脱原発・エネルギーシフトに向けて
【声明】福島原発事故後のエネルギー政策:
示されるべきは脱原発達成のための具体的選択肢
原発の新規増設・稼働率引き上げを伴う「20-25」「15」シナリオは非現実的
国際環境NGO FoE Japan
6月29日、政府は、再稼働反対を訴える数万人の声が響き渡る首相官邸でエネルギー・環境会議を開催し、「エネルギー・環境に関する選択肢」を取りまとめました。2030年時点で原発の発電における割合を0%、15%、20-25%とする3つの選択肢が提示され、今後「国民的議論」を経て決定するとされています。しかしながら、これらの選択肢の策定過程や内容は、今なお続く、福島第一原発事故を踏まえたものではなく、脱原発を求める多くの国民の声とは乖離したものと言わざるを得ません。
日本政府は、原発事故を契機に、大前提として「脱原発依存」政策を打ち出しています。それならば、できるかぎり早期に恒常的な原発ゼロを達成することを今、政策として掲げ、そのための具体的な方法や道のりについて議論すべきです。
また、この半年、日本社会は、ほぼ原発ゼロの状態であった実績を踏まえるべきです。
今回の選択肢提示に至る過程は、各委員会では従来の原発推進体制そのままの政府事務局主導によって議論がとりまとめられ、さらに原子力委員会の秘密会合開催なども問題となり、国民が納得できるプロセスではありませんでした。またその議論は、福島原発事故被害の現場・実態とはかけ離れ、原発被災者の声を聴取する場もありませんでした。今後の「国民的議論」と言っても、期間も短く、国会での議論もありません。
提示された3つの選択肢のうち、「20-25シナリオ」は原発の新規増設を行わなければ実施できず、現状では実現不可能な選択肢です。「15シナリオ」も、40年廃炉の前提に立てば、原発の稼働率を事故以前(70%)以上の80%以上にしなければ実現しないという極めて非現実的なものです。
FoE Japanは、エネルギー・環境会議の選択肢提示内容、とりわけ「20-25シナリオ」、「15シナリオ」が原発増設または稼働率の引き上げといった非現実的な案であることを改めて指摘し、これが選択肢に上げられていることに反対します。日本政府は福島原発事故を踏まえた「脱原発依存」という政策を堅持し、原発ゼロシナリオに立脚した上で、その道筋を実現するための選択肢提示を行うべきです。
<核燃料サイクル政策>
核燃料サイクル政策については、原発ゼロでは直接処分ですが、他のシナリオでは、再処理と直接処分の並存とされています。すなわち、仮にゼロ以外が選択された場合、自動的に再処理継続が決まることになります。核燃料サイクルは、安全面からも技術面からもコスト面からも継続は問題であり、ただちに撤退すべきであり、関連するすべての情報を提示した上で、国民的議論の対象とすべきです。
<気候変動との関連>
「エネルギー・環境会議」の案では、原発を「非化石燃料」として温暖化対策として位置づけ、いずれの選択肢においても、温暖化対策は2020年に25%削減という目標からは後退するものとなっています。再生可能エネルギー、省エネルギーについては目標を低く見積もり、原発ゼロの場合の負担や難しさを強調しています。
省エネルギーの更なる推進と電力システム改革に伴う再生可能エネルギーへの移行によって、脱原発と温暖化対策は両立可能であることは、すでに、環境団体等のシナリオによっても示されています。(※)福島第一原発事故をへた日本がエネルギー政策を抜本的に転換することができるか、世界も注目しています。脱原発を決め、地域分散型の新しいエネルギーシステムに向けて世界に先駆けてビジョンを示していくことこそが、今求められています。
※エネルギーシナリオ市民評価パネル報告書「エネルギー・環境のシナリオの論点」
https://www.foejapan.org/energy/news/120531.html
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「エネルギー・環境の選択肢」とパブリックコメント募集
>https://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive01.html