声明:避難指示解除と住宅提供の打ち切りに抗議
「復興」の名のもとに、原発事故被害者を犠牲にするのか
福島県浪江町、飯舘村、川俣町の山木屋地区に出されていた帰還困難区域以外の避難指示が、3月31日、解除されました。4月1日には富岡町の避難指示も解除されます。
さらに、避難指示区域外の避難者(自主的避難者)に対する無償住宅提供も3月31日で打ち切られます。
FoE Japanは、このような拙速な帰還促進政策は、帰るに帰れない避難者の実態を反映しておらず、「復興」の名のもとに、原発事故被害者を犠牲にするものとして、強く抗議します。
さまざまな事情で避難継続を選択せざるをえない人たちが生活困窮に陥り、路頭に迷う人たちがでてくることも懸念されます。国や福島県は、帰還促進政策を見直すとともに、早急に避難者の置かれている状況を把握し、対策を講じるべきです。
1)避難指示解除について
再度の原子力災害が生じたときの避難計画が策定されていない地域も多く(注1)、具体的な被ばく低減措置も講じられておらず、帰還した人たちの安全は十分に確保されていません。
復興庁や関連自治体が避難区域の住民を対象に実施している、帰還に関する意向調査によれば、避難区域内の多くの住民が「戻らない」、「まだ判断がつかない」と回答しています(下図)。「戻りたい」と回答している人には、「やがては戻りたい」という人も多く含まれています。
上図:「帰還に関する住民意向調査」(復興庁2017年3月27日発表)をもとに作成
「帰還する」としているのは、高齢者の1~2人世帯が多く、若い世代ほど「戻らない」としています。避難指示が解除されても、高齢者がぽつりぽつりと住む地域になってしまうことが懸念されます。
避難指示解除に関して、住民の6割が否定的という調査もあります(注2)。一方で、生きがいがなくなり、狭い仮設住宅でじっとしている高齢者もおり、これ以上の「避難」は限界と感じている人も多いのも事実です。
国や福島県は、こうした避難者に寄り添い、長期避難の体制を整え、避難先の自治体と協力して、避難者支援を強化するべきです。また、「当面、避難を継続するが、やがては戻りたい」という人たちが、避難元の自治体の重要な意思決定に参加できるような手段を講じることも必要です。
2)住宅提供の打ち切りについて
現行の災害救助法に基づく住宅提供は、区域外避難者(自主的避難者)にとっては唯一の公的支援でした。打ち切りによって、少なからぬ避難者が路頭に迷うことが懸念されます。たび重なる避難者たちの「打ち切らないで」という切実な訴えに対しても、国も福島県も耳をかしませんでした。
政府は、年間20ミリシーベルトを基準として避難指示区域を設定。区域外の避難者は賠償のあてもなく、自力での避難を強いられました。社会的な認知が伴わない避難により、あたかも「勝手に逃げた人たち」というような見方をされ、いわれのない誤解に苦しみ、孤立している人たちが多くいます。なかには、連絡すらとれなくなっている人たちもいます。
各地の避難者がおかれている状況については、十分把握されていません。
国・福島県は、住宅提供を継続すべきです。また、避難者の実態を把握し、避難先自治体とも連携して、避難者が追い出されたり、路頭に迷ったりすることがないように、至急対策を講じるべきです。
注1)「福島第1原発周辺5市町村、避難計画なし 月末指示解除」(毎日新聞2017年3月27日)
注2)朝日新聞 福島第一原発第6回避難住民共同調査(2017年2月28日付)
住宅提供の延長を求めて訴える避難者たち(新宿駅西口にて)