脱原発・エネルギーシフトに向けて
原発災害から2年~一刻も早い被害者支援と脱原発を
2013年3月11日
3.11東日本大震災と東京電力福島第一原発事故(以下、原発事故)から2年が経ちます。2年前から今日にいたるまで、災害により、また長引く原発事故の影響により奪われた多くの尊い命のご冥福を心よりお祈り申し上げます。また、全ての皆さまに一日も早く平穏な日々が訪れることを心よりお祈りしております。
FoE Japanは、一刻も早い被害者救済と脱原発を実現するため、みなさまとともに活動を継続していきます。
1.原発事故の被害者を取り巻く状況は厳しさを増している
○打ち切られる避難支援~いまは支援を急ぐとき
福島県だけでも、約15万5千人が避難を続けており(県内約9万7千人、県外約5万7千人)、除染や線量低減のめどは立っていません。家族や地域コミュニティが引き裂かれた状態の中で、特に母子避難や二重生活を続ける方々、高齢者や障害をもつ方々、子どもたちなどの精神的・経済的苦痛は、時が経つに連れてますます増大しています。
必要とされる避難支援も打ち切られてしまっています。昨年9月に福島市が行った調査によれば、いまも避難を考えている人は、妊婦・小学生以下の子どものいる世帯で5割以上、中高生のいる世帯で約4割と高い水準になっています。にもかかわらず、昨年末、福島県外避難者への住宅支援の新規受付が打ち切られました。私たちは、多くの市民の皆さんとともに、これに反対する要請活動を行いましたが、残念ながら力が及びませんでした。
政府が新たに再編した避難区域では、避難指示解除の基準がいまだに年間20ミリシーベルトであり、国内法令で定められる公衆被ばく限度の年間1ミリシーベルトを高く超えています。このことは昨年11月に来日した国連人権理事会特別報告者のアナンド・グローバー氏も強く批判しているところです。
>避難者の住宅支援新規受付を打ち切らないで(2012年12月、署名活動を実施)
>【報告】県外避難者向け住宅支援打ち切り撤回を求め、福島県と交渉(2012.12.10実施)
○子ども・被災者支援法の実施を
昨年6月に国会で成立した「原発事故子ども・被災者支援法」の実施が急がれています。この法律は、幅広い地域を支援対象地域と定め、居住・避難・帰還のそれぞれの選択に応じた国による支援を定めています。しかし、政府が基本方針を定めておらず、8ヵ月が過ぎてもいまだに実施されていません。私たちは、少なくとも追加被ばく線量年1ミリシーベルト超の地域を対象とし、幅広い支援を実現していくべきであると考えています。
>「原発事故子ども・被災者支援法」を活かして!市民からの提案 (2012.11.28復興庁との対話集会を実施)
○深刻な健康問題~幅広い健康把握体制を
健康問題も深刻です。2月13日、原発周辺13市町村の3万8,114人の18 歳以下の子ども・若年者のうち3人が甲状腺がんと診断され、7人に強い疑いがあることが明らかになりました。福島県立医大はいち早く福島第一原発事故との因果関係を否定しましたが、これは科学的な態度とはいえません。また、現在の県民健康管理調査は、目的が不安解消となっており、詳細な健診が避難区域からの避難者にしか実施されていないこと、甲状腺機能の低下やその他の疾病を把握できるような項目になっていないことなど多くの問題が指摘されています。これらを踏まえ、私たちは、放射線被ばくの専門家や医療関係者と議論を重ね、1)「原発事故子ども・被災者支援法」の理念に基づき、国が責任をもって健康管理体制を構築すること、2)福島県外も広く対象とすること、3)幅広く健康状況を把握するため、検査項目を拡大すること、4)データ管理を国の責任において行うとともに、第三者機関の監視による信頼性の担保を行うこと、5)当面の措置として、自主的な甲状腺の検査および健診に費用補助または健康保険の適用を行うこと――などを国や県に要請しています。
私たちはまた、『除染が終わり放射線量が下がるまで妊婦さん・子どもたちを一時避難させて』という声に応えるために、他の市民団体と共に、福島市・伊達市・伊達郡の親子を対象とした保養プログラム「福島ぽかぽかプロジェクト」を行っています。2012年1月から12月までで延べ約2700人にご参加頂きました。今後も福島の皆さんとともに活動を続けていきたいと考えています。また、支援法の一刻も早い実施に向けた政策提言活動を継続していきます。
>「福島県県民健康管理調査の問題点および健康管理のあり方に関する緊急提言」(2013.2.28プレスリリース)
>「どうする? 放射線による健康被害への対応-市民・専門家による提言」(2013.3.7緊急セミナー実施)
>福島ぽかぽかプロジェクト ※3/23(土)報告会「福島の今:子どもたちの健康を守るために私たちにできること」を実施します。
2.原発事故の教訓を踏まえて、今、原子力依存からの脱却を
○「国民的議論」で示された脱原発の民意を無視しないで
国内のエネルギー政策の議論については、引続き脱原発とエネルギーシフトに向けた活動を行っていきます。3.11以前に54基あった原発のうち、現在動いているのは2基のみです。それでも電力不足は起きておらず、省エネの取り組みも進み、原発がなくても十分にやっていくことができることがすでに明らかとなっています。 2012年8月のエネルギー・環境政策に関する「国民的議論」では、9万件に近いパブリック・コメントの分析結果や各地での意見聴取会などを踏まえ、民意は脱原発であることが示されました。これを受けて前政権は原発ゼロを目指す方向性を打ち出しました。安倍新政権が合理的理由なくこれを反故にすることは、国民不在であり、民主主義の軽視となることに強い懸念を抱いています。
>「新しいエネルギー政策は民主的な政策形成プロセスを経て決定を」(2013.3.11eシフト声明)
○新たな安全神話の構築?
原発の「新安全基準」の改訂が進められていますが、福島第一原発事故のような大事故の原因究明も途上のなか、抜本的対策を先送りした不十分なものです。また、同時に進められた「原子力災害対策指針(防災指針)」では、万一の事故時にこの30kmを超えて被害が広がる可能性があるのにも関わらず、寄せられた多くのパブリック・コメントを無視して、緊急時防護準備区域(UPZ)は30kmとされるなど、不十分な内容です。このような基準や対策のまま、再稼働の議論がなされることは非合理的であり、原発事故の教訓が何ら生かされず、新たな安全神話の構築へとつながります。
>「避難基準に福島原発事故の実態を!毎時500μSv、20μSvはあまりに高い」(2012.12.28署名提出)
>みんなのパブコメ:新「安全基準」(2013年2月パブコメ提出を呼びかけ)
○ツケを未来にまわさず、今、脱原発を
核廃棄物問題も解決のめどが立っていません。これ以上、将来世代に負担を押し付ける原子力発電はすぐに止め、今こそ脱原発に向かって政治の舵を切り、新しい経済・社会をつくっていくときです。
原発の維持は経済的にも未来につけをまわすに過ぎないことは、多くの研究が示しているとおりです。私たちは他の市民団体と共に、脱原発の経済的な優位性を示す、原発ゼロノミクス・キャンペーンを始めました。すでに多くの経済学者や学識者の方々、経営者の方々が賛同してくださっています。今後もさらにこの輪を広げていきたいです。 >『原発ゼロノミクス』キャンペーン開始(2013.2.20~)
|
We are Friends of the Earth !
FoE Japanは、サポーターのみなさまのご支援で活動しています。「脱原発・エネルギーシフト」を実現するには大きな力が必要です。
ぜひ、サポーターになって活動を支えてください。
>オンライン入会はこちらから
|