原発輸出
【声明】 経団連の“日インド原子力協定推進”に抗議
一部の企業の利益追求のために、核拡散リスクを無視し、日本の信用を損ねていいのか
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日本経済団体連合会(以下、経団連)は2015 年11 月17 日に「戦略的なインフラ・シス
テムの海外展開に向けて~主要国別関心分野ならびに課題2015~」と題した調査報告・提
言書を発表し、その中で日本がインドに対して原子力協力を行うために“直近の日印首脳会
談に併せて、原子力協定を締結することが求められる”としています1。
この経団連の姿勢は、NPT(核不拡散条約)やCTBT(包括的核実験禁止条約)を批准せず、核兵器を所有するインドとの原子力協定は、非NPT加盟国と原子力協定を結んでこなかった日本の従来の立場と大きくかけ離れるものであり、核拡散を促進するものとして、強く抗
議します。
インドとの原子力協定の締結は、日本が守ってきた核廃絶という姿勢を損ない、国際的な信用をおとすものであり、南アジアの、そして国際的な軍拡競争を刺激しかねません。
インドはIAEAの追加議定書を批准していますが、民生利用と軍事利用の核施設を峻別し、
前者のみをIAEAの査察対象としており、原子力の軍事利用に歯止めをかけられる保証とは
なりません。
また、2015年10月に
原子力関係閣僚会議において「原子力施設主要資機材の輸出等に
係る公的信用付与に伴う安全配慮等確認の実施体制の再構築について」が決定され、その中
に安全確認等を行う新たな主体を内閣府中心で設立するとされていますが、新たな安全体制
も核拡散を防ぐための方策がとられた内容ではありません2。
核拡散の観点だけではなく、福島原発事故を起こし、事故の収束も見込めない状況で原子力協定を推進し、原発を輸出する非倫理性は到底看過できるものではありません。
原発輸出による社会的環境的影響は無視できません。現在インドでは22 の原発が稼動し、新たな建設計画も複数存在します。多くの原発立地で市民による反原発抗議活動が展開されていますが、クダンクラムなどでは建設に反対する市民の非暴力行動を、警察が暴力的に鎮圧しました3。こうした状況での原発輸出は、新たに人権尊重が明記されたOECD コモンアプローチ上でも、そして民主主義の理念からも、大きな問題があります。
送電ロスが大きく、分散型の再生可能エネルギーの潜在力が高いインドにおいて、日本が協力できる分野はたくさんあります。日本が協力すべきは、日本の一部の企業の目先の利益追求のための、中央集権的で危険な
原子力の推進ではなく、環境的に持続可能な社会の実現と核の脅威無き世界の実現です。
注釈:
1.一般社団法人 日本経済団体連合会 「戦略的なインフラ・システムの海外展開に向けて~主要国別関心分野ならびに課題2015~」 https://www.keidanren.or.jp/policy/2015/105_honbun.html#part1 (2015 年11 月18 日閲覧) 2. 第三回原子力関係閣僚会議
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_kakuryo_kaigi/dai3/gijisidai.html (2015 年11 月18日閲覧)
3. Anti-Kudankulam activists to raise protest to next level
インドの脱原発活動を行うリーダーたちと (2015.11.4撮影) |
★関連リンク
2015.11.25 イベント 日印原子力協定阻止キャンペーン - インドへの原発輸出反対!
★関連ページ
JBIC原発指針
原発輸出の問題点について
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