2014年11月7日
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緊急声明本文
本日、川内原発再稼働をめぐり、鹿児島県議会は、31件の再稼働反対(または慎重、もしくは更なる調査をやるべき、地元同意を広げるべきなど)の陳情・請願を否決、1件の再稼働賛成陳情を可決しました。近日中に伊藤知事も再稼働に賛成するとみられます。
昨日の原子力安全対策等特別委員会で、再稼働反対の県議会議員は、県民の理解が得られているとは到底言えないこと、保安規定や工事計画認可の審査はまだ終わっていないこと、責任の所在が不明確であること、福島原発事故はなお収束せず、多くの人たちが幸せな生活を奪われて苦しんでいること、原子力規制委員会はまだ保安規定・工事計画認可の審査中であること、火山学会は「巨大噴火は予知困難」とし原子力規制委の火山影響評価ガイドを見直すべきとしていること、「国富」とは美しい鹿児島で人々が幸せな生活を営むことであること、原発立地の地域活性化は原発に頼らない方向でいますぐ取り組むべきことなどを切々と訴えましたが、自民党・公明党などの数の論理で押し切られた形となりました。
県内5箇所で開催された審査書に関する説明会では反対の意見が相次ぎました。今回の「地元同意」は到底民意を反映したものとは言えません。
川内原発を動かしてはならない理由はたくさんあります。逆に川内原発を今、急いで再稼働させなければならない理由は見当たりません。これは、多くの議員が指摘したところです。
住民のいのちと安全を守る最後の砦たる避難計画は、欠陥だらけであり、さらに一時避難所や避難集合場所が、ハザードマップ上の危険エリアにあり、これは災害対策基本法施行令に違反している恐れがあります。市民団体の問合せに対して、薩摩川内市、出水市、阿久根市、いちき串木野市、また受け入れ先の出水市もこのことを認めざるをえませんでした。
鹿児島県知事・県議会はなぜ、これほどまでの多くの問題を無視して、地元同意を急いだのでしょうか?
今回、不採択となった再稼働反対、あるいは地元同意拡大などの31件もの陳情・請願に込められた一つ一つの県民の想いが踏みにじられたこと、またこれが、今後の原発の再稼働における「民意なき地元同意」の前例となったことは残念でなりません。
問合せ: FoE Japan 満田 (TEL 03-6909-5983)
川内原発再稼働をしてはいけない5つの理由
1.民意を無視した再稼働
1)鹿児島県民の6割が再稼働反対
日経新聞が今年8月に実施した世論調査によれば、「再稼働を進めるべきではない」とする意見は56%であり、「進めるべきだ」は32%にとどまっています(「原発再稼働「進めて」32% 本社世論調査」日経新聞2014年8月24日)。
また、南日本新聞が今年5月に実施した世論調査によれば、鹿児島県民の約6割が再稼働に関して「反対」もしくは「どちらかといえば反対」と回答しています。すなわち、地元でも全国的にも、民意は再稼働に反対なのです。
2)民意をくみ取る場がない
10月9日、薩摩川内市で行われた審査書に対する説明会。発言した10人のうち、9人が審査書に対して、また再稼働に対して、強い疑問と反対意見を述べました。
翌日の日置市での説明会では、9人の発言者がすべて再稼働に反対。まだまだたくさんの手が上がる中、質疑は打ち切られました。
この説明会は、「審査書」に限定した一方的な説明会であり、住民の意見を十分に聞き、再稼働に関する意思決定に反映させるものではありませんでした。
ひとたび事故が起これば、その影響は広範囲に長時間続きます。故郷が失われる可能性もあるのです。それなのに、住民の意見を意思決定に反映させる仕組みがありません。
鹿児島県内の複数の市民団体およびFoE Japanも含む全国の市民団体が、「説明会」のみならず、「公聴会」や「公開討論会」の開催を求める署名を集め、10月3日に薩摩川内市、鹿児島県に一次提出しました。
3)不十分な地元同意の範囲
事業者が再稼働するにあたって地元同意が必要ということになっています。鹿児島県は、「薩摩川内市と県」が同意すればよいとしていますが、いざ事故が生じた時、広範囲に影響が及ぶことを考えれば、まったく不十分です。薩摩川内市に隣接するいちき串木野市、日置市の市議会では、住民陳情に後押しされる形で、市議会が「地元同意を広げるべき」という決議を採択しました。
「地元同意」の範囲の拡大とともに、十分に民意を踏まえる制度が必要です。
2.被ばくを前提とした避難計画
避難計画についてはさらに問題です。9月12日の内閣府の「原子力防災会議」が開催され、ここで、川内原発の避難計画が「具体的かつ合理的になっている」ことが了承・確認されました。しかし、川内原発の避難計画については、30キロ圏限定の避難計画となっている点、避難経路が水没するなど複合災害を考慮していない点、10キロ以遠の要援護者の避難計画が立案されていない点、スクリーニング・除染場所が決まっていない点など、その実効性には大きな疑問があります。
5km圏内の在宅要援護者で、避難が難しい人は、原発近隣の施設に「退避」することになっています。5箇所の「退避所」の一つ、旧滄浪小学校は、原発から1.6kmです。一時退待避所には燃料が4日間分しかたくわえていません。いったいいつ救出がくるというのでようか。これは体のよい「置き去り」にも等しい行為です。さらに、原子力規制委員会のシミュレーションでも、2日間に最高190ミリシーベルトの被ばくを強いられる計算になります。
(出典:内閣府原子力防災会議2014年9月12日付資料に加筆)
3.審査書は穴だらけ
原子力規制委員会が実施した川内原発の適合性審査には、約1万8千件のパブリック・コメントが寄せられましたが、審査の内容に疑義を示した重要なコメントはすべて無視されてしまいました。
適合性審査は、いわば「通すための試験」となっており、その範囲もいざ事故が生じた時の原子力防災計画が含まれていないなど限定されたものです。とりわけ批判が集中したのは、火山リスクに関する審査です。
1)火山噴火リスク
南九州には有名な桜島も含む「姶良(あいら)カルデラ」など複数のカルデラ火山があります。約7000年前に鹿児島沖で巨大噴火が発生しています。
多くの火山学者が、火山噴火が川内原発に与える壊滅的な影響について警鐘をならしてきました。
原子力規制委員会の審査では、原発から数キロの近傍に火砕流の痕跡があり、九州電力でさえ最終的には火砕流が到達する可能性を認め、その前提で審査が進みました。
原子力規制委員会の「火山影響評価ガイド」にもとづけば、①原発まで火砕流が到達するような巨大噴火が原発の「運用期間中(運転期間中および核燃料の保管期間中)」に発生する可能性が十分低いかどうか、②モニタリングで前兆現象を把握したときに、③原発をとめ、燃料棒の運びだしを行うなどの対処方針が策定されているかどうかをチェックすることになっています。
①については科学的な根拠が十分示されていない上、②が可能なのかについても疑問が多く、③については、九州電力の補正申請には「核燃料を搬出する方針である」としか書かれていません。
原発をとめ、燃料棒を冷却し、搬送先をみつけ、搬送するまでには長い年月が必要で、専門家は「少なくとも5年は必要」としています。
原子力規制委員会の川内原発の審査は、火山リスクが大きな争点だったにも関わらず、火山専門家を入れずに行われました。
川内原発の火山噴火リスクについて、改めて審査をやりなおすべきではないでしょうか。
2)具体的な対策は先送り
多くの点において、具体的な対策は、「方針」のみしか示されておらず、保安規定や工事計画に先送りにされてしまいました。
たとえば、新たな基準地震動に伴う具体的な対策、施設の耐震が大丈夫なのかは工事計画で、また巨大噴火の前兆現象がとらえられたときの核燃料の冷却、搬出方法、搬出先などは保安規定に盛り込まれることになっています。しかし後者について、九電が提出した保安規定には具体的なことは記述されていません。
4.電気は足りている
電気事業連合会によれば、今年7~8月の電力需給について、電力10社が最も電力を供給した日でも、需要に対する供給のゆとり(予備率)が10%あったと発表しました。
原発が一基も動いていない状況でこの夏も電気は足りていたのです。
さらに、九州電力は9月25日から、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づく新たな接続申し込みに対する回答を保留するとしました。再生可能エネルギー導入を積極的に進めている事業者や投資家にとって大きな打撃となりました。九電によれば、今年3月だけで、従来の1年分に匹敵する、約7万件の太陽光の接続契約申し込みが殺到。契約申し込み前の設備認定分も合わせると、太陽光と風力で夏のピーク需要約1600万キロワットをも超えるとのこと。ただし、実際の導入量はでも401万キロワット(2014年8月末、太陽光+風力)であり、「回答保留」には川内原発、玄海原発の再稼働を見込んでいると考えられます。
送電網や需給調整の仕組みを整えれば、すでに再生可能エネルギーは、原発に優に匹敵する実力をつけてきているのです。
5.福島原発事故は継続中
福島原発事故は未だ継続中です。汚染水はとめどなく流出し、対策のめどがたっていません。ふるさとを失い、避難を余儀なくされている人たちが未だ10万人以上もいます。
事故原因も究明されてはいません。
こうした中、「審査」「住民説明」「地元合意」の形式だけが先行し、川内原発の再稼働の強行は許されるものではありません。
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