声明:原発事故避難者への相次ぐ支援打ち切りに抗議
国際環境NGO FoE Japan
避難者の困窮に目を向けて
2019年3月末、旧避難区域(南相馬市、浪江町、川俣町、葛尾村、飯舘村)からの避難者 約2200 世帯への仮設・借り上げ住宅提供が打ち切られました。細々と続けられてきた区域外避難者の国家公務員住宅での継続居住(有料)も、低所得者向けの家賃補助も打ち切られました。来年3月には、帰還困難区域からの避難者2700 世帯以上への仮設・借り上げ住宅提供が打ち切られようとしています。しかし、打ち切り後の居住のめどがたっていない避難者も多くいます(注1)。
すでに 2017年3月、区域外避難者に対する住宅提供が打ち切られました。それから2年経過しますが、少なからぬ避難者が困難に直面しています。
たとえば、東京都によるアンケート調査(注2)では、月収が 10 万円以下の世帯が 22 %に 、 20 万円以下の世帯が過半数にのぼっています。新潟県の調査では、避難生活の苦しみについて、「ふるさとを失ったことへの悲しみ、葛藤」をあげた人が7割を超えたほか、避難区域外からの避難者は 78.7% が「経済的負担」をあげています(注3)。
「避難の協同センター」にも、生活困窮が深刻で家賃支払いが困難である、所持金がつきた、生活保護を申請せざるをえない、避難生活ゆえのさまざまな事情(二重生活)などで申請できないなどの相談が寄せられています。母子避難や独居の方々も少なくありません。しかし、こうした状況は氷山の一角です。復興庁・福島県は、たびかさなる支援団体などの要請にもかかわらず、避難者の置かれている状況を把握さえしようとしません。
避難者を追いつめているのは、経済的な状況だけではなく、精神的な孤立もこれに拍車をかけています。
公的支援の打ち切りに伴い、「避難者は早期に帰還すべき。避難継続はわがまま」というような空気が醸成されています。しかし、果たしてそうでしょうか? 緊急事態宣言は発令中であり、事故を起こした原発のサイトでは、予断をゆるさない厳しい作業が続けられています。地域によっては、土壌に含まれる放射性物質の濃度が、放射線管理区域相当の場所も多くあります。
そもそも、原発事故さえ起きなければ、ふるさとから離れることはなかった人たちです。 2012 年に成立した「子ども・被災者支援法」でも、「国内避難民」に関する国連の指導原則においても、避難継続か再定住か帰還かを選ぶのは避難者自身の意思によるべきであり、それまでは国は避難者の居住の支援を継続しなければなりません。本来国は、原発事故被害の加害者でもあります。
私たちは改めて、国に対して、避難者が尊厳をもって平和に生きる権利を保証すること、そのために住宅提供など必要な支援継続を行うことを求めます。
注1)福島県が、帰還困難区域が設定されている地域がある富岡、浪江、葛尾、飯舘、大熊、双葉の 6 町村の 4052 世帯を対象に行った意向調査で、住宅提供の打ち切り後に住宅確保の見通しがないと回答したのは 49 %に上った。福島民報「無償提供終了後の住宅確保 「見通したたず」 49% 」 2019 年 3 月 27 日
注2)東京都「平成 29年 3月末に応急仮設住宅の供与が終了となった福島県からの避難者に対するアンケート調査の結果について」 2017年 10月 11日
注3)新潟県が行っている原発事故に関する検証の一環として、新潟県の避難宇都宮大学の高橋若菜准教授が、新潟県に避難して原発事故の損害賠償訴訟を提起した原告全 237 世帯の陳述書などをもとに行った調査による。第 5 回新潟県原子力発電所事故による健康と生活への影響に関する検証委員会「生活分科会」( 2018 年 12 月 27 日開催)資料より
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