脱原発・エネルギーシフトに向けて
IAEA福島レポートについて公開レター: 「被ばく、健康影響の過小評価は、将来に禍根を残す」
公開レター>PDF
賛同署名を募集中>署名はこちらから
(締切りを9月24日(木)朝9時に延長しました。IAEAに再度提出予定です。)
IAEAの報告書> https://www-pub.iaea.org/books/IAEABooks/10962/The-Fukushima-Daiichi-Accident
福島原発事故をめぐるIAEAの報告書について、本日、FoE Japanは公開書簡を天野事務局長宛てに送付いたしました。
書簡の中で、FoE Japanは「公衆の被ばく、健康影響に関して、政府が主張するデータのみを採用し、影響を過小評価するもの」とし、「日本政府が被ばく回避や健診の充実など、現在とるべき対策をとらないことを是認し、将来に禍根を残すもの」と指摘しています。
また、具体的には以下の4つの問題点をあげています。
1.福島県で発生している小児甲状腺がんに関して、その発生状況など多くの重要な事実を見逃し、「事故に起因する甲状腺がんの増加は可能性が低い」と結論づけている。
2.不確かなデータに基づき、「被ばく線量が低い」と結論づけている。プルームや短半減期核種「など初期のデータはほとんど明らかになっておらず、甲状腺の初期被ばく線量評価は「わかっていない」ことを前提とすべきである。
3.「健康影響の認識できる発生率増加が予想されない」という根拠が不明である。
4.避難・帰還の基準として「年間20ミリシーベルト」という基準を使用し、使い続けた。政策決定にあたり、被災当事者や市民、低線量被ばくの影響に関して慎重な専門家の意見はまったく反映されなかった。このため、多くの人たちが、「自主的」避難を強いられ、あるいは避難を選択することができず、苦しめられた。報告書は、このような状況をまったく見落としている。
書簡の詳細は下記をご覧ください。
2015年9月14日
国際原子力機関(IAEA) 事務局長
東京電力福島第一原子力発電所事故をめぐるIAEA事務局長報告書について
私たちは、いまなお継続している福島原発事故の甚大な被害に苦しむ人々ともに、避難・帰還・被ばく防護・健康リスクの低減や被災者支援政策について、さまざまな提言活動を継続してきました。 IAEAのとりまとめた「福島第一原子力発電所-事務局長報告書」は、公衆の被ばく、健康影響に関しては、政府が主張するデータのみを採用し、影響を過小評価するものです。これは、日本政府が被ばく回避や健診の充実など、現在とるべき対策をとらないことを是認し、将来に禍根を残すものです。 とりわけ、公衆被ばくおよび健康影響について主たる問題点を指摘させていただきます。
1.福島県で発生している小児甲状腺がんに関して、その発生状況など多くの重要な事実を見逃し、「事故に起因する甲状腺がんの増加は可能性が低い」と結論づけている。 報告書は、福島県健康調査において見出された子どもたちの甲状腺がんについて、「事故に起因する子どもの甲状腺がんの増加は可能性が低い」としています。しかし、福島県県民健康調査において明らかになってきている事象、とりわけ甲状腺がんについての疫学的な分析や、個々の症例についての分析・考察が行われていない上、以下のような重要な事実を見落としています。 ・ 福島県県民健康調査で甲状腺がんに関して悪性と確定した子どもたちが100人を超えており (注1)、罹患率と有病率の差異を考慮したとしても、多発であると考えられる。2015年5月18日に公表された「福島県民健康調査検討委員会甲状腺検査評価部会」の「中間とりまとめ」においては、「先行検査で得られた検査結果、対応、治療についての評価」として「検査結果に関しては、わが国の地域がん登録で把握されている甲状腺がんの罹患統計などから推定される有病数に比べて数十倍のオーダーで多い」とされた。 一部の専門家は、甲状腺がんの多発を、「過剰診断」によるものとし、日本政府はこれを盾にして追加対策をとろうとしません。しかし、甲状腺検査を担当してきた福島県立医大の鈴木眞一教授は、「手術せざるをえない状況であった」としており、「福島県民健康調査検討委員会甲状腺検査評価部会」の部会長である清水一雄委員も「医大の手術は適切に選択されている」と述べています。すなわち、「過剰診断」という説明は現実を踏まえていません。
2.不確かなデータに基づき、「被ばく線量が低い」と結論づけている。プルームや短半減期核種「など初期のデータはほとんど明らかになっておらず、甲状腺の初期被ばく線量評価は「わかっていない」ことを前提とすべきである。 報告書では、「事故に起因する子どもの甲状腺がんの増加は可能性が低い」理由として、「本件事故に起因する報告された甲状腺線量は一般的に低い」ことをあげています(p.120)。
3.「健康影響の認識できる発生率増加が予想されない」という根拠が不明である。 報告書では、「入手できる情報によれば、公衆の構成員が典型的な放射線のバックグラウンドレベルによる年間線量よりも高くない年間線量を受けたことが示されている。これはUNSCEAR の推定と同じく、被ばくした公衆の構成員又はその子孫に放射線関連の健康影響の認識できる発生率増加が予想されないことを示す」(p.122)としています。 福島県県民健康調査の結果、明らかになった甲状腺がんの発生については前述の通りです。 非がん性の健康影響については、報告書には触れられてもいませんが、原爆被爆者の成人健康調査によれば、いくつかの疾患で放射線の影響が示されていること、チェルノブイリ原発事故後、非がん疾患に関してこれまでにさまざまな研究結果がすでに公開されています(注6)。これを踏まえれば、IAEAは、日本政府に対して、甲状腺がん以外の疾病についても、影響があるものとして、把握につとめるべきと勧告を行うべきです。
4.避難・帰還の基準として「年間20ミリシーベルト」という基準を使用し、使い続けた。政策決定にあたり、被災当事者や市民、低線量被ばくの影響に関して慎重な専門家の意見はまったく反映されなかった。このため、多くの人たちが、「自主的」避難を強いられ、あるいは避難を選択することができず、苦しめられた。報告書は、このような状況をまったく見落としている。 報告書では、「日本の規制機関である原子力安全・保安院は、最も低いレベルである20 mSv を公衆防護の参考レベルに適用することを選んだ(注7)」(p.108)とのみ記載しており、日本政府が、避難基準として「年間20ミリシーベルト」という高い基準を採用し、事故後4年半経過した現在も、「帰還」の基準として使い続けていること、この基準の設定には多くの批判があるのにもかかわらず、被災当事者や市民、低線量被ばくの影響に関して慎重な専門家の意見はまったく反映されなかったことを見落としています。 ICRP勧告では、「現存被ばく状況に適用する参考レベルは年間1~20ミリシーベルトの下方部分から選択すべきであり、長期の事故後における代表的な参考レベルは年間1ミリシーベルト」となっています。 日本政府は、いつから緊急時被ばく状況を脱して、現存被ばく状況になったのかを必ずしも明らかにしていませんが、現在は「現存被ばく状況」にあること、それにもかかわらず「参考レベル」は設定していないと答弁しています(注8)。 「年間20ミリシーベルト」には多くの批判があります。その主なものは以下の通りです。 ・ 日本の法令が依拠しているICRP勧告の公衆の被ばく限度年間1ミリシーベルトの20倍である 政府指示の避難区域の外においても、高い空間線量率や土壌汚染が観測された場所は多かったため、避難を決断した人、あるいは、避難を希望したが果たせなかった人は多くいます。 さらに、政府やメディアによる放射能安全キャンペーンにより、あたかも、被ばくを不安に思うことが異常なことのような社会的風潮が蔓延し、被害者たちを苦しめめています。 IAEA報告書は、日本政府の政策を是認し、避難したことによる困難を記述しているだけであり、こうした被害者たちの置かれた状況を考慮していません。 以 上
注1) 第20回福島県県民健康調査委員会(2015年8月31日)における発表では、一巡目検査(2011~2013年)では甲状腺がんまたは疑いが113人、確定が98人、二巡目検査(2014~2015年)では、甲状腺がんまたは疑いが25人、確定が6人。くわしくは、こちら。
|
☆カンパ募集中☆
FoE Japan では、福島原発事故の被害者の権利を守るための活動を継続して行うため、カンパを募集しています。
郵便振替口:00130-2-68026 口座名:FoE Japan
※必ず、通信欄に、「福島支援」とご明記の上、ご住所、ご連絡先、ご氏名をお忘れなくご記入ください。(領収書や活動報告をお送りいたします)
連絡先:国際環境NGO FoE Japan
Tel: 03-6909-5983
メール:info@foejapan.org
※寄付をいただいたみなさまには、活動報告をお送りさせていただきます。
We are Friends of the Earth ! |