脱原発・エネルギーシフトに向けて
2012年夏の「国民的議論」はどこへ?~エネルギー基本計画見直し
安倍政権は発足後、前政権で国民的議論をへてかろうじて決定された「2030年代までに原発ゼロ」の方針さえ、「ゼロベースで見直す」と表明しました。2013年末までに方針を示すとして、現在、エネルギー政策の見直しの議論が行われています。
あれほどの、大々的に、様々な手法で、2ヶ月以上の時間をかけ、多数のステークホルダーを巻き込み、予算をかけて行った「国民的議論」とその結果を無視することは、明らかに恣意的な、国民の声の軽視にほかなりません。
FoE Japanは、現在進められているこの議論に対して、下記を求める意見書を提出しました。
>意見書全文
「新しいエネルギー基本計画の策定に向けて~原発ゼロの国民の声を、議論の前提とすべき」
新しいエネルギー基本計画の策定に向けて |
●エネルギー政策見直しの議論の現状
福島原発事故後のエネルギー政策見直しは、いまだ途上にあります。「エネルギー基本計画」は、約3年ごとに見直すこととされており、前回の改定が2010年(このときの計画は、原発の新増設・推進を前提とするものでした)ということで、2013年末までには、方針を示すこととなっています。
主な議論の場となっているのは、経済産業省の審議会「総合資源エネルギー調査会」の中に設置されている部会です。前政権時の「基本問題委員会」は、市民派(批判派)の委員も3分の1近くを占めており、市民や市民団体の見解も、ある程度伝えられていました。
ところが、安倍政権では、この基本問題委員会は閉鎖され、新たに(前自民党政権時代にあったものをリニューアルした)「総合部会」で、市民派の委員は2名のみという形で、3月に議論が始まりました。
以来、月1回程度(基本問題委員会は月2回程度だったことも)会合が開かれていますが、ひとつの大きな問題は、この会合の中で2012年の「国民的議論」も、「革新的エネルギー・環境戦略」も、まったく議題・資料にあげられていないことです。
6月25日、国会閉会のぎりぎりで審議会組織の整理が行われ、総合部会は、ほぼ同じ体制で「基本政策部会」に引き継がれました。第1回の会合が7月24日に開催されたところですが、状況は同じです。
>基本政策分科会 ウェブサイト(総合部会へのリンクあり)
https://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonseisaku/index.htm
現在の基本政策分科会における議論では、
・原発を止めているから化石燃料依存が高まり、安全保障上のリスクが増している。
・原発を止めているからエネルギーコストが上昇し、経済に影響を与えている。
・原発をとめているからCO2排出が増えている。
・海外では、やはり原発推進の方向である。
といった方向で、議論が進行しています。
現在も、エネルギー基本計画見直しへの意見を募集しています。
特に期限は設けられておらず、オンライン、郵送、FAXで提出することができます。
また、提出された意見は、個人情報をのぞいた形で、公開されます。
>https://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/sougoubukai/ikenbosyu.htm
みなさんもぜひ、短くていいので、意見を送ってみてください。
●福島原発事故を受けて始まったエネルギー政策見直し これまでの経緯(2011年~2012年まで)
2011年6月から議論され、2012年7~8月には、大々的な「国民的議論」を経て、「少なくとも国民の過半が原発をゼロにしていく方向を望む」とまとめられました。これを受けて9月には、「2030年代に原発稼働ゼロを実現するようあらゆる政策手段を投入する」との一文を含む「革新的エネルギー・環境戦略」が取りまとめられました。
>「国家戦略室(旧)」エネルギー・環境会議
「国民的議論」と「革新的エネルギー・環境戦略」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/archive01.html
本来であれば、これに基づいて、「エネルギー基本計画」が見直されるはずでした。
しかし11月、その議論に対しても異論(基本問題委員会の三村委員長自身も反対を表明)が出る中、衆議院が解散。
総選挙後に発足した安倍政権は、原発ゼロ方針すら、「ゼロベースで見直す」と表明しました。
民主党時の「革新的エネルギー・環境戦略」でさえも、パブコメなどで多くの市民が声をあげた「原発はすぐにゼロに」「遅くとも2030年までに」との意見よりはだいぶ後退し、原発の再稼働や輸出は認める、核燃料政策も続行、と不十分な内容でした。とはいえ、「原発稼働ゼロ」が初めて政策に書き込まれたという意味では大きな一歩であり、市民運動や市民の声の結集の成果とも言うことができます。
>2012年夏のパブコメキャンペーン「パブコメで未来を変えよう」
https://publiccomment.wordpress.com
We are Friends of the Earth ! |