脱原発・エネルギーシフトに向けて
原発事故に伴う健診対策 環境省専門委の「中間取りまとめ」 の13の問題
「甲状腺がんの深刻な実態、被ばく影響の研究踏まえ、施策の見直しを急げ」
昨年末、環境省の「原発事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」が「中間取りまとめ」を発表。 これにもとづき、環境省は健康管理に関する「当面の施策」をとりまと め、1月21日までパブリック・コメントにかけています。
https://www.foejapan.org/energy/action/141231.html
FoE Japanが事務局をしている「放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会」では、この環境省の中間取りまとめに対して、福島原発事故後 の子どもたちの深刻な甲状腺がんの実態を踏まえていないなど、13の問題点を指 摘するカウンターレポートを取りまとめ、環境省に提出しました。
レポートでは、「内容以前に、専門家会議の委員構成や会議の進行に大きな問題点があった」とし、また、「福島県県民健康調査において、小児甲状腺がんの多発という点でも、転移・浸潤を含む症状の深刻さという点でも、2巡目の検査で1巡目では見つからなかったがんが4例見つかるという点でも、非常に深刻な結果が出ているのに、これについて分析・検討することをしなかった」とした上で、専門家会議の中間取りまとめが、福島県で行われている甲状腺検査について、「疫学追跡調査」へ見直すよう提言している点について「個々人の健康管理を蔑ろにしている」と批判しています。
また、「中間取りまとめ」では、福島県外における甲状腺検査の必要性を否定していますが、UNSCEARのデータや最近の研究における放射性ヨウ素も放射性セシウムの拡散評価では、福島県外において福島県と同等レベルの汚染の広がりを示している点を指摘。「福島県内外で被ばく量を比較することは非科学的である。県外の被ばく量は低いとして、県外における健診を切り捨てることは認められない」としています。
UNSCEARにおけるヨウ素131の拡散評価 アニメーション画像より
出典: Attachment for UNSCEAR 2013 Report Vo.1 のB-2 Animation of atmospheric dispersion of I-131 [.ppt]
また、中間取りまとめでは、WHOとUNSCEARの報告の引用が多用されていますが、内容に関する検証を行っていないばかりか、原典に書いていないことが引用されていたり、恣意的に、あるいは誤って引用されたりしている点が少なからずあります。
さらに、甲状腺がん以外のがんや、非がん疾患について否定していることは、原爆被爆者の調査やチェルノブイリ原発事故の被ばく者などを対象とした多くの研究結果を踏まえていません。
カウンターレポートでは、「以上のことから、この『中間取りまとめ』を、原発事故に伴う住民の健康管理施策の根拠にするべきではなく、環境省は施策の全面的な見直しを急ぐべき」としています。
レポートが指摘している13の問題点は下記の囲みの通りです。
レポート本体は、以下からダウンロードできます。
https://www.foejapan.org/energy/news/150113.pdf
「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」(「専門家会議」)による中間取りまとめの問題点
I.はじめに:専門家会議の委員の問題、議論の進め方
1.「基本的な考え方」ではUNSCEAR2010年報告、ICRP2007年勧告の内容を意図的に曲解し、100mSv以下のリスク評価を行っている III. 終わりに:事故の被害拡大の責任および「一定の線量」を策定しなかった行政不作為
別紙1:深刻な甲状腺がんの症例
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