原発輸出
日印原子力協定の国会承認に抗議
本日、日印原子力協定が、参議院で可決・承認されました。すでに参議院でも可決しているため、これで同協定は国会で承認されたこととなります。
私たちは、以下の理由で、同協定締結に強く反対します。
原発計画が進むジャイタプールで反対の座り込みをする女性たち
写真:ヴァイシャリ・パティル提供
1.国内外の核廃絶の努力に水をさし、国際的な核不拡散体制を揺るがす
戦争被爆国である日本が、NPT(核不拡散条約)やCTBT(包括的核実験禁止条約)を批准せず、核兵器を所有するインドの立場を認めたことにはほかならず、国際的な核廃絶の努力に大きな悪影響をもたらすことになります。日本の核廃絶の姿勢と矛盾するものであり、核不拡散体制を弱体化させるものです。
日本政府は、「インドが核実験を行った場合は、協定を停止する」としています。その根拠として、協定に付属の「公文」に、2008年の「民生用原子力イニシアティブに関するプラナーブ・ムガジーインド外務大臣の声名」になんらかの変更があった場合、協定の停止手続きが可能と盛り込んだとしています。このインド外務大臣声明は、①核実験のモラトリアム、②いかなる軍備競争にも参加しない、③核兵器の先制不使用--が盛り込まれています。
しかし、そもそもこの「公文」の法的位置づけがあいまいなうえ、日本政府は、日印原子力協定の停止について、「核実験を行った場合」としか明言していません。また、日印協定14条では「… 協力の停止をもたらし得る状況が、安全保障上の環境の変化についての一方の締約国政府の重大な懸念 から…生じたものであるか否かについて考慮を払うことを合意する」としており、協定には「核実験したら停止」とは明確に書いていないばかりか、実験の理由によっては停止しないような含みさえ持っている玉虫色の協定になっています。
2.核廃棄物の再処理
これまで日本が締結した、トルコ、ヨルダン、UAE、ベトナムなどとの原子力協定では、日本が協力した施設等からの核廃棄物の再処理は、基本的には認めていません(両国の合意が必要とし、外務大臣は国会で、同意しないと答弁しています)。しかしインドとの原子力協定においては、再処理を認めてしまっています。
仮に再処理で取り出された日本由来のプルトニウムが軍事転用されることはないにしても、結果的にインドのプルトニウム生産能力を拡大させるものとなり、日本由来以外のプルトニウムが軍事転用できる、つまり核開発に間接的に寄与しかねません。
3.日本側の「安全確認体制」はアリバイづくり
日本が原発を輸出する際に、国際協力銀行や日本貿易保険による公的資金を使った融資や付保が行われることが予想されます。従来から、このような支援決定前に、原子力安全保安院などが「安全配慮確認」を行ってきましたが、3・11後は、内閣府に設置された検討会議が相手国の原子力の安全体制の確認を行うことになりました(2015年10月6日付けで「原子力施設主要資機材の輸出等に係る公的信用付与に伴う安全配慮等確認の実施に関する要綱」)。
しかし、この「安全配慮確認」は、ほとんど実質的な内容を伴わないものです。質問票の内容も原子力安全条約やIAEAの総合規制評価サービスの受け入れなどを調査するのみで、極めて表面的なものです。
また事業ごとの立地や事業特性などを確認するようなものにはなっていません。検討委員会の公開は、事後的に「議事要旨」のみで、透明性にも問題があります。さらに、インフラシステム輸出戦略を所管する、つまり原発を推進する主体である内閣府を中心とする体制では中立性は担保されません。
国際協力銀行や日本貿易保険は、水力発電や火力発電などの支援の際には、自らの環境社会配慮ガイドラインに基づき、事業の安全確認を行うのですが、もっとも危険な原発においては、「国が確認するから」と確認を行おうとはしません。
4. 原発輸出の非倫理性と現地の反対運動
日本では福島第一原発事故の結果、多くの人々がふるさとを失う事態となりました。広範囲にわたり拡散され続けている放射性物質が国土を汚染し、事故の費用はふくれあがる一方です。このような状態で、無責任に原発を輸出し、他国の住民を危険にさらす非倫理性は到底看過できるものではありません。
原発は、何世代にも及ぶ核のゴミを残し、一度事故が起これば取り返しがつきません。
経済的にも、原発の建設コストは膨れ上がり、事故や核廃棄物の費用を考えれば、経済合理性を持ちえません。
インド現地でも多くの原発立地で市民による命がけの反原発抗議が展開されています。クダンクラムやジャイタプールなどでは建設に反対する住民の非暴力行動を、警察が暴力的に鎮圧し、死者やけが人もでています。
私たちは、日本が輸出すべきは、危険で非倫理的・非合理的な原発ではなく、福島原発事故の悲惨な事故の経験を踏まえた、原発のない、持続可能なエネルギー利用のための技術や哲学であるべきと考えます。
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