脱原発・エネルギーシフトに向けて
【声明】 原発事故子ども・被災者支援法 基本方針改定の閣議決定を受けて:
避難者切捨ての方針で、法の理念に反する
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>(別紙)基本方針改定の8つの問題
本日、原発事故子ども・被災者支援法の基本方針の改定が閣議決定されました。
https://www.reconstruction.go.jp/topics/m15/08/20150825144311.html
2015年7月10日から8月8日まで行われたパブリック・コメント(パブコメ)では、1,500件のコメントがよせられました。2015年8月25日朝9時現在、まだパブコメへの対応は公開されていません。(本声明の発出後、公開されました⇒ https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/20150825093158.html)
今回の基本方針は、線量が低減したとして、「避難指示区域以外から新たに避難する状況にはない(※)」「支援対象地域は縮小又は撤廃することが適当となると考えられる(当面は維持)」「(空間線量等からは」支援対象地域は縮小又は撤廃することが適当」「当面、放射線量の低減にかかわらず、支援対象地域の縮小又は撤廃はしないこととする」した上で、福島県による自主的避難者への無償住宅提供の打ち切り方針を追認しています。
※もともと復興庁が示した基本方針案では、「避難する状況にはない」とされていました。
しかし、「新たに避難する状況にない」という決めつけは、別紙に示す通り根拠がない上に、「放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていない」「避難・居住・帰還という被災者の選択を国が支援する」「健康被害の未然防止」「一定の線量以上の地域を支援対象地域とする」といった「子ども・被災者支援法」の基本的な理念や規定を無視し、避難者を切り捨てるものです。
この間、多くの被災当事者やFoE Japanなど多くの支援団体は、支援法の趣旨は、選択の権利の保証であるとし、復興庁に対して、「避難する状況にない」という文言の撤回を求めてきました。
復興庁は、最終的に「新たに」という文言を追加しましたが、選択の権利を保証する支援法の理念に反しているという根本的な問題は残されたままです。
また、基本方針では、「定住の支援」という文言だけで、具体的な措置がまったく盛り込まれていません。避難者に対する従来の住宅支援の打ち切りを追認している、避難者切り捨ての方針となっています。
健康支援に関しては、甲状腺がんが福島県内で多発している状況を踏まえず、多くの被災当事者や自治体が求めてきていた福島県外への健診の拡大についても無視しました。
これは、基本方針や具体的施策の策定の際に、被災者からの意見聴取を行い、これを反映するという同法第五条第3項、同法第十四条の規定にも反しています。
FoE Japanは被災当事者の意見や現実を踏まえない今回の基本方針改定は、「子ども・被災者支援法」の理念や規定に反するものとして強くこれに抗議し、撤回を求めます。
FoE Japan 〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986 携帯:090-6142-1807(満田)
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(別紙)基本方針改定の問題点
1.「避難する状況にない」という決め付けは、被災者の「選択」を国が支援するとしている、「子ども・被災者支援法」の理念に反している。
「子ども・被災者支援法」では以下のように規定しています。
被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない(第二条第二項)
「避難する状況にない」という決め付けは、根拠がない上、被災者の選択を国が支援する同法の規定に反しています。削除するべきです。
2.復興庁は「線量が低減した」としているが、線量は十分低減しているわけではなく、いまだに広範囲で汚染が広がっている。
復興庁は2011年時点の実効線量(推計)と、2014年秋の実効線量(推計)を比較して、「線量が低減した」としていますが、「線量が十分低減した」かについては、何も言っていません。
しかし、避難区域以外の地域でも年間1mSv以上の地域が多く広がり、5mSv以上に達する場所も少なからずあり。線量が十分低減しているという状況ではありません。
3.福島県の広い範囲にわたって、「放射線管理区域」相当の場所(4万ベクレル/m2以上)が存在していることを踏まえれば、「避難する状況にはない」とは言えない。
(南相馬・避難勧奨地域の会 小澤洋一さん作成 )
たとえば、「南相馬避難勧奨地域の会」および元京都大学大学院工学研究科の河野益近氏が磐越自動車道のSAやPAでの土壌汚染状況を調査したところ、広い範囲で、40,000Bq/m2を超えており、放射線管理区域で10時間以上の滞在や居住を禁じられている地域の値を示していることが明らかになりました(前頁図)。このことからも、避難区域以外の場所でも、避難する理由があるといえます。
4.復興庁が「線量が低減した」として示している実効線量の推定値には疑問が多く、被ばくの過小評価にもつながる
空線量率から実効線量を導くために復興庁が用いている計算式は、室内が室外の0.4、室内16時間、室外8時間に0.85を乗じていますが、たとえば南相馬市の旧特定避難勧奨地点において行われた測定では、屋内の線量は、屋外の線量の0.4~1.4倍となっており、場合によっては室内の線量が室外よりも高くなっている家屋もあります。
このような計算式は、屋内の線量が屋外の線量に近づいている実態に即していません。
また、そもそも実効線量という実際には計測不可能な曖昧な指標を使い、個人で差異がある値を地図上に落とすこと自体に問題があります。
(ふくいち周辺環境放射線モニタリングプロジェクト測定結果をもとに、ちくりん舎 青木一政さん作成)
5.支援法が定める「一定の線量」が示されていない。「一定の線量」を、多くの被災当事者や支援者たちの意見に従い、「年1ミリシーベルト」するべきである。
支援対象地域は、府指示の避難区域の外であっても、国が支援を行うべき地域として、以下のように定義されています。
「その地域における放射線量が政府による避難に係る指示が行われるべき基準を下回っているが一定の基準以上である地域」(法8条)
多くの被災当事者および支援者が、「福島県および少なくとも年間1mSv以上の地域」を支援対象地域とすることを主張してきました。
それにもかかわらず、復興庁は、2013年の基本方針の策定時に、「一定の線量」を定めず、「相当の線量」と言い換え、支援対象地域を「福島県の中通り・浜通り」と非常に狭く設定しました。
今回の見直しでは、国際勧告や国内の法令に基づく公衆の被ばく限度が年1mSvであることに鑑み、子ども・被災者支援法の理念にのっとって、「一定の線量」を年1mSvとし、福島県全域および汚染状況重点調査地域を支援対象地域とすべきです。
6.個人線量計の値、しかも平均値を、「帰還できる」という根拠に使うことはできない。
復興庁は、個人被ばく線量の測定値を持ち出し、「支援対象地域内での実施12市町村の直近の各平均は、既に年間1ミリシーベルト以下」としています。一方、個人被ばく線量の最大値は、二本松市で最大5.22mSv/年、須賀川市で最大1.86mSv/年となっており、決して低くはありません。
いわき市、福島市、伊達市などでは最大値が公開されていません。
・個人被ばく線量計は、避難や帰還、除染といった「場の線量」の管理に使うべきではありません。「場の線量」の管理には、空間線量率や土壌汚染などの指標を使うべきです。
・個人被ばく線量を用いる場合であっても、個人の生活パターンは差が大きいため、「平均値」を政策のめやすにすべきではなく、「最大値」を目安とすべきです。
・ガラスバッチは空間線量率から推定される被ばく量に比して4割程度低くめの数値を表することが指摘されています。
・実際には、ガラスバッチを常時見につけている人は少なく、自治体発表の個人線量計の値は、過小となります。
7.国の責任において、避難者への住宅支援を継続すべきである
改定案では、福島県が、避難指示区域以外からの避難者に対する応急仮設住宅の供与期間を「平成29年3月末まで」としていることを記述し、「空間放射線量が大幅に低減していること等とも整合的」としています。一方で、国としての施策については触れていません。
前述の通り、避難指示区域外にも年間1mSv以上の汚染が広がり、放射線管理区域レベルの汚染を示している場所も少なくないこと、多くの人たちが避難の継続を希望しており、避難先での生活再建のために、住宅支援は必要であることを考えれば、国の責任において、避難指示区域外からの避難者への住宅支援の継続を行うべきです。
8.法第13条第2項第3項を実現し、福島県外でも健診や医療費の減免を行うべき
福島県による調査で、甲状腺がん悪性と診断された子どもは、悪性疑いも含め126人となっています(うち確定が103人)。その多くが、リンパ節転移や浸潤などを伴っています。昨年4月にはじまった2回目の検査で、1回目の検査のときに問題なしとされた子どもたちのうち15人が甲状腺がんないし疑いと診断されました。甲状腺がん以外の疾病については、調査が行われておらず、全体像が把握されていません。
改定案では、環境省の「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」の中間とりまとめを引用し、「今般の原発事故におる放射線被ばく線量に鑑みて福島県および福島近隣県においてがんの罹患率に統計的有意差をもって変化が検出できる可能性は低いと考えられる」と記載しています。
しかし、5月18日に福島県で開催された福島県健康調査検討委員会の席上で、甲状腺評価部会が「わが国の地域がん登録で把握されている甲状腺がん罹患統計などから推定される有病率に比べて数十倍のオーダーで多い。」とする中間とりまとめを提出しています。その理由として、「被ばくによる過剰発生か過剰診断(生命予後を脅かしたり、症状をもたらしてりしないようながんの診断)が考えられる」としています。専門家会議の「中間とりまとめ」の時点とは、すでに状況が変わっているのです。甲状腺がんの多発が確認された以上、福島県外での健診も実施すべきです。
環境省は、「過剰診断論」をたてにして、県外における健診を行おうとしませんが、過剰診断論は、福島県立医大教授(当時)の鈴木眞一氏は、2014年6月10日の検討委員会で、がん診断を受け手術を受けた患者は「臨床的に明らかに声がかすれる人、リンパ節転移などがほとんど」として、放置できるものではないと説明していること、二度目の検査で、前回問題なしとされた子どもたちの14人が甲状腺がんであると診断されていることを考えれば、破綻しています。
「子ども・被災者支援法」第13条第2項、第3項を具体化するべきです。
以 上
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