脱原発・エネルギーシフトに向けて
【声明】
被災者の声なきままの基本方針案策定は手続き違反
支援対象地域は、少なくとも年1mSv以上の地域を含むべき
「避難」に対する実質的な支援を盛り込むべき
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8月29日のNHKの報道によれば、復興庁は、「原発事故子ども・被災者生活支援法」実施のための基本方針について、福島県内の33市町村を「支援対象地域」に指定し、医療施設の整備や子どもの就学の援助を行うなどとした案をとりまとめました 。30日中に復興庁からの正式な発表があるとみられています。
私たちは、現在、復興庁からの公式発表を注視しているところですが、現段階で得られた情報をもとに、問題点を下記にまとめました。
1.基本方針案に被災者の声を実質的に反映すべき。公聴会を開催すべき
原発事故子ども・被災者支援法第5条では、基本方針に居住者・避難者の声を反映させると規定されています。しかし、現在までのところ、復興庁は自ら居住者・避難者の意見をきき、基本方針に反映させるための公聴会などを実施していません。これは手続き違反といっても過言ではありません。
復興庁は、基本方針案の公開後に、パブリック・コメント期間を設けるとしています。しかしそれでは遅く、被災者の声が実質的に基本方針に反映されません。
基本方針案の策定の段階から、福島県内外の居住者・避難者の意見を丁寧にききとるための公聴会を複数回開催し、基本方針案に反映するべきです。
2.少なくとも追加線量年1mSv以上の地域を支援対象地域に
支援対象地域が福島県内33市町村にとどまることは、狭すぎます。私たちは、被災者や他の市民団体と連携して、少なくとも追加線量年1mSv以上の地域を支援対象地域にすべきだということを訴えてきました。
これは、国際的な基準および国内的な法令が、一般人の被ばく限度を1mSvとしていることに基づきます。
低線量被ばくの健康影響に関しては、閾値なしの線形モデル(すなわち、これ以下では影響がないという値がなく、線量に応じた影響を仮定すべき)が国際的に最も広く採用されていることを考えれば、一般人の被ばく限度として用いられている年1mSv基準を堅持すべきです。
なお、チェルノブイリ法では、年間1~5mSvの地域(内部被ばく含む)を「避難の権利ゾーン」として、居住者・避難者に幅広い支援を行っています。
※個人線量計による個人被ばく管理を過大評価すべきでない
政府は、<「場」の線量から「人」の線量へ>をキャッチフレーズに、個人線量計の配布による個人被ばく管理を進めていますが、本来、個人線量計をつけることは、やむをえず高い線量の場所に入るときの被ばく管理のためのはずです。「場」の線量を無視してよいはずはありません。
3.さらに幅広い「準支援地域」を
復興庁が、施策ごとにさらに幅広く「準支援地域」を設けることとしたこと自体は妥当であると考える一方、これは「支援対象地域」の外に幅広く設けるべきであり、とりわけ、ニーズの高い健診の強化などの健康支援を行っていくべきです。
4.自己決定権を保障する支援策であるべき。
原発事故子ども・被災者支援法の第一条(目的)、第二条(理念)に書かれているとおり「放射性物質が広く拡散していること、当該放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと」を踏まえ、被災者一人ひとりが、居住・避難・帰還のいずれを選択した場合においても、選択を自らの意思によって行うことができるよう保障すべきです。
5.「区域外」避難者に対する個別具体的な支援を
現在、避難区域外からの避難者に対する賠償・支援はほとんどない状況です。
災害救助法に基づく住宅支援があと1年7カ月(平成27年度3月まで)とされていますが、これでは将来の設計が困難です。もっと長期にわたっての住宅支援を保障すべきです。
また、避難者への支援をその地域全体での就労支援などの強化などによりごまかすべきではありません。避難者に対する個別具体的な支援が求められています。
6.「早期帰還」政策によって、「帰還」を強いるべきではない
現在、国や県の早期帰還政策が進められていますが、住民の意見を十分きかないままの避難指示の打ち切りや、賠償の打ち切りによって、帰還圧力をかけるべきではありません。「避難し続ける権利」を保障すべきです。
連絡先:国際環境NGO FoE Japan
〒171-0014 東京都豊島区池袋3-30-22-203
tel: 03-6907-7217 fax: 03-6907-7219
携帯:090-6142-1807
担当:満田夏花(みつた・かんな)
※関連情報
原発事故被害者の救済を求める全国運動 請願署名Q&A
https://www.foejapan.org/energy/action/130827_2.html
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