脱原発・エネルギーシフトに向けて
福島市渡利・放射能汚染調査<速報>
福島老朽原発を考える会
国際環境NGO FoE Japan
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>「放射能汚染レベル調査結果報告書 ~渡利地域における除染の限界」(PDF)
福島老朽原発を考える会(フクロウの会)と国際環境NGO FoE Japan が
渡利の住民の方々の要望を踏まえ、神戸大学山内教授(放射線エネルギー応用科学)に依頼し、9月14日に実施した福島市渡利地区における放射線量調査において、以下のことが明らかになった。
・ 学童保育教室前で、たくさんの子どもたちが遊び場として利用している八幡神社の敷地において、50cm線量で2.7μSv/hを記録した。また、福島市が、除染モデル事業を実施した渡利小学校通学路に置ける測定では、測定した10箇所中、4箇所において、50cm高2.0μSv/hを超える地点があった。これは南相馬市の子ども・妊婦の特定避難勧奨地点指定基準(50cmで2.0μSv/h)を超えている。この周辺は、特定避難勧奨地点指定に際しての国の詳細調査の対象外である。
・ 八幡神社前で1cm線量は10μSv/hを超える地点があった。渡利地区では、このように1cm線量が異常に高い値を示す箇所が随所に見られるが、これはこの地区全体の土壌汚染に起因すると思われる。チェルノブイリでは避難区域の設定の指標として土壌汚染の程度が用いられたが日本では全く考慮されていない。
・ 福島市が、除染モデル事業を実施した渡利小学校通学路に置ける測定では、通学路西側住宅前雨水枡において、1cmの線量で22.6μSv/hを記録した。雨水枡は除染の対象にはなっていなかった。雨水枡の中は水が張られた状態であり、高い線量は枡の中の土壌ではなく、周辺の土壌に含まれる高い濃度のセシウムによると思われる。単に枡の中の泥すくいを行うだけでは十分な効果は得られず、周辺の土壌除去を含めた根本的な対策が必要と思われる。
・ 除染モデル事業が行われた側溝上でも1cmの線量で5.5μSv/hを記録した箇所があった。8月24日に行われた除染作業により、側溝の泥はすくいとられたはずだが、まわりを山林で囲まれた渡利地区の地形的な特徴もあり、側溝には周辺の土壌が常に流れ込んでおり、測定したときも、側溝には泥が溜まっている箇所がいくつかみられた。このような環境では、側溝の泥すくいを行った程度では十分な除染の効果は期待できない。
・ 通学路は子どもたちの生活の場でもある。測定していたときも、先生に引率された数十人の子どもたちが通り過ぎて行ったが、マスクなどの防護措置はなく、危険箇所についての注意もなかった。
・ 薬師町の用水路は、国が詳細調査を行った区域境界のすぐ北側にあり、この水路周辺の世帯は詳細調査の対象から外れている。水路は普段は水が流れず、乾いているが、雨が降ると流れ、測定の3日前にあった短時間の豪雨では、一時水が溢れた。線量が非常に高い(1mで3.87μSv/h、50cmで5.30μSv/h,1cmで9.80μSv/hなど)箇所があるが、立ち入り禁止の措置は取られていなかった。子どもたちが乾いた水路の中に入って遊んでいることもあるという。
・ 用水路脇の家の庭の奥では、50cmで4.8μSv/h、1mで2.7μSv/hを記録した。これは南相馬市の子ども・妊婦の特定避難勧奨地点指定基準(50cmで2.0μSv/h)や、伊達市の子ども・妊婦の指定基準(1mで2.7μSv/h)を超えている。
・ 薬師町の渡利中学校西側の家の庭先で、50cmで2.02μSv/hを記録した。これは南相馬市の子ども・妊婦の特定避難勧奨地点の指定基準(50cmで2.0μSv/h)を超えている。
・ 学童保育教室及び郊外の住宅では、家の中の線量も測定した。どちらも家の中の屋根に近い箇所で線量が高く、屋根そのものの線量も高かった。いずれも高圧洗浄機による除染作業が行われたが、屋根の材料に入り込んだセシウムが取れずに残っているためと思われる。
・ 郊外の住宅近くの駐車場では、1m高3.0μSv/h、50cm高3.8μSv/hを記録した。特定避難勧奨地点の指定基準に相当する線量である。
以上のことから、私たちは以下のことを国、福島市、福島県に求めていきたい。
1.調査により、国が特定避難勧奨地点の検討に際して行った詳細調査を行っていない箇所において、高い線量が観測されたことから、国は、渡利地区全域を対象として、さらに詳細な調査を行うこと |
【関連資料】
>「福島市渡利における放射能汚染調査」調査の背景と避難問題について
>地図と表