避難の権利と帰還問題
「隠された初期被ばく」の見える化を~福島県に要望書を提出 福島県・国と会合 深まる謎
東京電力福島第一原発事故発災後、放射性ヨウ素による甲状腺被ばくは、なぜ測定されなかったのでしょうか。 当時の「福島県緊急被ばく医療活動マニュアル」に従えば、避難時の検査で13,000cpm(甲状腺等価線量最大100mSv相当)以上の人たちは、甲状腺被ばく測定や安定ヨウ素剤の服用指示など必要な措置を受けるはずでした。また、記録にも残されるはずでした。
しかし、避難時の混乱の中で、スクリーニングレベルは10万cpmに引き上げられたばかりか、甲状腺検査は行われず、記録もほとんど残されませんでした。後に甲状腺がんを発症した方も、当時の記録がなく、自らの被ばく量を医療機関などに説明することができませんでした。
浪江町津島から避難された菅野さんは、3月15日、避難途中の郡山総合体育館でスクリーニングを受けました。そのとき、測定器の針が振り切れ、10万cpm以上を示していましたが、名前もきかれず、記録にも残されませんでした。他にもそのような方々はいらっしゃるでしょう。
>福島県緊急被ばく医療活動マニュアルと原発事故直後のスクリーニング時の対応について
この件で、菅野さん、三春町在住の武藤類子さんとともに、2019年7月2日、福島県に要望書を提出し、事前に提出した質問書の回答をいただきました。
(福島県庁における記者会見)
2019年7月2日
福島県知事内堀雅雄 様 要 望 書
以 上 |
以下、福島県に事前に提出した質問、およびそれに対する7月2日の福島県地域医療課からの回答要旨です。
福島県原子力安全対策課 御中 福島県生活環境部 御中 福島県地域医療課 御中 福島県災害対策本部 御中 3・11後のスクリーニングについてのご質問
(前略)
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7月3日、国の原子力災害対策本部および原子力規制庁と会合をもち、本件について質問しました。
以下のようなやりとりでした。
1.この決定が行われた経緯はどのようなものか。かかわったのは誰か。
→原子力災害対策本部、現地対策本部、原子力安全委員会がかかわっていたが、経緯については不明。事故調査委員会報告書などの資料を確認したが、それ以上のことはわからない。
2.鼻腔スミア、甲状腺検査を行わなくてよいとした理由は何か。
→明確には記録が残っていない。
3.スクリーニングを受けた人に対して記録が渡されなかった理由は何か。
→明確には記録が残っていない。
4.原子力安全委員会事務局 「住民スクリーニングと安定ヨウ素剤服用に関する平成 23 年 3 月 13 日の助言の経緯」(平成24年9月13日)によれば、「除染で1万 cpm を切ったケースでも記録を残す」旨のコメントをERCに伝えたとしているが、記録を残さないでよいことになったのはなぜか。
→明確には記録が残っていない。
5.同文書によれば、原子力安全委員会の見解として、「1万cpm以上の人には安定ヨウ素剤投与(40歳以上は希望者に投与)」旨の見解をERCに伝えたとなっているが、実際に投与されなかったのはなぜか。
→事故調査委員会報告書などによれば、現地対策本部には伝わっていなかった。
6.さらに同文書によれば、1万cpm以上で甲状腺の測定となっているが、実際にはそうならなかった理由はなぜか。
→明確には記録が残っていない。
7.スクリーニングやそれに基づく対応について、責任を有する者はだれか。
→原子力災害対策本部ではないか。(明確には回答がなかった)
8.40Bq/cm2は、1万3,000cpmに換算でき、甲状腺等価線量で最大100mSv相当とされている。現在のスクリーニングの除染基準である40,000cpmは、甲状腺等価線量で何mSv相当か。
→40,000cpmは除染の基準であり、内部被ばくの対応の基準ではない。そのため、お答えすることはできない。甲状腺被ばく測定、安定ヨウ素剤の服用などの内部被ばく対応の基準については、今後検討されていく。(現在の指針には書かれていません。)
本件については、引き続き、当時の甲状腺被ばく線量の実測値が得られず、安定ヨウ素剤の服用など必要な措置がなされなかった経緯や責任について問うていきたいと考えています。
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