脱原発・エネルギーシフトに向けて
原発のないアジア太平洋地域を
FoE Asia Pacificからの宣言
2011年7月20日
原発問題は、海外で活動する団体からも大きな注目を浴びています。FoE韓国、FoEオーストラリアは自国内で原発の廃止を求める活動をしており、また、FoEマレーシアは、韓国や日本から原発を輸入する計画に対して反対運動を行っています。こうした動きを後押しするため、 FoE Asia Pacific(アジア太平洋地域で活動するFoEグループ団体のネットワーク)は、その年次総会の場で、記者会見を行い、"Nuclear Power Free Asia Pacific region"を目指す宣言を発表しました。
福島の原発危機を乗り越えて 原発のないアジア・太平洋地域を
FoE Asia Pacific
福島原発の事故災害から数ヶ月、われわれは、この影響が長期間続くだろうという認識を持ち始めている。
放射線はすでに北半球の多くの地域に、また南半球の一部にまで広がっている。日本の原子力安全・保安院は、放射性物質の放出は危機発生の最初の週で770,000テラベクレルであったと推定している。放射性物質の放出量は全体として1989年のチェルノブイル事故の10-40%ほどになるだろう。これまで放射性物質の放出は止まってはおらず、今後この状態は何ヶ月も続くだろう。
長期的にみてがんによる死亡者数は、数百から数千になるだろう。ちなみに、チェルノブイル事故の死亡者数は合理的に見積もって30,000人である。
放射線量の許容限度の規定は、今回、緊急作業員と一般市民のどちらについても放棄されてしまった。
今回の災害の経済的な損害は、500億ドルから1300億ドルと見積もられる―が、現実にその額を相当上回るとしても驚きに値しないだろう。
100,000人から150,000人の住民が、放射能汚染のために帰宅することができないでいる。年末までに帰宅を果たせる住民もいるかもしれないが、最も汚染のひどい地域住民にとって避難生活は長引きそうである。
世界的に見て、原発「ルネッサンス」は大損害を被った。ドイツ、イタリア、スイスでは、原子力発電を廃止、再生可能なエネルギー源の道を選択するとした。その他の多くの国でも原子力発電の導入、または拡張計画は大きく後退した。
原発は、気候に優しく持続可能な未来を築くのに何の役割も果たさない。
科学的な研究においても、ますます多くの論文で、エネルギー需要に対応しながら温室効果ガスの排出を着実に減らしていくことが可能な、広範囲のエネルギーの供給とエネルギー効率のよい選択肢について詳述されるようになっている。
原子力発電は気候変動に対抗する必要または望ましい一翼を担うとする主張は、拒絶しなければならない。原子力発電はせいぜい部分的でかつ問題の多い対処方法であり、許容できない未解決の問題を提示している。
ウラニウムは有害な核燃料チェーンの第一リンクであり、原子炉や核兵器に使用される放射性物質の主たる放射線源である。多くのウラン鉱山は環境や近隣住民に非常に有害な影響を与えてきた。
世界中の原子力発電所はすでに多くの問題を経験している。それは―日本で見られるように、気候変動の結果これまで以上に頻発し激しくなりそうな現象によって引き起こされている。原子力産業はこれらの問題に注意の眼を向けるのに余りにも遅すぎた。同時に、原発産業は巨額の納税者補助金のために生き残り続けている。
世界のどこを見ても、使用済み核燃料または高レベルの核廃棄物を永久保管できる貯蔵所などひとつもない。原子力は大量破壊兵器の拡散に直接繋がることが繰り返し証明されてきた唯一無二のエネルギー源である。
再生可能で、効率のよいエネルギーに基づいたクリーンエネルギーの未来は、発展力があり実現可能なのだ。
FoE Asia Pacificは、韓国、日本、マレーシア、スリランカやオーストラリアを含む、私たちの政府に対して核のない社会への移行を求めている。
FoE Asia Pacificは、地域として、また個々の国家において核のない世界を追求する。われわれは、アジア・太平洋地域の住民がわれわれに参加して核のない世界をつくるために共に動き出すよう強く求めていく。