避難の権利と帰還問題
声明:「子ども・被災者支援法」制定から5年~原発事故被害者生活再建のための道筋を
原発事故子ども・被災者支援法の制定から、まもなく5年がたちます。
同法では「放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分解明されていない」(第一条)、国の「これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任」(第三条)について明記し、これを踏まえ、「居住」「避難」「帰還」の選択を被災者が自らの意思で行うことができるよう、医療、移動、移動先における住宅の確保、就業、保養などを国が支援するとしています。また、子どもの健康影響の未然防止、健診や医療費減免などについても盛り込まれています。「放射線量が政府による避難に係る指示が行われるべき基準を下回っているが一定の基準以上である地域」を支援対象地域とし(第八条第一項)、政府指示の避難区域よりも広い範囲の支援を行うことを定めています。
多くの被災者や支援者が後押しして制定された同法ですが、制定から1年以上も実施されなかったあげく、 2013 年 10 月閣議決定された基本方針は、被災者・支援者の意見を無視し、「一定の基準」を盛り込まず、施策も極めて限定的なものにとどまりました。
2017 年 3 月には、区域外避難者に対する住宅供与が打ち切られました。原発事故被害者の中には、精神的にも経済的にも追いつめられた状況に置かれている人も多くいます。
そうした中、民間によって、避難者支援や甲状腺がんの子どもたちへの支援、保養の取り組みが継続されています。
子ども・被災者支援法の制定は意味がなかったのでしょうか?
私たちはそうは思いません。多くの重要な理念を、法律に明記したことは大きな意味があります。これらの理念を活かし、被害者の実情を踏まえ、住宅、生活再建、健診、被ばく防護、保養など、個別具体的な施策のための法整備をすすめていくべきと考えます。とりわけ、避難者がおかれている困難な状況は、国が責任をもって対策を行うことが急務です。
一方で、 2012 年、環境基本法における放射性物質の除外規定が削除され、放射性物質が公害要因物質と位置付けられました。これに伴い、他の公害要因物質と同様、規制基準、環境基準の整備、総量規制を整備し、また、汚染者責任や、被害者救済を盛り込んだ「放射能汚染防止法」の立法が必要です。 |
私たちは、こうした動きとも連携しつつ、今後も国や自治体との対話を継続し、多くの被害当事者・支援者とつながりながら、子ども・被災者支援法の実現を目指していきます。
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