を、環境省外局の原子力安全庁として改組する閣議決定があるが、推進側省庁からの独立性を担保し、実質的なダブルチェックが働くかたちで実現すること。また、原子力安全委員会については、「委員会」の形で残すのであれば、委員の入れ替えを行い、現在までの原子力行政から独立した見解をもつ委員を招聘すべきである。
【5】原発輸出継続方針を撤回すること。
日本国内の原子力発電所の安全確保ができていない状況の中で、途上国への原発輸出は継続すべきではない。8月5日に閣議決定された原発輸出継続方針は、即時に撤回すべきである。
【6】発送電の分離をふくむ電力システムの抜本的改革を実現させること。
現在の地域独占による電力システムを解体し、発電事業と送配電事業の分離を実現すること。東京電力については、債務超過を認め破綻処理を行い、発電事業及び送配電事業を個別に売却すること。
【7】原子力発電利用からの可能な限り早期の脱却を正式に決定すること。
新規の原子力発電所建設計画を即時に撤回すること、また、「原子力依存の低減」のみならず、既存の原子力発電所を全廃していくための具体的なスケジュールを明示すること。事実上破綻している核燃料サイクル政策は、凍結・見直しを行うべきである。
【8】エネルギー基本計画の見直しにおいて、十分な情報公開と国民の意見の反映を確保した上で行うこと。また既存の枠組みを根本的に見直し、省エネルギーと再生可能エネルギーを二本柱とすること。
エネルギー基本計画の見直しについて、経済産業省主導で既存の枠組みのままに進められていることを懸念する。情報公開は十分でなく、国民の意見を反映する場が確保されていない。原子力依存の低減だけでなく完全な脱却を打ち出し、省エネルギーと再生可能エネルギーを二本柱とすべきである。
問合せ
国際環境NGO FoEJapan 脱原発・エネルギー担当<finance@foejapan.org>