声明:東京電力・福島第一原発事故から7年
~被害を直視し真の復興を。核なき世界へ向けて歩みを進めよう~
2011年3月11日の東日本大震災に端を発した東京電力福島第一原発事故。7年たった今も事故はまだ続いており、私たちは長期にわたる未曾有の原発災害に直面しています。
被害は多岐にわたり複雑です。広範囲にわたる放射能汚染により、自然のめぐみとともにあった人々の暮らしは失われ、様がわりしてしまった地域も多々あります。生業や生きがいの喪失、家族やコミュニティの分断、健康リスクと不安の増大、避難先での偏見やいじめ…。
住宅支援の終了などにより、避難継続をしている人たちの中には孤立し、経済的に困窮している人たちもいます。
さらに、本来であれば被害者の生活再建、健診や保養などの充実など具体的な対策を行うべきところ、被害や健康への不安を口にすることが、「復興をさまたげる」「風評被害だ」とされてしまう空気がまん延し、冷静に議論できない状況が生じています。こうしたこと全部が、原発事故がもたらした被害といえます。
私たちは、日本政府に対して、現在の被害を直視し、被害者の生活再建と尊厳を取り戻す真の復興のための政策を実施することを求めます。
また、本日、複数の野党により、「原発ゼロ基本法案」が国会に提出されました。私たちはこれを歓迎し、原発ゼロに向けた議論が国会内外で本格的にはじまることを期待します。日本の電力供給に占める原発の割合は、ここ数年数%。省エネや再生可能エネルギーが目覚ましく発展しているのにもかかわらず、原発の延命のために多くの公的資金が注入されている現実を考えれば、原発ゼロは必要であり、必然であると考えます。
私たちは、世界中の人たちと手をとりあって、原発事故の惨禍を二度と繰り返さないために、被害者とともに立ち、原発も核もない平和な世界に向けて、歩みを進めたいと思います。
フキノトウ(写真提供:佐藤真弥さん)
1.避難者たちの生活再建を
政府は年間20ミリシーベルトを基準として避難指示区域を設定。区域外の避難者は賠償のあてもなく、自力での避難を強いられました。社会的な認知が伴わない避難により、あたかも「勝手に逃げた人たち」というような見方をされ、避難先でもいわれのない誤解に苦しんでいる人たちも多いのです。これらの人たちへの唯一の公的支援ともいえる、災害救助法に基づく住宅提供が、2017年3月末で打ち切られました。
それでも、多くの人たちが避難継続を選択しました。それから1年がたちます。支援団体のもとには、経済的な貧困、つながりの貧困で追いつめられている人たちからのSOSがよせられています。たとえば、東京都の調査1では、都内の避難者世帯の月収は10万円以下の世帯が2割以上、20万円以下の世帯が約半数にのぼっています。また、連絡や相談をする人が誰もいないという人が16.5%にのぼっています。世帯数は1~2人世帯で、高齢者、母子避難も多いと思われます。国は早急に避難者の状況把握のための調査を行い、包括的な生活再建のための施策を打ち出すべきです。
2.「復興」政策に人々の参加を
国は、「復興加速化」の名のもとに、避難指示区域を続々と解除し、帰還促進政策を進めてきました。
しかし、避難指示解除にあたって、避難者の意見はあまり反映されていません。そのせいか、すでに解除された地域でも帰還者は決して多くはありません2。また、若い世代は帰還せず、高齢者がポツリポツリと帰還し、あとは作業員や企業関係者などで占められています。
一方で、避難先の仮設住宅には、帰るに帰れない人たちが取り残されています。
「復興」を人々が元の暮らしを取り戻し、幸せにくらすことであるとするならば、現在政府が進めている拙速な帰還政策と、被ばくリスクの軽視、インフラ建設や土木事業に偏重した復興予算の使い方は、真の「復興」とは程遠いものです。
多くの人々の参加と議論のもとに、現在の復興政策や帰還ありきの政策を見直すべきではないでしょうか。
3.健診の維持・拡充を
県民健康調査においては、事故当時18歳以下の子どもたちで甲状腺がん悪性または疑いと診断された子どもたちの数は197人、手術し、がんと確定した子どもたちは159人となっています3。「過剰診断」として、検査の縮小を主張する専門家もいますが、手術症例では、リンパ節転移・甲状腺組織外浸潤が多く、遠隔転移など深刻です。
FoE Japanも理事として参加する「3・11甲状腺がん子ども基金」では、東日本の15の都県の甲状腺がんの子どもたちに療養費を給付していますが、福島県外でも、検診体制が不十分なため発見が遅くなり、肺転移など重症化しているケースが目立っています。同基金のアンケートによれば、患者たちの多くは、県民健康調査の維持・拡充を求めており、縮小を求める人はいませんでした。
「事故との因果関係はない」とはじめから否定するのではなく、予防原則のもとで、国が責任をもって検診や医療体制の充実を図ることが必要とされています。
人間のための復興を
現在、除染やインフラ、事故由来の放射性廃棄物の減容化施設などに多額の予算がふりわけられています。その中には効果が不明確なもの、環境への影響が甚大であるもの、住民の反対が多いものなどもあり、見直しが必要です。一方で、除染以外の被ばく対策はほとんど行われておらず、保養も民間団体がほそぼそと行っているにすぎません。
「復興」の名のもとに、避難者を減らし、被ばく影響を否定することによって、原発事故被害者はむしろ追いつめられています。被害を過小評価せず、事故の責任を明らかにし、被害者が生きがいと尊厳をもってくらせるような政策づくりが、求められています。
注:
1 東京都「平成29年3月末に応急仮設住宅の供与が終了となった福島県からの避難者に対するアンケート調査の結果について」2017年10月11日
2 帰還者の率(新規転入者も含む)は、富岡町で3.2%、浪江町で2.7%、飯舘村で10.3%、川俣町山木屋で30.1%(2018年2月1日現在)。